第五話 その4 提案
第五話 その4 提案
「は!?」
「は!?」
(イズサン…なんとかできるのかお?)
(出来るわけなかろう…)
俺は困惑する他はなかった。この世界は一体どうなっている?勇者認定した人間に大した能力も与えないのに義務と試練だけ与えるシステムなのか?
あの弓の少女は勇者なんて何人も居るような事を言っていたが、何人も存在させてさえいれば一人ぐらい成果を挙げるだろうってそういう寸法か?
大体あり得ない戦力を有している、その点に於いてはあの弓の少女の方が遥かに、軍隊並ではないか!期待する相手が違うだろう!相手がっ!
お嬢ちゃん、悪いけど勇者なんて居ないよ
そんな言葉が喉まで上がってきたが、すんでの所で引っ込めた。この子にしてみればこの状況で勇者というのは神にも等しい…それは言い過ぎか…わずかでも希望の対象なのだ。
どんな時でも希望はあるよ…
この状態でそれを奪うのも酷であろう。俺達は否定する事も肯定する事も出来ずに少女を見送ることしかできなかった…
「次は!次はどうするお!?」
教会内での籠城は不可能、教会周りの防衛ラインに参加するのも選択肢だろうが、どう見ても寄せ集めの人員が防衛に当たっている。ラインを破られるのも時間の問題に思えた。
「ぼ、防衛隊…いや今は無いのか…」
「ガレッタ隊長の部隊を探して合流!」
「その後、教会の防衛に当たるというのはどうだろうか?」
上手くいくいかないは別にして、とにかく戦力を集中させなくては!
「とりあえず詰め所という事かお…」
「そうだな!」
そう言うと俺は教会を後にして、迫りくるグソク達を斬り払い、刺し除けながら詰め所までの道を急いだ。
「イズサン!あそこ!」
ちゅん助が注意を促した方向に目をやると、なんと今度は少年がグソクに追い詰められている。
(クソ!街のあちこちでこんな!)
ズバ!
ザンッ!
俺は飛び込む様にグソクの群れを斬り除けると少年を確保する。
「もう大丈夫だ!」
そう言って少年の肩を抱いた、その時だった。
「キー!」
「キー!」
「キー!」
「キー!」
「キー!」
「キー!」
無数の鳴き声と共にバラバラと音がしそうなほどのグソクの群れが屋根から降ってきた!!!
少年に気を取られていた俺は完全に虚を突かれ、迎撃が遅れた!
「し、しまった!」
「グソクの雨が降ってきたおー!」
「またイズサンだけが死んでまう~!」
またものちゅん助の言い草だったが!イラっとする暇もなく直上にグソクが迫る!
(まずいッ!!!)
「この間抜け!」
「ボーっと生きてんじゃないわよ!」
ザシュシュシュシュ!
完全にグソクに取り付かれた!と思った瞬間、どこかで見覚えがある様な状況と聞き覚えのある声。
またあの少女に助けられた!!!
ただ今度、俺を救ったのは狙撃や砲撃ではなかった。
「アンタね!せっかく助けてあげた命、無駄にするつもり?」
「いやいや!そういうわけでは…」
少女が手にしていたのは弓ではなく槍であった。どうやら弓だけでなく武器の扱いには長けているらしい。
「あ!アスカ~!」
「また助けに来てくれたんだお!?」
「はよはよ!あれブッパなしてクレメンス!」
ドカ!
「ぐえっ!」
少女は走り寄って抱き付こうとしたちゅん助を、槍の石突でどついて半ば潰すような形で押さえつけた!
「アスカじゃないつってるでしょ!」
「変な略し方しないで!」
「略し方?」
「そ、それはどうでもいいのよ!」
「んなことより!」
「ちょうど良いとこで会ったわ!」
「もうこの街は駄目ね!街を出るのに共同戦線といかないかしら?」
「街を出るだって!?」
第五話
その4 提案
終わり




