表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
250/530

248.もう一度確認しておこう

 哺乳瓶に使われるワイバーンの翼で作られた乳首を、ぶちっと噛み千切った赤子を、全員が凝視する。


「人魚って、鋭い牙があったか?」


「上腕ほどの大きな魚を、頭から齧って捕食していたので……おそらく」


 立派な牙や歯が並んでいそうだ。上半身美女の人魚だが、食事風景はかなりアグレッシブらしい。想像するだけで、痛そうな歯が並んでいると思われた。


「人魚にもう一度聞いてみるか」


「ええ、間違えて渡した可能性もありますし、探しましょう」


 アスタロトが同意したので、リリスとイヴにキスをして離れた。正体不明の赤子を抱いたルシファーに、レライエが同行を申し出る。


「気をつけてね、ライ」


「行ってきます」


 大公女や魔王妃と挨拶を交わし、レライエはルシファーの斜め後ろに立った。魔法陣で転移する彼らを見送り、リリスは壊れた哺乳瓶を眺める。


「あの歯で噛まれたら大惨事ね。人魚のお母さん、大丈夫かしら」


「同族同士なら、何か方法があるかも知れませんね」


 噛まれずに乳を与える。それが可能か議論しながら、奥様会のメンバーは奥庭へ足を向けた。本日のお茶会もとい会議は、奥庭の大木の下で行う予定だった。


 巨大なイグアナが昼寝する間を抜けて、彼女達はお茶会の準備を始める。テーブルセットではなく、まずは囲いを作り始めた。その内側に敷き物を用意する。イヴを中に放し、その間にミニテーブルを用意した。被ると危険なので、冷たいお茶に限定している。


「これなら平気そうね」


「お茶菓子をこの上に置いてはどうでしょう」


 ルーサルカが土属性を活かして、一部の地面を膝上まで持ち上げた。そこへお茶のカップやお茶菓子を置く。以前は魔王城の備品であるティーセットを利用することが多かった。しかし最近は、それぞれにカップやコップを持ち寄る。


 種類が違うので、こうしてごちゃ混ぜに並べても、持ち主の見分けのつく利点があった。


「ライのところのゴルティー。今日はどこへ預けたのかしら」


「さあ」


「夫のアムドゥスキアスが預かってるかも知れませんね」


「大丈夫だといいんだけど」


 リリスの不安そうな声に、大公女達はからりと笑った。


「あのライの子ですから、きっと平気ですわ」


「琥珀竜の名をもらったんです。暴れてるんじゃないですか」


「ええ」


 勢いよく柵の中を這いずり回る我が子に気づき、リリスは頬を緩めた。そうよね、安全な場所に預けたに決まってるわ。そうでなければ、ライも同行しないでしょうし。


 なぜか突然浮かんだ不安を打ち消し、リリスは奥様会を始めた。途中でベルゼビュートも合流する。ジルとイヴがお互いを引っ張り合い、泣きながら殴り合いに発展した。仲がいいのか悪いのか。年が上なので加減した挙句、めちゃくちゃに殴られたジルが半泣きで助けを求めた。


「陛下の御子でも構いません。やっておしまい」


 母ベルゼビュートに再戦を嗾けられ、ジルは必死に戦った。が、やはりイヴの攻撃に泣きながら逃げ出す。そんな我が子を抱き上げ、ベルゼビュートは微笑んだ。


「最後までよく戦ったわ。女の子に、ケガをさせなかったのも立派よ。さすがは私の息子ね」


 褒められるジルを見て、イヴは指を咥えた。期待の眼差しを母リリスへ向けるが……その反応は予想と違う。


「イヴ、あとでルシファーに言いつけますからね」


 ショックを隠しきれない様子で、イヴは背を向けて丸まる。その後ろで「私の子だからケンカするわよね」と笑う母の声に、くるりと一回転した。


「おいで、イヴ」


 抱っこすると両手を広げたリリスに目を輝かせ、イヴは全力で突進した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 授乳期の人魚のお母さんの乳房と乳首は鋼のように固くなる説。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ