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261.最強女王が弱い者いじめ?

 収納は亜空間にあり、魔力により隔離された自分だけの場所だ。そのため魔力量が多いと、収納は広くなる。維持するために常に魔力を使い、接続する必要があった。


 魔力に干渉されてうまく使えないなら、どうして収納にはアクセス可能なのか。考えながら、魔剣を一本取り出した。緊急時にアクセスできず、取り出せない無様を防ぐためだ。魔法が使えないなら、物理的に剣術で戦力を補う。


 この考え方はベルゼビュートも同じだった。


「あたくしが最強女王ですわ」


「あ、まあ……違わないかな」


 ルシファーは女王ではないし、魔族女性最高の地位に就くリリスも「魔王妃」であって、女王ではない。他にイポスなど強い女性が思い浮かぶが、種族的にも「女王」の肩書きを持つのは、ベルゼビュートのみだった。


「時々賢く見える」


 ぼそっと呟いた言葉に、エルフの少女がくすくすと笑った。リザードマンの兄弟は弟が眠ってしまい、兄は彼を守るように抱き締めていた。3人をまとめて抱き寄せ、ルシファーは身を起こす。


「もう少し高さが欲しいな」


 腰を曲げて立つ洞窟に眉を寄せ、いつもの癖で魔力を振るった。魔法による働きかけにも関わらず、あっさりと洞窟が広がる。


「え?」


「うそっ! 陛下、ここで魔法が使えるんですの?」


 驚いたのはベルゼビュートも同じだ。魔法が使えないから不便だと、短めの剣を選んだのに。洞窟が広がるなら、この場所に戦いやすい広場を作ればいい。


 願うだけで魔法を構築する精霊女王は、この場所に見事な広場を作り上げた。外側の地形が変わってなければいいが……余計な心配をしながらも、この状況はルシファー達に都合がいい。


「やだ、できちゃった」


「どうでもいいが、敵の撃退は任せるぞ」


 子どもがいるからな。戦う役は、喧嘩っ早いベルゼビュートに押し付ける。洞窟が広くなったことで、ヤンも元のサイズに戻れた。せっかく広げた洞窟が狭くなるが、威嚇効果は高いだろう。


「我が君、近づいております」


「ああ、ようやく感じた」


 魔力を持たないのか、感知ではなく気配を察して頷く。巨大なヤンの足の間に隠れた魔熊と魔狼の子らは、うううっと鼻に皺を寄せて唸った。アムドゥスキアスが叫ぶ。


「あれだ!」


「我が君、敵です……?」


 重ねて指摘するヤンが首を傾げる。というのも、現れたのは小人だった。それもヤンの前足でぷちっと踏み潰せるサイズだ。大きく広がった洞窟内を見回し、隅に残っていた石にしがみ付いて、ちらちらとこちらを窺う。その姿を強者と呼ぶのは、違和感があった。


「あれ、か?」


「これ……を撃退? 弱い者いじめじゃないの」


 剣を地面に立てて、腰を屈めたベルゼビュートも眉を寄せた。困ったわ。これを潰しても切っても、悪逆非道な感じがする。捕まえるために腰を掴んだら、折れたりしないかしら。


「今でも震えが来るほど強いと感じます」


 翡翠竜の言葉を信じ、ベルゼビュートが剣先で突いた。隠れた岩が砕けると、その破片で転がってしまう。弱いも弱い。すごく悪いことをした気分で、眉尻を下げて振り返るベルゼビュート。床に膝を突いて、突くために使った剣を引っ込めた。


「ちょっと! 適当なこと言わないで。どうするの、あれ! あたくしが酷い女に見えるわ」


 なぜかルシファーがそっと目を逸らした。腰に手を当ててぷんすか怒る彼女から、翡翠竜も視線を逸らす。そしてヤンも目を伏せた。


「どう思ってらしたのか、よく分かりましたわ」


 ぷんとそっぽを向いた彼女の機嫌を取るルシファーを他所に、アムドゥスキアスが恐る恐る小人に距離を詰めた。倒れている彼らは未だに恐ろしいが、弱いのは事実のようだ。つんつんと突けば、小人は困った様子で顔を上げた。


「うひゃぁああああ!」


 翡翠竜が間抜けな声を出して、腰を抜かす。上げた顔……頭部に目や口はなかった。

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