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【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第26章 魔の森の目覚め

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459.赤身の刺身 vs 魚肉ステーキ

 浜焼きバーベキューと名付けられたお祭りは、いつも通り盛況だった。魔王城が主催するイベントは、常に満員御礼である。そんな中、ルシファーは危機に立たされていた。


「これは生で食べる魚なんだ。こういう調理方法なの!」


「いいや、絶対に腹を壊すに決まってる」


 日本人アベルと料理長イフリートの戦いである。舌戦なので放置してもいいのだが、うっかり通りかかったルシファーは巻き込まれた。


「魔王様はどう思うんだ?」


「そうだ、陛下の意見を聞こうじゃないか」


 両者に挟まれ、一から説明を聞く。喧嘩両成敗だが、状況を理解してから判断するべきだろう。普段と同じ公平さが、悪い方向へ働いた。


 海の民が持ち込んだ回遊性の赤身魚の調理方法である。正直、面倒だから焼いて食べればいいじゃないか、と思う。だが個人の嗜好で、イフリートの味方をするのは気が引けた。


「……試してみるのはどうだ?」


 提案したのは、両方作って並べる。それを数人の有志が食べ比べ、評価すればいい。もし腹痛が起きても、精霊女王のベルゼビュートがいれば問題ない。即死と寿命以外なら助かるだろう。


 危険回避の方法までつけて提案したので、立候補者は六人現れた。七人目にルシファーが指名されたのは、本人にとって予想外だ。


「オレもか」


「当然じゃないっすか! 民に率先して何ちゃら、言ってましたよね。そもそも奇数じゃないと、結果が出ないっす」


 アベルに詰め寄られ、微妙な笑みを浮かべて頷く。確かに奇数でなければ、割り切れてしまう。半数ずつに意見が分かれる可能性を考慮すれば、最初から奇数にするべきだろう。


 断りきれないのがルシファーらしい。ちなみに残りのメンバーは、興味津々のルキフェルを含んでいた。リリスは手を挙げたが却下される。ルシファーに何かあれば、魔王代行がリリスになるのだ。危険は分散すべきだった。


「私も食べたかったわ」


「安全が保障されたら食べられるから」


 慰めて、用意されたテーブルにつく。いつの間にやら侍従達が並べたようだ。中央がルシファーで、左にルキフェル、右はドワーフの親方が座った。すでに目が据わっているので、かなり飲んでいる。


 残る四人は、種族もバラバラだ。海を代表して、生で食べたい派の人魚。テント組み立てに尽力した魔王軍からサタナキア将軍、魔獣代表でヤン、翡翠竜と卵をバッグで運ぶレライエだ。


「ライ、安心して。絶対に助けるから」


「アドキス、そういう遊びじゃないぞ」


 竜人族のレライエや竜族のルキフェルは、好奇心旺盛な種族だ。初めての生魚に興奮していた。ヤンは川魚を生で食するため、海の魚でも平気だろうと欠伸しながらの参加である。


「頑張れ!」


「私が赤身魚の安全性を広めてみせる!!」


 海の民からの応援に、ぐっと拳を握る人魚は、気合十分だった。サタナキア将軍は顔色が悪い。どうやら寝不足で判断力が鈍ったところを連れてこられたらしい。


「これが刺身だ! 食え!!」


 イザヤとアンナが四苦八苦して形にした刺身を、堂々と並べるアベル。テンションが上がり過ぎて、言葉遣いをアスタロトに叱られた。魚を並べ終えるなり、説教が始まる。その声を聞きながら、ルシファーは生魚をじっくり眺めた。


「刺身……」


 初めて聞く単語を繰り返し、ここは最初に毒見するべきだろうと口に入れる。フォークで刺した魚は黒い液体に濡れていた。特有の生臭さが広がるが、意外と食べられる。特に異常も感じなかった。


「うん、食えるぞ」


 もう一切れ食べて証明すると、すでにルキフェルは食べていた。皿の上はすでに空で、目が輝いている。それはレライエも同じだった。分けてもらったようで、バッグから顔を覗かせる翡翠竜が笑顔を見せる。


「俺の料理を食ってから判断してくれ」


 そう言って差し出されたのは、バターの香りがする魚肉のステーキだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] マグロの赤身のサクをわさび醬油に一晩漬けこんで焼くと美味しいですよ。
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