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【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第26章 魔の森の目覚め

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458.魔の森本来の豊かさを享受する

 森が目覚めた変化は、すぐに現れた。動物や魔物が増えていく。報告は魔獣からもたらされた。


 魔物は種類も増え、きちんと魔力も保持していた。魔族は己の力で狩りを始め、釣られる形で、様々な種族に影響が波及する。


 魔力を帯びた魔物である蚕を育てるアルラウネは、絹の質が上がったと喜んだ。巨人族は魔の森の木を使った林業を活性化させる。各種族の子どもが増えたことで、各地に保育園を建てる計画が進んだ。ドワーフは建築ラッシュに沸いている。


 滅びそうだった神龍族は一気に卵が増え、他種族の手も借りて卵を温める。すべての卵が孵るまで、まだ数年かかるらしい。卵が生まれなくなっていた虹蛇も、纏めて複数産卵して大騒ぎだった。スプリガンも新しい鉱石を発見したと報告し、一族総出で森の奥にある洞窟を探検中だ。


 緑は輝き、木々は大きく枝を広げる。葉を揺らし、風と遊んで日差しを遮る。湖や川は魚を養い、美しい水を森に行き渡らせた。新しい種族だけでなく、先祖返りの報告も舞い込むようになる。


「こんなに顕著だったかな」


「魔力量が増えたからよ。以前は人族が世界の魔力を食い潰していたし、穴から異世界に漏れてもいたわ。それらの原因が消えたことで、世界の中で魔力が循環しているの」


 これが本来の魔の森よ。リリスは誇らしげにそう言い切った。異物を排除し、魔の森は搾取された魔力を取り戻した。その上、海という新しい領域も広がっている。


「明日は海でバーベキューよね」


 日本人が持ち込んだ言葉は、小説を通して広まった。お陰で、バーベキューという単語が魔族中で通じる。


「浜焼きじゃなかったか?」


「焼くなら全部バーベキューで通じるわよ」


「なるほど」


 参加者を募ったところ、城下町の住人を中心に数千人単位で集まった。今回は浜辺で行う予定だ。


 海の民が魔力のない獲物を捕まえ、海辺近くで管理してくれているらしい。お礼に我々は果物や肉を持ち込む。互いに物々交換して、楽しく距離を縮める祭りだった。


「ハマグリ食べたいわ」


「イヴはホタテが好きだったな」


 今回は回遊する赤身魚も振る舞われるらしい。アベルとイザヤが大興奮していた。アイツら、勝手に報告書を覗いたな。周囲に言い触らしていたが、楽しみが増えるのはいいことと見逃した。騒ぎすぎてアスタロトにバレたら、庇ってやれないぞ。


「明日、これ着るの」


 イヴはひらひらのドレスを引っ張り出してきた。皆が集まるから、お気に入りのドレスを自慢したいようだ。残念なことに、バーベキューには向かない。どう諦めさせたものか、迷うルシファーの隣でリリスが声を上げた。


「あら、これを着るのね。とっても可愛いわ。でも煙とタレでベタベタになるから、二度と着られないけど……いいの?」


「…………やだ」


 泣きそうな顔でイヴはドレスをクローゼットに戻した。作られたばかりの子ども部屋に自ら片付け、シンプルなワンピースを運んできた。


「これにする」


「イヴは可愛いから、服は少し地味なくらいが似合うわ。だって眩しくて見られなくなっちゃうでしょう?」


 上手に煽てるリリスの成長に、ルシファーは感涙していた。かつて自分がリリスの説得に使った言葉を、上手に再利用している。しかもバージョンアップしていた。


「うん、イヴは可愛いからこれで我慢する」


 得意げに胸を張るイヴは、続いてリボンや下着も選び始めた。見守るルシファーを振り返り、小首を傾げて確認する娘に頷く。水色のワンピースに合わせて、青いリボンと靴を並べた。


 シャイターンも同じ色で双子のように合わせる。ルシファーは紺色、リリスも同じ紺色にした。家族で全体的に青を選んだのは、海へ行くからだ。


「皆で一緒だね」


 にこにこと嬉しそうなイヴは興奮しており、寝ようとしなかった。それを魔法で寝かしつけて、ルシファー達もベッドに潜り込む。途端にシャイターンが泣きだし、苦笑いしてミルクを飲ませた。









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大人しそうなお姫様はかなりのお転婆、予想外の言動を繰り返し英雄を振り回す。そんな妻が愛おしくて、溺愛が止まらない英雄は諦めた幸せを手に入れる

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