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467.入学式は気合いが違う

 イヴに弟シャイターンが生まれて五回目の春……彼女は学校へ入学が決まった。昨年入る予定だったが、試験中に眠ってしまったのだ。まさかの事態に、ルシファーも項垂れた。


 本人が気にしていないので、翌年の再受験を決めた。学校は現在人気が高く、通学希望者が溢れている。専門職へ進むための上位学校は、さらに狭き門となっていた。


「やっぱり学校を増やすか」


「増やすのはいいですが、肝心の教師がいません」


 アスタロトに指摘され、うーんと唸る。その間に、慣れた手つきで髪を半分ほど結い上げるアスタロト。後ろで待っていたベールが王冠代わりの髪飾りを付けた。


 ベルゼビュートも着飾っているが、最近は胸元をレースで覆うドレスが増えた。ジルが上位学校へ進むのだ。試験を三位の成績で通過した優等生だった。ちなみに一年飛び級している。


「スリットの内側にスカートを履いたのか?」


「ええ、薄絹のスカートですの。アンナのアイディアですのよ」


 アンナは二年前からドレスやお祝い、お祭り用の衣装のデザインを始めた。既存品を用意せず、その人に合わせて作るらしい。双子にお揃い衣装をデザインしたら、それが人気になったのだとか。


 夫イザヤの小説も売れており、もう働かなくても問題ない財産を築いていた。魔王城での文官仕事を辞めて、城下町の屋敷に戻って暮らしている。


「ルキフェルは?」


「すでに会場入りしています。警備の最終確認を任せました」


 人族という外敵がいないので、警備と言っても結界を張ったり人の配置を確認する程度だ。ここ数年で、一気にルキフェルの人気が高まった。というのも、彼の発明した魔法陣が原因だ。


 今までは大量の魔力保有者の特権に近かった収納魔法を、魔力なしでも使えるようにしたのだ。その魔法陣は、地脈や魔の森の木々から魔力を借りる。開いた空間は小さいが、食料や重い物を持ち運ばなくても良くなった。それに加え、亜空間と同じ機能があり、中の時間が停止する。


「そっか、また囲まれてるんじゃないか?」


「大丈夫でしょう、空中から降りないよう言い聞かせましたから」


 それは……どうなんだろう。対策としては正しいのか? だがルキフェルが移動するたびに、下に信奉者の群れがついて歩きそうだ。確かに降りない方がいいな。以前みたいに囲まれてキレて、ドラゴンになられても困る。


「これでいいでしょう。陛下、くれぐれも外さぬようお願いいたします。間違っても、イヴ姫やシャイターン様に貸さないでください」


 二度も注意されてしまった。だがリリスに貸した前科があるので、口答えせず頷く。出来るだけ神妙な顔を作った。


「分かっている、気をつける」


「ベール、あなたの呪いはきちんと機能していますから、何かあれば私が間に入りますよ」


 アスタロトが珍しく味方についてくれたので、長いくどくどした説教を耳にせず済んだ。ほっとしながら、学校の入学式へ向かう。


 イヴは新入生なので、すでに登校済み。シャイターンはリリスと親族席に向かった。魔王妃としてではなく、イヴの母親として参加したいと言われれば、ルシファーが譲るしかない。魔王としてルシファーが大公達と参加すれば、魔王妃が並ばずとも構わないはずだ。


 用意された壇上へ転移で現れた魔王へ、わっと歓声が上がった。それを確認し、アスタロトやベールも続く。羽を広げて飛んでいたルキフェルが合流し、ベルゼビュートも転移した。


 在校生により飾り付けられた学校の講堂に、来賓や家族が集まった。学校への入学は、各種族の子やその親にとって誉れだ。誰もが着飾っていた。


「新入生の入場です」


 司会役のハイエルフ、オレリアが声を張り上げる。新入生は二列に並び、顔を希望で輝かせて足を踏み入れた。

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