第五話 その16 居た!
第五話 その16 居た!
ガッキイイイイン!
「!」
「!」
振り下ろした槍が硬い金属とぶつかる様な、それでいて強い力で押し返される様な不思議で強烈な感触が走った!
「居た!」
「居やがったお!?」
グソクの死骸を刺す感じとは明らかに違った感触!
「魔力障壁!?」
それが魔法の力であったのかを理解できたわけではない。ただあの弓の少女が従えていた旋風が出して見せた魔法陣の望遠鏡に似た壁が、俺の槍の貫通をもの凄い硬さと力で遮っていた!
「こ、こいつ!動くお!」
どこかで聞いた様なセリフをちゅん助が口走った…
俺の槍を防いだその死骸と思われていたグソクは、他の灰色と寸分違わぬ色と大きさであった。
見た目では他の灰色と全く見分けがつかない。だが、そいつは横たわった状態でも明らかに魔力障壁を展開させて俺の攻撃を防いでいるのだ!
閉じていた脚が気持ち悪くシャカシャカと動き出し、横たわっていた、その体がゆっくり起き上がっていく!
「うう…」
「ううだお…」
俺は危険を感じ思わず距離を取る!
他の灰と同じ格好なのに、明らかにこいつは違う!
恐ろしいほどのプレッシャー!この感じはあの時とそっくりだ!間違いない!やはりこいつが!
「ギィ~~~~~~~~~」
そいつは他のキーキーと鳴く灰色と全く違う恐ろしく低いそして腹に響くような声を上げた!
「あの影の発した音だお!」
「あ、ああ…!」
確かにガリン平原で立ち上がった大きな影から発せられた音だった。
このプレッシャー!もはやなんの疑いもなく検証も必要なく…
こいつが!
こいつがボスなのだ!
「こいつが大王、蟲の王なのか…?」
「でもちっこいお…?」
記憶にある影は10数mはある戦車と見間違うほどの大きさだったはずだが、こいつは他の個体と変わらない大きさ…そこが分からない…
だが問題は体の大きさではなかった、。
「ギッギッギッギッギッギッッ!」
大量の灰色達と全く変わらない姿のこいつは!
死骸の山に潜み!
死骸への擬態!
その二重三重に施した隠れ蓑を剥がされたというのに…
それなのに!
こいつには焦りの色一つない!いや!それどころか不気味な鳴き声を
いいや!
笑い声を上げて悠然と構えているのだ!
「こいつ!楽しんで…いや試していたのか!」
「かくれんぼを楽しんでいやがったかお!」
「ギッギッギッギッギッギッ!」
俺にはその笑い声は
「よくぞ私を見つけた、褒めてやる」
そんな風に言ってるように聞こえた。
俺達と目の前にいる不気味なグソク
恐怖に震える俺達と愉快そうに笑い声を上げるグソク
俺達はやっとの思いで元凶に辿り着いたはずだった。
それなのにあぶり出されたコイツは不利な立場に立ったはずだというのに!事の優勢はどう見たところで俺達には無かった。
俺はただ漠然とボス的な奴の正体を突き止めれば何とかなる!
そう考えていたが、それはあまりに甘い考えであったと、俺達はこれから思い知らされる事になるのだった。
第五話
その16 居た!
終わり




