表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第19章 出産ラッシュ再び?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

346/530

344.まだママにはならないと思う

 保育所にいく前は「お姉ちゃんになる」と意気込んでいた娘は、帰ってきたら「お姉ちゃんが出来た」に変化していた。


 迎えに行ったルシファーは首を傾げるものの相槌を打つ。幼子に反論してはいけない。一度聞いて納得した後で、きちんと尋ね直せばいいのだ。この辺りの扱い方は、リリス相手にしっかり学んだ魔王だった。


「そうか、お姉ちゃんが出来たんだな。誰がお姉ちゃんなんだ?」


 この尋ね方なら、イヴも答えやすいだろう。もし言い間違いだったら、自分を示せばいい。お姉ちゃんになるのはイヴなのだから。本当に誰かが姉代わりに遊んでくれる状況なら、その子の名前が出てくるはずだ。


「アイカちゃん」


「なるほど。イヴよりお姉さんだ」


 確かに年上だし、あの子は母親に似て面倒見がいい。任せても問題ないだろう。保育士も常駐しているのだから、トラブルが起きれば仲裁に入るはずだ。


 抱っこされたイヴはご機嫌で体を揺する。母リリスの時は危険だから我慢するが、ルシファーの時は遠慮しない。絶対に落とさない父の腕で、半分立ち上がるようにして体を揺らした。


「ママは?」


「少し具合が悪いみたいだ。熱があるから休んでるよ」


「おねちゅ……」


 むっと考える。動きを止めて固まった娘の背中をぽんぽんと叩く。


「明日には元気だぞ。だから今日はオレとお風呂に入ろうな」


「うん」


 元気よく頷いたイヴを抱き抱え直し、二人で言葉遊びを始めた。よく似た仲間の言葉を選んで答える遊びだ。


「ヤン」


「セーレ」


 イヴの言葉に、ルシファーが返す。近い種類のものを答えて終わり、次はルシファーの順番だった。


「アラエル」


「ぴよ!」


 鳳凰同士で、これも正解。言葉が遅かったイヴのために、工夫した遊びだ。リリスはあまり得意ではないが、ルシファーとイヴはよくこの遊びをした。


「青」


「水」


 空でも良かったかな。ルシファーはそう呟くと、イヴは首を横に振った。別に空でも水でも青い。


「茶色」


「みどり」


 正解は自分達で決められるので、険悪になる心配はない。森の色だと判断すれば、今の答えは正解だった。イヴは次の言葉を悩み始めた。


「お姉ちゃん」


「イヴ」


 これは難しい。お姉ちゃんになる人も、すでにお姉ちゃんの人も正解だが……イヴは大喜びした。これが望んだ答えだったのだろう。頬を寄せてキスを降らせ、ルシファーは魔王城の庭先にある保育所から戻った。


「ここから歩く」


「承知しました、お姫様」


 靴でしっかり地面を踏み締め、イヴはルシファーへ手を伸ばした。少し屈みながら歩き始める。あと1年もすれば、手を繋いで歩いても違和感ないだろう。4歳という年齢に見合わぬ、幼い外見のイヴはよちよちと足を前に出した。


 ぐらぐら不安定なので、周囲がはらはらしながら見守る。城で働くデュラハンに手を振り、エルフ達に挨拶した。イヴの行動に、昔のリリスを思い出す。城で働く者によく声をかけ、手を振って撫でられていたっけ。


「どうしたの、パッパ」


「いや、昔のリリスにそっくりだと思って」


「イヴ、まだママにはならないと思う」


 違う意味に捉えて困った顔をする娘に、ルシファーは声をあげて笑った。それから膝を突き、イヴの頬にキスをする。


「そうだな、ママになるのは千年は早いぞ」


 聞き咎めて顔を引き攣らせる魔犬族の侍従に気づかず、ルシファーは上機嫌で愛娘と歩き出した。その後ろで、ひそひそと噂話が始まる。魔王様の愛娘と結婚するには、千年以上の寿命が必要だと。やがて尾鰭背鰭がついて成長しながら泳ぐ噂は、魔王様に勝たないと告白権が手に入らないところまで膨らみ……数ヶ月かけて萎んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ