第四話 その33 警戒は厳!
第四話 その33 警戒は厳!
「雨ですな」
「やれやれ討伐隊にとっては恵みの雨かも知れません」
「なにしろ奴等は体は大きくとも昆虫の類です」
「雨の日は石や木に寄り添って、比較的大人しい」
「夜と同じように動きを止めてじっとしていますからな」
「そういう時はやっつけるチャンスでないのかお?」
「ええ、たしかにそう思われるでしょうが、雨の日は足場が悪く」
「うっかり足を滑らせて餌食になる隊員が過去に続出した事と」
「夜は夜で奴等、動きを止めているとはいえ魔物の本性なのか昼間より凶暴になる個体も多いのです」
「視界の悪い中、せっかく大人しいのに突いて藪蛇になってはいけませんからな」
「まあ夜と雨の日は我々とグソク」
「暗黙の休戦協定の様なものです」
「条件の悪い中、討伐に出て命を落としては元も子もありませんからな」
「なるほど」
「ふーむ、イズサンがよく言う、夜は寝ようよ、ちゅーやつだなお?」
ちゅん助は、俺が前の世界でCEをやっててどこぞの機器が故障した時、深夜にもかかわらず呼び出されたり、毎夜毎夜帰りが午前様になるのをよく嘆いていたのを覚えていて俺がしょっちゅう口にしていた
「夜は寝ようよ」
というフレーズをなぜか気に入っているのだ。
身体が弱くて、しっかりとした睡眠をとらねば翌朝目覚めた時から既に体調が悪くなる虚弱体質の彼ならではの感覚なのだろう。
「コンビニ24時間、誰かの便利は誰かの不幸だお」
「グソクもそれを分かって夜は休んでるお」
「んなーこたーない!」
「いけない!こんな時間に!」
「勇者様、本日は貴重なお話をありがとうございました」
「あまりお役に立てなくて…」
「いいえ!そんな事はありません!」
「色違いのグソク、それだけの情報でも我々には十分な価値がありました」
「正体不明の影の情報もあるのとないのとでは我々の意識の点で大違いです!」
「またお気付きの点があれば、このガレッタまで是非とも御一報ください!」
「今日頂いた情報を基にこれまでとは違った対策を練り、より厳重な警戒体制を取ります」
「と、言っても人員が限られておりますが…」
「警戒を厳にするという奴だなお?」
「警戒を厳にするという奴です!」
「勇者様!御付きのお方!それでは!」
「勇者じゃないんだけど…隊長もお気を付けて」
「お気を付けてだお、あとお付きはイズサンの方だお」
ガレッタは土砂降りの中を帰っていった。
雨脚は強く、思えばこの世界に来てまとまった量の雨が降ったのはいつ以来だったか…
「イズサン、なんかこの街ヤバいなお?」
ガレッタが出て行った後、ちゅん助が不安を口にした。
「お前もそう思うか?」
「わしは目の前で友が喰われそうになったん見とるんやぞ!」
「その時からヤバさは感じとるお!」
「確かにあれは、今こうして生きてるのが不思議なくらい危なかったな」
「ヤバさが分かっとるなら、明日にでもさっさとこの街を発つお!」
「治癒士との面談はどうすんだよ?」
「ちっ!覚えてやがったかお…」
「ちゅん助…お前な…」
「わ、わしは別にイズサンだけがSSR引きそうなのを止めようとか!」
「そんなんじゃないんだからね!」
スパーン!
「いたいお!」
「面談まではこの街に残る!以上だ!」
「こらあ!わしは危険を忠告したお!」
「この街は危ないんだお!」
「危険が危ないんだお!」
「まあ少なくとも朝までは大丈夫だろ?」
「雨降ってるし、こういう日は奴らも大人しい、あの隊長も言ってたろ」
「い~や!逆に危ないお!」
「わしがグソクなら今日!この街を攻め立てるお!」
「ほうその心は?」
「1944年6月6日!」
「ノルマンディ上陸作戦は嵐の中!」
「この日は無い!」
「そんな日に実行されたお!」
「嘘こけ!嵐を避けるために5日から延期されたんだろうが!」
「映画見たからそれくらい知っとるわ!」
「危ないんだお!危ないんだお!」
「嵐の夜中に、を知らんのかお!」
「なんだよ、嵐の夜中に、って!」
「嵐の中、小屋の中で出会った狼が羊を言葉巧みに!」
「見るだけ!」
「見つめるだけ!」
「舐めるように目で犯すだけ!」
「傍に寄るだけ!」
「臭いを嗅ぐだけ!」
「ちょっと触るだけ!」
「ちょっと舐めるだけ!」
「先っちょだけ!」
「半分だけっ!」
「全部だけッ!」
「って最終的に全部食べちゃう!」
「それはそれはエッ!」
「じゃなかった!」
「恐ろしい同人じゃなかった…」
「絵本の話だおw!」
「聞くだけでもおっそろしいお!」
「恐怖のあまり体が!」
「体がガクガクしちゃうぅ~w!」
「お前、それ色々話、違ってねーか?」
(ガクガクしちゃう~が言いたいだけだろ…)
「い~や!危険だお!」
「わしは今日!寝ずの番して警戒に当たるお!」
「そんな大げさな…」
ちゅん助はいつものように一人で事を荒立てては窓に張り付き、張り切って外の様子を眺めていたが案の定、0時を過ぎる前に眠りこけ、窓枠から落っこちて無様な格好で床で寝ていた。
「結局こうなるんだ…」
「イキっといて、たった数時間…今日の警戒すら出来てねーじゃん…」
俺は床に転げ落ちてる間抜けを拾い上げてベッドに放り込んでおいた。
第四話
終わり




