三話 選択の先へ
「ディアナ、か。いい名前だな」
そう、笑いかける創永は、未だに立ち上がれずにいた。
「そう? ありがとう」
笑顔には笑顔で返してくれるディアナ。今のところ、雰囲気は悪くはなかった。
「ところで、何でこんな場所で寝ていたの? 森の中は危険だよ?」
「あー、それはそうなんだが……ちょっと試したいことがあったからさ、やってみたんだけどね〜、あまりにも体力を使ってしまってね?」
抽象的なものの言い方をしてしまうが、本当のことを言って何か起こるよりはマシだ。
「ふーん? あまり無理は良くないよ?」
「あぁ、今後は気をつけるよ」
少しバツの悪い笑みで返した創永だが、ディアナがそれをあまり気にした様子はなかった。
二人はお互いに黙り込んでしまう。
これ以上、特に話す内容も見当たらなかったのだ。
(沈黙は不味いよな……でも、俺、話は上手くないぞ? 何か無いか、話のネタ的な)
一人で黙々と考えを深めていると、ディアナの方から話を振ってくれる。
「あの、これから何処かに行く予定とかあります?」
これは、何か意味を持った質問なのだろうか。そんな曖昧な考えで、これから先のことも考え始める。
「いや、特に行きたい場所はないかな? それより、のんびり出来そうな場所を知らないかな?」
のんびりと聞き、思い当たる節がありそうな表情をしている。
しかし、すぐに困った表情に変わったので、何やら問題があるようだった。
「あの、のんびりできる場所は知っているのですが……どうお伝えしたらいいか」
「なるほど……それってここから近い? それとも、遠い?」
「とても近いですよ? 問題はそこに入れるか、なのですが……」
創永の中では二つの選択肢が生まれた。
(警備が厳しいから入れないのか、余所者を嫌う傾向があるから入れないのか……まぁ、結局のところ向かうか、向かわないかの二択なんだが)
自分の中では答えが決まっていたが、ふとディアナの顔を見てしまう。
特に変わった表情はしていないが、何故がとても気になってしまう表情だった。
ディアナも見られていることに気付き、頬を染めそっぽを向いてしまう。
「よし、決めた! ディアナ、その、のんびりできる場所を教えてくれないか?」
意外な選択だったのか、驚いた表情で固まっているディアナ。
「いいのですか? もしかしたら入れないかもしれないんですよ? 無駄足になるかもしれませんし……」
ディアナは真面目に考えていた。無駄足だとか、入れないかもだとか、そんなものは行ってみなければわからないというのに。
「あー、なんとかなるよ、きっと! まぁまぁ、それよりも、その場所まで送ってくれる?」
「お、送る!? ま、まぁ、構いませんが、同じ方向ですし……」
ディアナのあたふたとする様を見て、ほんの数瞬間だが、何処か懐かしく感じられた。
創永は、ゆっくりと立ち上がり、土埃を落とす。
ディアナも辺りを見回し、方向の感覚を戻していた。
「さて、行きますか!! ディアナ、二回目だが、案内よろしく!!」
「はい、喜んで! てか、急に馴れ馴れしくなりましたね!?」
創永は、ディアナのノリツッコミに心の底から笑ってしまう。
そんな中、二人は森の中を歩き始めるのだった。
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