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【完結】魔王様、今度も過保護すぎです!  作者: 綾雅「可愛い継子」ほか、11月は2冊!
第11章 いい度胸じゃないか!

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166.結界の達人相手に戦うのはしんどい

 振り向いたベールの目は海より深い青だった。一見すると冷静そうに見えるが、これは色の印象だけ。普段よりキツくなった目元や、物騒な笑みを湛えた口元が真逆の状態を示していた。銀の髪がふわふわと舞い上がる。海から蒸発する水分が上昇気流を作り、霧となってベールの周囲を取り巻いた。


「思ったより理性が飛んでるな」


 リリスやイヴに対して、そこまで思い入れがあったのか? ルシファー自身も見当違いだろうと思いながらも、肩を竦めた。そういうことにしておこう。おそらく過去の古傷が抉られたのだ。彼は最愛の番を喪っている。その傷口をルキフェルがかなり癒したが、それでも何かの拍子に開いてしまう。


「ベール、オレを傷つける気か?」


 無造作に近づくルシファーの背に広がる4枚の純白の翼が、ばさりと音を立てた。目を見開き、僅かの沈黙が場を支配する。オレを認識したな、そう思ったルシファーが気を緩めた瞬間、結界の外側にヒビが入った。


「くそっ、全然認識してなかった!」


 ベールの手に握られた細い剣が結界の表面に食い込み、一番外側の結界が弾ける。魔力を込めた一撃に、ルシファーは咄嗟に収納から剣を取り出した。


 がうぅ! 足元でイカを屠ったケルベロスが吠える。自分を使えと言うのだろうが、もしデスサイズを振るったら過剰戦力だ。


「ケルベロス、そのまま援護だ」


 援護だけ命じ、デスサイズとして振るわない意思を示す。不満そうにしながらも、ケルベロスは宙を駆けあがった。元が魔力を帯びた不定形の生物だ。空を飛ぶくらい簡単にこなす。


 キンッ、二枚目の結界に剣を縦に刺そうとするベールの姿に、ルシファーは溜め息を吐いた。これは厄介だ。本気で殺しに来てるから、オレどころか誰も認識できない状態だった。何らかの方法で気絶させるか、冷静になるまで隔離だな。


 作戦を練りながら、二枚目の結界の内側へもう一枚追加した。内側から押し出すように結界を複数追加する。割られる間に手を打とう。


 そんなルシファーの姿にヤキモキするのは、外部の者だ。一度撤退を命じられた魔王軍の精鋭であるドラゴンは、現時点での上司に当たるルキフェルに突撃を具申する。だがベルゼビュートに一蹴された。


「陛下は勝てないんじゃなくて、勝たないのよ。あの方が本気で力を振るったら、ベールが粉々に……って、ちょ! ルキフェル?!」


 無言で聞いていたルキフェルが魔法陣を足元に投げ、転移で消える。残された魔法陣が、盾となる結界を維持していた。慌てたベルゼビュートがその魔法陣に魔力を流し、さらに強化する。


 結界を纏めて割られたルシファーの上に、ケルベロスが飛び出す。真っ二つに斬られる寸前、ルシファーが「デスサイズ」と呼び変えた。鎌の刃が、ベールの剣の軌道を逸らす。結界に長けたベールとの戦いは、思ったより厄介だった。


 結界の僅かな綻びを探り当て、無意識にそこを突いて来る。舌打ちしたルシファーが手足の一本は後でくっつけると乱暴な理屈で、デスサイズをベールに向けた。迎え撃つベールの表情が険しくなる。ほぼ同時に動いた二人の間に、水色の髪の青年が現れた。


「っ!」


「くそっ、間に合うか」


 軌道を変えたルシファーがデスサイズを散らす。元が物理的な刃ではない鎌は、ルキフェルの結界に触れて消えた。外側にヒビの入った結界に、ベールの刃が迫る!


 キンッ、甲高い音で弾いた。と同時に真っ赤な血が噴き出す。ルキフェルの水色の髪に、赤い血が広がった。叫ぶリリスが顔を逸らし、イヴの目元を手で隠す。


「ロキちゃんが!?」


「違うわ、あれは……っ」


 息をのんだベルゼビュートの叫びに、後ろのドラゴンからも悲鳴や呻き声が漏れた。

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