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【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第15章 神のいない神隠し

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260.違いは魔力量と本能?

 魔狼の子は、両親の言いつけを破っていたことが判明。兄と一緒に外出するよう言い聞かされたのに、一人で探検していて崖を落ちた。その結果、偶然にも魔熊の子と衝突、そのまま二匹揃ってこの世界に落ちたらしい。と言っても、ルシファーの身長ほどの崖から転げただけだから、ケガはなかった。


「不幸中の幸いだな」


 無事ならいい。簡単に許すルシファーに対し、唸るヤンは抗議を始めた。


「我が君は魔力が多く大抵のことはお一人でこなせます。ですから問題になりませんが、魔獣は一般的な獣よりやや強い程度です。このように甘やかし、許していたら群れで暮らしていけません」


「すまん」


 ケガがなくてよかったと呟いたつもりが、子狼の言動を許したように感じたらしい。一族の教育に拘りの強いヤンは、ふんと大きく息を吐きだした。ここは譲れない一線のようだ。


「ところで、アドキスはどうした?」


「何か感じるの?」


 ルシファーとベルゼビュートに尋ねられ、洞窟の奥を睨む翡翠竜はヒステリックに叫んだ。


「なんで平気なんですか! あっちに何かいます。それも強いのが」


「「感じないぞ(わよね)」」


 異口同音にハモった二人に、短い足をバンバン打ち鳴らして翡翠竜は訴える。どうやら強い魔力を感じ、襲い掛かられる気配があるのだとか。目を細めてじっくり奥を眺めるベルゼビュートは首を傾げた。反射的に子ども達を守るように引き寄せたルシファーも、不思議そうな顔をする。


 彼と彼女はまったく感じない。だがアムドゥスキアスは、寒気がするような強者がいると断言した。どちらの感覚が正しいのか。そこで思い出したのは、この世界に来てからの違和感だった。魔法がうまく作用しなかったり、感知に違いが出たり。


「共通しているのは、オレがほとんど役立たずという状況か」


 ルシファーは冷静に分析を始めた。普段から浮かぶことに魔力を使うルシファーやベルゼビュートは、落下した。ヤンは元から飛べないので除外する。魔力と羽を両方使うアムドゥスキアスは、体が重いと感じながらも空を飛んだ。


 感知もそうだ。最初から彼はこの洞窟の方角へ近づくことを嫌った。妙な感じがして嫌いだ、と。はっきり表明していたのだ。


「アドキスとオレの違いはなんだ?」


「魔力量と……あっ! 本能?」


 思い付きと閃きで生き残る精霊女王は、かなり的確に事実を指摘する。


「魔力量が多いオレは、何かの干渉を受けている。それはベルゼも同じだろう。アドキスの場合、オレ達よりヤンに近い。魔力を使った感知が惑わされても、本能が警告するというわけか」


 なるほどと納得したルシファーは、くいっと袖を引っ張られて振り返る。耳を垂らした大型犬サイズのフェンリルは、言い出しにくそうに声を絞り出した。


「本能なら、我が一番発達しているのではありませぬか」


 なのに、何も感じておりません。仮説が間違っている可能性を指摘するヤンだが、いきなり全身の毛を逆立てた。それは魔熊や魔狼の子も同じだ。鼻に皺を寄せて魔狼の子は唸った。その威嚇の先は、洞窟の奥だ。


「やはり何かいるらしい」


 まったく感じないが……そうぼやきながら、ルシファーは困ったと苦笑いを浮かべる。危機感の乏しい彼だが、警戒していないわけではなかった。子ども達を含め、この場にいる全員に結界の重ね掛けを行う。物理、魔法、双方を無効にする結界を魔法陣で構築した。


「ベルゼ、お前の魔法陣は独立させた」


「承知しましたわ。あたくしが罰してさしあげましてよ」


「いや……罪人とは限らないから罰しなくていいぞ」


 ぼそっと注意するが、興奮した彼女は聞いていない。収納から剣を取り出して立ち上がり、低い天井に肩と後頭部を打ち付けた。不安に駆られたルシファーは、収納空間に手を突っ込む。


「そういや、収納へのアクセスは妨害されないんだな」

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