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297.溜め続けた宝飾品セール

 以前、管理が出来ないなら預けなさいと取り上げられた宝石箱は、原石がごろごろ入っていた。いわゆる宝飾品になる前の石だ。そのため専用の保管箱に入っておらず、互いに石がぶつかって傷だらけになった。それらはすべて、スプリガンの管理下に置かれている。


 ルシファーが収納空間に残したのは、すでに加工済みの宝飾品ばかり。まだ数十の箱があるが、彼は必死で抵抗した。というのも、誰かに渡すのが惜しいわけではない。これ以上ベールやアスタロトに叱られる原因を、自ら作りたくなかった。


 あまり意識していなかったが、宝石箱から出てきたブローチやネックレスの中に、ベールが確保したはずの宝石が数点発見される。それに合わせ、預かった宝石が指輪になった事例も発覚し……正座した魔王が執務室で痺れた足を堪える状況が続いていた。


 隣で宝石を選ぶリリスは、10本の指に違う宝石の指輪を付けて目を細める。宝石自体に興味があるというより、色とりどりの輝きにうっとりしたようだ。レライエは竜人族なので、光物が大好きだった。夫アムドゥスキアスの全財産が詰まった洞窟を貰った彼女だが、いそいそと宝石箱を開けていく。


 ルーシアは見終わった箱を畳んでしまう係に終始した。彼女を手伝うルーサルカだが、足下に宝石箱をいくつか取り分ける余裕がある。自分の欲しい宝飾品を確保したようだ。真剣に選ぶシトリーは、箱を開けるレライエの隣に陣取り、気に入った箱を後ろに積み上げ始めた。最終的にあの中から選び直すつもりらしい。


「皆、気に入ったものは取り置きしておけ。箱に戻したらわからなくなる」


 もっともな注意を口にするルシファーだが、ようやく正座から解放されたらしい。足を揉みながら、胡座をかいた。とてとて歩くイヴがそこへ飛び込んだ。


「うっ!」


 不幸な事故があり、涙ぐむ魔王。気の毒そうにしながらも助けない男性陣、理解できずに首を傾ける女性陣に反応が分かれた。イヴはもそもそ向きを変え、満足そうにルシファーの髪を握る。


「……イヴ、次からは突進を控えようか」


「あい!」


 勢いよく返事をするが、きっとまた同じことをする。母親として経験を積んだ彼女達はそう思った。大抵、その予想は外れない。経験に裏打ちされた予測は、ルシファーも同じだった。だが言い聞かせて、自制させるのが目的だ。


 イヴは結界を無効化し、リリスは親和性で通り抜ける。どちらもルシファーの身を守る上で、危険な二人だった。最強の純白魔王に、素手で勝てるのは彼女達くらいだろう。


「ルシファー様、宝石箱のこちらは回収してください」


 すでにチェックを終えた大きな宝石箱を二つ収納し、大公女達を振り返る。だがすぐに眉を顰めた。まだ完全に絞り込めていないので、箱の数が十数個積まれている。


「その箱……」


「あ、すみません。この中から選びますので」


「すぐにお返ししますね」


 取り置きしすぎたかと焦る彼女達に、ルシファーは低い声で言い放った。


「なんでそんなに少ないんだ? 子どももいるのに、足りないだろ。もっと持っていけ」


 孫に土産を持たせる祖父のような発言に、全員が動きを止めた。だが大公達は少し考え「それもそうだ」と納得する。


「毎回並べるのも面倒なので、気に入った宝飾品は多めに手元に残してください」


「そうだ。毎回こうして出すのは大変だから。もっと選んでおけ。次と次とのその次の分くらいまで」


 アスタロトとルシファーの許可を得て、彼女らは慌てて宝石箱の中身を再チェックする。借りるにしても貰うにしても、あまり図々しいのはどうかと遠慮した。厳選した逸品だけを手元に残したのだ。本当はあれも欲しかった、と見覚えのある箱を開けて確認して後ろに積む。


 ここでリリスが大きな声を上げた。


「あっ! アンナも呼んでいい?」


 日本人は元からこの世界の住人ではないし、親族もいない。先祖から譲り受ける宝石類はなく、自分達で購入しなければならなかった。


「忘れてた! すぐに呼ぼう」


 魔王の非常召集は、暇を持て余したルキフェルの転移によって実現し、アンナやイザヤは非常識な大きさの宝飾品に目を白黒させた。

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