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192.ベルゼ、胸にソースが付いてるぞ

 朝日が差し込んだベッドの上で目覚める。カーテンを閉めるのを忘れていた。ぱちんと指を鳴らしてカーテンを閉めたが、今の音で起こしてしまったようだ。リリスは欠伸をしながら両手を伸ばした。朝のキスを強請る彼女を抱き締め、唇を重ねる。結婚してからの習慣だった。


 惜しく思いながら離れると、間で眠るイヴがもぞもぞと動き出す。こうした状況で泣かないのは偉いが、つぶらな瞳で凝視されるのは気恥ずかしい。ルシファーは自分と同じ銀の瞳を、そっと手で覆った。


「目が覚めたなら起きるか。アスタロト達の様子も見ないとならないし」


 理由を付けながらイヴをリリスに預ける。朝食の前にさっと様子を見てくる。そう告げて、用意した着替えを手渡した。イヴとリリスの着替えはほぼ毎日、ルシファーの選ぶドレスやアクセサリーだ。リリスはそれに不満はなく、選んでもらえることに愛を感じていた。


「ありがとう、行ってらっしゃい。すぐ戻れそう? 朝食は一緒に食べたいわ」


「状況次第だが、遅くなりそうなら遣いを出す」


 アデーレを始めとした吸血種が大勢いるのだから、誰かに伝言を託せばいい。そう告げると、彼女はほわりと笑った。緩やかに波打つ黒髪に口付け、ルシファーは自分の着替えを一瞬で終える。相変わらず黒や紺などの濃色のローブを羽織った魔王スタイルだった。


 廊下へ出る夫を見送り、リリスは溜め息を吐く。自分の髪はくるくる丸まろうとするのに、ルシファーはいつでもさらさらストレートだ。女性としては羨ましい。もちろん結うのが大変なのは理解できるが、普段のノーメンテは憧れだった。風に揺れるストレート髪を目指し、リリスはブラシを手に取る。


 今朝も癖毛との戦いが始まるのだ。その様子を床で這う娘イヴは不思議そうに見つめていた。ちなみに、イヴの髪は母親譲りの癖毛でやや波打っている。自分の髪が終わったら、イヴの髪も梳いてあげなくちゃ。そう決めて、リリスは並んだ香油の瓶を開けた。


 その頃、到着した元執務室の現場でルシファーは額を押さえていた。


「何も変わらないのか?」


「進展はございません」


 外から見る限り、特に異常はない。進展があったのは、むしろ吸血種側だった。なんと、この透明の球体を透かし見る個体がいたのだ。侍女として勤めるカーミラだった。ぼんやりとだが様子が分かる。彼女の解説によれば、内部で多少の変化はあった。


 説教が途中で実力行使となり、ドワーフ4人vs大公アスタロト戦が始まった。だが、すぐに決着がついてまた説教に戻ったらしい。その間にドワーフ達は酒が切れて震え始め、呆れ顔のアスタロトにワイン樽を恵んでもらったようだ。空の酒樽が転がっていた。


 何をやってるんだか。呆れ半分で球体を覗くが何も見えない。正確には透き通った球体の向こう側、階下の抉られた壁や天井の状態が確認できた。まったくもって、内部は把握できない。見えても心配だが、見えないともっと不安が募るものだ。


「誰か解除できないのか」


「イヴちゃんに頼んでみたらいいじゃない」


 いつの間に現れたのか、野菜とハムを挟んだパンを齧りながらベルゼビュートが呟く。朝食の途中で現れたなら、彼女もそれなりに心配していたのだろう。いつも通りのドレスと巻き髪で現れた彼女は、からりと笑った。


「陛下の魔法を無効化出来るんですもの、きっと透明も無効にしてしまいますわ」


「……ベルゼ、胸にソースが付いてるぞ」


 さすがに胸の上なので、垂れたと表現するのは失礼なのでやめた。危険だからリリスに触らせたくないのに、イヴに触らせるわけがないだろう。むっとした顔で、豊満な胸にぽたりと垂れたソースを指摘して踵を返した。大事なことを後回しにしていると気づいたのだ。


 オレもリリス達も朝食がまだだった!!

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[一言] アル中ドワーフ・・・(呆)
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