表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第17章 4歳の特別なお祝い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

290/530

288.赤紫を選んだのに……?

 魔族にとって、即位記念祭は重要な行事だ。最強の純白魔王ルシファーが魔族を統一したことを祝う祭りであり、各種族が一同に会する集まりだった。ここで未来の妻や夫を見つける魔族も少なくない。


 ある意味、種族を超えた婚活や親善の場になっていた。過去の因縁があったとしても、この祭りの間は一切の騒動を禁じられる。祭りで鉢合わせして話すうちに打ち解け、遺恨を水に流す事例もあるくらいだった。


「今回はイヴのお披露目がメインだな」


「メインはあくまで陛下の即位記念です」


 アスタロトが復帰するまで、しっかり手綱を握るベールが言葉を返す。むすっと膨れたが、ルシファーは無駄な口論をしなかった。話を進める間に、イヴのお祭りにすり替える。そのために不要な衝突を避ける気だった。


 ルシファーは過去の失敗を教訓に、今回の計画を立てている。その努力をきちんとした方向に向けてくれたら、どれだけ助かるか。すっかり見透かされた上、呆れられているなど、知る由もなかった。


「イヴのドレスやお飾りは、予算が組めるのか?」


「はい。こちらになります。宝石類はここ数年大量に産出していますので、どれでもお選びいただけます」


 新しく産出した原石を記したファイルを差し出され、真剣に捲っていく。魔の森であるリリンが眠りに入ると、大きな宝石が産出するらしい。その話をリリスから聞いて、首を傾げた記憶が蘇る。なんでも、宝石は溢れ出した魔力が結晶化したものだとか。


 考えを打ち切り、ぱらぱらと捲っていた手を止めた。大粒の宝石がひとつ、記されている。薄紫の原石の絵を見た瞬間、そこから指が動かなくなった。


「これだ、これにしよう」


「薄紫……赤寄りの色ですか」


 ピンクではないが、赤に近い紫だ。透き通っており、内部で光を弾く照りのある石だった。黒髪と銀瞳の娘は、肌が白いこともあり寒色の印象が強い。緑や青も似合うが、ルシファーは「これこそイヴに似合う色」と感じた。


 冷たい色より、暖かい色の方が相応しい。ルシファーの鶴の一声で、宝石は確定した。お飾りを同じ石で揃えるなら、ドレスの色も決まってくる。すぐに職人達に集合の指示が出され、宝石の現物が取り寄せられた。


「ルシファーが何を選んだのか、楽しみだわ」


 イヴを抱いたリリスも同席し、集められた職人達も固唾を飲んで見守る。収納空間からベールが取り出した宝石箱は、ひと抱えもあった。この時点で、細工物の担当者であるスプリガン達が目を輝かせる。靴を担当するケットシーは顔を引き攣らせ、ドレス担当のアラクネ達は足を折りたたみながら色に注目した。


「こちらになります」


 黄金と白金で緻密な彫刻が施された箱を開けば、内側は黒い布が覆っていた。ベールはするりと布を外し、中から大粒の原石をひとつ拾い上げる。半年前ならイヴのベッドに使えそうな箱は、7割ほど埋まっていた。すべて同じ宝石である。


「ベリル系?」


 指で触れて判断したスプリガンへ、ベールは淡々と「変色性金緑石です」と告げた。産出した際は金色の縁が付いた緑の石だった。当たる光によって、色を変えるため「変色性」と冠した経緯がある。


 現在は室内の照明に反射して、赤紫の美しい色で光っていた。


「現在は赤紫ですが、陽光では緑や青に見えることが多い石ですよね」


 お飾りの宝石として希少価値があるため、スプリガンは大喜びだった。以前のリリスが百合や鈴蘭のようなイメージだったので、イヴも花に例えようと騒ぎ始める。その脇で、アラクネは考え込んだ。


「色が変わる……つまり、青緑でも赤紫でもおかしくないドレスの色を選ばないと」


「リリス様の靴は銀のグラデーションでしたが、今回は淡いピンク? いや、青紫もあるから……」


 靴を担当するケットシーも悩み始めた。その脇で、ルシファーは大きく首を傾げて呟く。


「変色性って、なんだ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ