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【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第21章 海も魔族の一員です

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394.松竹梅を盛大に解釈違い

 通達された海の種族は湧き立った。これで自分達も爵位持ちである。大公ベルゼビュートの話を魔王軍の巡回で聞いて、憧れていた。本人のやらかしを知っても、憧れが継続されるかは定かでない。


 ショウ、チク、バイ。伝えられた言葉を聞いた海の民は、自分達の流儀でこう考えた。一番地位が高いのはバイだ! と。公候伯子男が根付いた魔族は、地位の高い方から数える。だが海の常識は真逆だった。地位が高い方を後ろに置くのだ。


 また松竹梅のイメージを伝えるため、絵を添えたのが誤解に拍車を掛けた。梅だけ花が咲いている。きっと葉っぱだけより強いに違いない。様々な種族が争い、海は荒れた。


「というわけで、揉めてしまいましたね」


 魔王軍の報告を聞いたアスタロトが、苦笑いして指摘する。今後のため訂正すべきか迷ったが、別にそのままでいいと結論が出た。


「彼らなりに気に入った理由があるんだろう。ただ、揉め事は仲裁しないとな」


 巨大イカや鯨が全力で戦えば、珊瑚や小魚が影響を受けてしまう。早めに静める必要があった。


「では私が出向きます。陛下は残った謁見を片付けてください」


 ベールが名乗り出たため、いろいろ考えた末に頷く。ルキフェルも同行すると聞き、実力行使で止める気だと判断した。だがある程度は仕方ない。陸も同じ歴史を辿ってきたのだ。海王がきちんと機能していなかった海は、まだ未開の地も同然だった。


「やり過ぎるなよ」


「僕が失敗するわけないじゃん」


 からりと笑って請け負ったルキフェルを見送り、アスタロトが眉間に皺を寄せる。ルシファーも深呼吸して大きな息を吐いた。


「「心配だ(ですね)」」


 息のあったハモリ方をした二人は、それでもルキフェルを呼び戻す気はなかった。荒療治が必要な時期もあるのだ。


「今日の謁見は誰だ?」


「神獣が多いですね」


「じゃあ、ベールがいなきゃダメだろ」


「問題ないと判断したなら、通達くらい終わっているでしょう」


 アスタロトは、ベールの仕事を信頼していた。主君であるルシファーより、よほど几帳面だ。神獣や幻獣を管轄するベールが自ら場を外すなら、謁見に顔を見せる彼らに話が通っているだろう、と。当然のようにそう考えた。


「え? 何も聞いてませんけど」


 通されたユニコーンが困惑顔で答える。次の鳳凰も、さらに次の虹蛇も……。この時点でアスタロトは、幻獣霊王ベールを呼び戻すか迷い始めた。


「まあ、いいじゃないか。特に問題はないし」


 ルシファーは明るく笑い飛ばす。近くでヤンをソファーにして眠る妻子を優しく見つめ、このまま終わらせようと謁見を進めた。理由は至極単純で、一緒にお風呂に入って寝るためである。


 ベールを呼び戻してやり直しになったら、イヴの就寝時間に間に合わない。そんな主君の思惑を知らず、アスタロトは渋い顔で同意した。多少の不満はあるが、現時点で問題は起きていない。ならば後で話をすれば用は足りると考えた。


 厳しい顔の部下相手に話題を探し、ルシファーはぽんと手を叩く。


「そういや、アデーレの出産時期はいつだっけ?」


「まだ先です」


 卵で産む種族の方が早い。謁見が終わりに近づいた頃、吸血種の代表者が並んでいると連絡が入った。ペガサスが退場した後、顔を見せたのは話題のアデーレである。


「え? あ、なんで?」


「久しぶり、アデーレ」


 にこにこと手を振るのは、寝ていると思ったリリスだ。気配で気づいたのか、ご機嫌だった。侍女服ではなく、大公夫人として着飾ったアデーレは、優雅に一礼した。


「お久しぶりでございます、魔王陛下」


 公的な訪問の口調に、ルシファーも慌てて体面を整える。咳払いしてから、厳かな口調で切り出した。


「ご苦労である。して、そなたが顔を見せた理由は……」


「アデーレ、謁見は不要です。戻りなさい」


 せっかくそれっぽく振る舞ったのに、アスタロトが台無しにした。

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