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257.小型化は無理ですぞぉ

 泥の中に落ちたはずが、いきなり空中に放り出された。落下する体を魔力で支えようとして……そのまま落ちる。


「え? 嘘だ、なぜ……」


 混乱して風の魔法を放つが無視され、仕方なく魔法陣を描く。こちらはかろうじて反応した。だが威力が弱い。明らかに通常の半分程度だった。


 落下が止まって一安心したところへ、巨大な狼が降ってくる。


「我が君ぃ!!」


「ヤン、小型化しろ」


「無理ですぞぉ」


 魔法が使えない状況なのだから、ヤンの小型化も難しかった。彼が普段から魔法陣で小型化するフェンリルなら、おそらく成功しただろう。効果半減で半分だったとしても……落下する物体の質量が減れば、威力とスピードも半減する。


 巨大なヤンを受け止めるため、ルシファーはひとまず翼を出して魔力を補充しつつ、魔法陣を強化した。足下は遥か彼方に地面がある。このまま落下したら、二人とも大ケガ確実だった。


「ヤン、丸まれ」


「承知っ!」


 くるっと丸まった毛玉を、魔法陣の中央で受け止める。が、べりっと音がして破けた。さらに落ちるヤンだが、その先にも3枚の魔法陣が待ち受けている。次々と破るヤンの落下は、最後の魔法陣で食い止められた。


「……我は死んだのですかな?」


「生きてる。というか、ここは何だ?」


 首を傾げるルシファーに、ヤンが頭上を見ろと促した。


「我が君、上っ! 上です」


「ん?」


 顔を上げたルシファーは、続いて落下した翡翠竜付きの豊満ボディーを受け止める羽目になった。翼を広げていたとはいえ、かなり衝撃がある。小さく見えていた地上の岩が、倍以上の大きさまで近づいていた。


「っ、危なかった」


「ありがとうございます、陛下。ところで、風の魔法が働かないですわね」


「魔法ではなく、魔法陣で対応しろ。威力は半分になるが、発動する」


「嫌だわ、在庫が少ないのに」


 ぼやくベルゼビュートは、精霊女王だ。考えながら魔法陣を構築するルシファーやルキフェルと真逆で、本能で魔力を変換する。咄嗟に使うのはいつも魔法で、魔術の類は苦手だった。


「羽を広げて、飛べるか?」


「やってみますわ」


「僕は嫌だって言ったのに」


 無理やり連れて来られた。涙目でそう訴える翡翠竜アムドゥスキアスは、ぽかりと後ろ頭を殴られた。


「いつまでも煩いわよ。そんなんだと、レライエに愛想尽かされちゃうわ」


 がーん! 顔にショックだと表明する翡翠竜は、ふわふわと浮いている。だが魔法陣は使用していなかった。


「アドキス、どうやって飛んでるんだ?」


「え、いつも通りです。ただ体が重くて不安定ですけど」


 いつも通り飛べる? 言われて、ルシファーも試すが、もちろん落下した。途中で翼をもう2枚追加し、魔法陣でふわりと浮き上がる。合計4枚に増えた白い翼を動かしながら、魔法陣で浮遊をかけ続けた。


「いつも通りだと落ちるぞ」


「僕は浮いていますね。なぜでしょう」


 真剣な顔で問われても、同じことを問い返したいのはオレの方だ。ルシファーはそう切り返し、地上へ視線を向けた。それから上空を確認するように見上げる。


「落ちた穴はもう見えないな」


「陛下、あたくしの羽も飛べますわ」


 ほらと両手を広げて示す通り、ベルゼビュートも浮いている。だが飛ぶ表現するには、不安定だった。魔法陣での魔術発動の威力が落ちたのと、同じ原理か。理由は不明だが、持っている能力が半減したのは事実らしい。


「ここはオレの知る世界じゃなさそうだ」


 見た目は似ている。遠くまで広がる森と、点在する湖。向こうに火山があり、川も流れていた。反対側を振り返れば、海らしき光の反射も見える。しかし……気配と表現するべきか。森に魔力が感じられなかった。


「降りてみます?」


「そうだな。この世界にラミアや子どもが来たとしたら、落下したはずだ」


 同じ穴から落ちたか判断できないが、無事でいればいい。そう考えながら森に近づく。ゆっくり下降するルシファーは、全員を個々に包む結界を張った。

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