表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第22章 いろいろ増えるのは良いこと?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

398/530

396.今日も魔王陛下は忙しい

 謁見の時期が終わり、海の方も爵位決めが一段落した。梅が一番上で、松が下になったのは日本人も首を傾げるが、最終的にそのままで収める。何事も臨機応変、指摘したら海の者達に恥をかかせてしまう。


 顔を立てて対応する社交に長けた魔王は、にこにこと海の民が持ち込んだ結論を受け止めた。


「承知した、不具合があれば変更するとしよう」


 人魚達は嬉しそうに帰って行った。というのも、戦った成果として梅を勝ち取ったらしい。人魚は優美な姿をしているが、内面は非常に喧嘩っ早くて獰猛なのだとか。ベルゼビュートの目撃談を交えて理解し、ルシファーは曖昧に頷いた。


「僕らがいない間に、アスタロトの希少な生態を見るなんて狡いよ」


「ルキフェル、そのように彼を見ていたのですか。否定はしませんが」


 否定しないのか。そこに関しては、顎が外れるかと思うほど驚いたので、ルシファーは追求しない。本能でベルゼビュートは目を逸らした。


「ところで、まだアスタロトは戻らないのですか」


「本来はまだ休暇中だから、オレは気にしないぞ」


 緊急事態で呼び出してしまったが、当初予定した休暇は出産までだった。アスタロトが休んでも誰も文句が言えないのだ。それより、大公三人が首を傾げる光景が広がっていた。リリスがルシファーと向き合ってしがみつき、離れないのだ。ぴたりと張り付いた姿は、いつもと違っていた。


「ルシファー、腰が痛い」


「あ、ああ。すまない、気づかなくて悪かった。ここか?」


「もっと左」


 魔王に指示して撫でさせる魔王妃――ルシファーは妻に甘いので、珍しい光景ではないが。イヴが生まれてから、リリスは人前で甘えるのを控えていた。それが完全に元に戻っている。


 両足を開いてがっちりしがみ付くので、スカートは裾が広がるフレアタイプでロングだ。中に細身のパンツも履いた。これで下着や足が丸見えになることもない。完全に抱きつくことを前提にした服装だった。


「パッパ、ママ」


 イヴが両手を伸ばすが、残念ながら二人とも手が塞がっている。困ったと顔に書いたルシファーに、イヴはふふんと顎を逸らして手を引っ込めた。


「ママとパッパ、仲良し。私はおちょなだから、我慢すゆ」


 幼くて噛んでいるというより、保育所で誰かの訛りが移ったようだ。徐々に直るだろうと放置するルシファーは、ほっとしながら頷いた。


「具合が悪いから我慢してくれると助かる。いい子だな、イヴ」


 ぺったんこな胸と立派なお腹を逸らして、ひっくり返りそうになったイヴは得意げだった。さり気なくヤンが後ろで支え、転がらないようバランスをとる。


「あてち、ヤンと結婚すゆ」


 さっきは私と言えていたのに、誰かの訛りが出現した。早めに直さないと定着してしまう。


「イヴ、私と言ってごらん」


「あたし」


「わたくしよ」


 ベルゼビュートが横から口を挟み、ルキフェルに手で塞がれた。


「余計なこと吹き込むなよ、ベルゼ」


 もごもごと抗議するが、ベールに睨まれたベルゼビュートは沈黙した。その間に、イヴは首を傾げて「あてち」「あたち」と繰り返す。


「私、だぞ。アスタロトと同じだ」


 その表現に、目を輝かせたイヴは「わたし!」と大きな声で言い切った。よく出来たと手を叩くルシファーの膝上に跨ったリリスが呻く。


「痛いぃ……」


「左か?」


「真ん中より右の、もうちょっと下」


 現在触れている場所から手を移動させ、丁寧に撫でる。さする動きで楽になるらしい。痛みのせいで不機嫌なリリスを乗せ、無邪気に言葉を直す娘を指導する。今日も魔王陛下は忙しかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ