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323.溜まりすぎた魔力は花火へ

 ルキフェルは、小出しに魔法陣を投げ込んだ。時間差を演出した理由はこれだ。


 どんっ! 派手な音と共に花火が打ち上がる。それを見て、周囲の魔族は湧き立った。我先にと花火の手伝いを始める。魔力瘤から直接、魔力を消費する方法だった。大きな花火や派手な演出付きの花火は、消費量が激しい。


 魔力瘤の大きさに対して、膨大な消費が望めるわけではない。だが、魔王城周辺に残った魔族にとって、祭りの楽しみとなった。続け様に連発した花火が炸裂し、現場でも拍手が湧き起こる。


 ある程度消費したところで、アスタロトが加勢に入った。大きな闇を作り出すと、表面を覆う形で被せる。ぐねぐねと生き物のように表面が動き、やがて半分ほどに縮まった。アスタロトが指を鳴らすと、一気に量が減っている。すぐに湧き出すが、駆けつけた幻獣達が狂喜乱舞して飛び込んだ。


 魔力瘤は破裂すれば周囲を破壊するが、元を正せばただの魔力である。膨大すぎて手が付けられないだけだ。その魔力を浴びて、嬉しそうに再び突っ込む幻獣達は、心地良さそうだった。


「ちょっくら、俺も」


 ふらりとドラゴンが誘われる。慌てた仲間に尻尾を掴まれた。幻獣は魔力を浴びても己の中で消化できる。それどころか、大量の魔力を浴びれば子孫繁栄に役立った。今回も魔力瘤の噂を聞いて、大喜びで飛んできたのだろう。


 幻獣は子が生まれにくい。互いに番が存在する上、子を宿すための条件が厳しかった。互いに魔力に満ちている必要があるが、個体差でタイミングが合わない。そんな時、魔力を吸収して満たす泉があれば、浴びに行くのは当然だった。魔力瘤は幻獣達にとって、子作りの泉なのだ。


「しばらく休みだな」


 ルシファーがくすくすと笑う。幻獣達を避けて魔力を奪ってもいいが、楽しそうなので見物することにした。番同士が顔を寄せ合い、体を沿わせて仲睦まじく魔力を浴びる。温泉に浸かるような心地よさを想像し、飛び込もうとしたドラゴンの気持ちも分かる。だが彼は飛び込んだら、飲み込まれてしまうので無理だった。


 止めてくれた仲間に噛みつき返すドラゴンは、ルキフェルの電撃を食らい、あえなく撃沈。酔っ払い故の暴挙なので、仲間も苦笑いして大地に放り投げた。鈍い音がして着地したドラゴンは、そのまま睡眠を貪る。


 ペガサスが去り、ユニコーンも挨拶をして消える。虹蛇一家がひょっこり現れ、大量の魔力を吸い込んで帰っていった。危ないので護衛に魔王軍を使う。幻獣や神獣は希少性が高く、絶滅が危惧されていた。


 今回の魔力瘤で、出産ラッシュとなるだろう。次の即位記念祭は10年後、おそらく幻獣の子が大量にお披露目に参加するはず。


「お邪魔しました」


 最後に丁寧に挨拶して、幻獣の撤収が確認された。安全を確かめて、また花火大会の再会である。この時点で半減した魔力瘤は、さらに小さくなった。


「うーん、珍しい魔法はなかったか」


 魔法陣より制御は難しいが、魔法の方が魔力消費量が多い。派手な魔法をぶち上げたいと考えるルシファーは、唸りながら瘤の残量を測った。昔張った巨大結界なんてどうだろう。


 巨大な隕石が落下した時に、被害を防ぐために使った魔法だ。咄嗟だったので、膨大な魔力を注ぎ込んでしまい、数日寝込んだ記憶がある。あれならぴったりだ。


 目を輝かせて魔法を構築するルシファーの後ろで、アスタロトは何やら工作を始めた。別の魔法陣をいくつも作成し、気づいたルキフェルも協力する。ルシファーが構築した巨大結界は、大陸中を包めるサイズだった。


「発動するぞ」


 魔力の供給元を、自らの翼から足元の魔力瘤へ変更する。それを空に放った瞬間、ルキフェルとアスタロトも魔法陣を解き放った。広がって行く結界に乗って、魔法陣も空に展開していく。結界を張り終えたのを合図に、二人の仕掛けた魔法陣が結界の魔力を食いながら作動した。


 空全体が花火で覆い尽くされる。四方八方、どこをみても花火……それが結界が消えるまで連続して花開いた。あまりの見事さに、誰もが絶句して見惚れる。


「イヴ、パパはすごいわね」


「あい!」


 リリスとイヴも、城門の上で花火見物と洒落込んだ。

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