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更新停止中 イズちゅん  作者: ちゅん助の!
第四章 熱狂と蟲の街 ガリン
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第四話 その2 ちゅん助吼える!

 第四話 その2 ちゅん助吼える!


 教会の案内所に着くとそこは不景気の時の職安のごとく、いや雰囲気的には何かのイベント会場の様に人でごった返していた。


 ハローワークなら悲壮感漂う人も多かろうが、ここグソク経済圏ど真ん中に位置するこの街の人々の情報共有交換場所は高揚感と希望に溢れた人ばかりに感じられた。


 仕事と仲間の情報を求めて


 人、人、人、そして人


 列、列、列、そして列


 入り口を飛び出さんばかりに並んだ人の行列は、誰もが新たなスタートと出会いを求めて、我の順番はまだか!といら立ちを含んだ高揚感を醸し出していた。


 しかし、その中でも飛びぬけて高ぶっているのは…


「ひかえ!ひかえ~!ひかえおろ~!この特別信者の証が目に入らぬかお~!」

「この日本男児の桜!散らせるもんなら散らしてみるお~!」

「そして!余の顔に見覚えが無いかお!どかん奴は今日も決め手の銭が飛ぶお~!w」


「おい、四つぐらい混じってんぞ!あと行儀悪いとかモラルないとかそういうレベルじゃねーぞ!」


 今か今かと順番を待ちわびている人の群れを掻き分けて、ちゅん助がカウンターに飛び乗ると、自らの通信石に刻まれた特別信者の刻印を頭上に振りかざしたのだった!


「なにを言うかお!特別信者は株主優待みたいなもんだお!」

「特権は振りかざしてこそ優越感に浸れるんだお!」

「さあさあ!さ!さあさあ!」

「大人しく神妙に!美少女を紹介してもらうおうかだお!」


 刻印を突き付けてカウンターの案内係の女性にちゅん助が迫った。


「旅のお方、熱心なる信者のお方、日ごろの信仰に感謝いたします」


「うむ!苦しうないお!」


「ですが!」

「特別信者様、その証は確かに優先的にお話を回させて頂くものではございますが…」

「恐れながら順番抜かしや割り込みを容認するものではありません!」


「え!?」


「そのような刻印の扱いをされると即取り消し、そのような流れになりますが如何いたしましょうか?」


「し、知ってたお!ボケてみただけだお!」

「に、日本人は行列が好きなんだお!行列のできる冒険者案内相談所へようこそだおw」


 女性に穏やかに、しかしながら凄みを含んだ表情で諭されると一目散に退散し、ちゅん助は行列の最後尾へと回った。


 俺はその女性にどうもすいませんとばかりに頭を下げてからちゅん助の後を追った。


「おい!恥ずかしいまねすんなや!」


「ふぁふぁーん!(←泣いている音)刻印は万能の物ではなかったお~」


「当り前だろ!」

「いきなりあんな見せびらかしてどいういうつもりだよ!」


「わしは我儘をとおしたいんだお!」

「かくなるうえは聖杯ウォーズに参加して万能の欲望器を手に入れるお!」

「その暁には刻印などポイーだお!」


「ねーわ!あとポイーとか罰当たりな…」


「あるお!命呪を持って命ずるんだお!」

「スレイブワーカー!勝利せよ!勝利せよ!」


「誰が社畜やねん!酷くない?」


「なに~!?わしの命呪が聞けんと申すかお?」

「自害せよスレイブワーカー!自害せよ!自害せよ!」


 スパーン!

「むしろお前が死ねよ!」


「痛いお…」


 まったく!


 不条理な理屈で順番抜かしを企んだ挙句、通じないと見るやありもしない妄想の力で強引に押し通そうとするとは、わが友ながらとんでもない奴だ…だが俺はまだこの男の真の恐ろしさを知らなかった。


 そしてそれは俺達の順番がやってきてすぐに思い知らされるのだった。


「お待たせしました、次のお方」


「たのもー!」


 ある種、混乱ともいえる人ゴミと長蛇の列から午前中が潰れるのは覚悟していたが、意外にも列の進みが速く一時間足らずで俺達の番となった。


 案内係の前に置いてあるPC並みの大きさの精霊石らしき丸い石が、その処理の速さの秘密であるようだった。


 退治した魔物をカウントしてくれる剣の柄にはめられた小さな通信石と言い、この世界で最も目を引く便利アイテムであることは間違いない様だった。


「教会へようこそ、本日はどん…」


「おにゃのこ!おにゃのこ紹介してくれお!」


 案内係がお決まりのセリフを言い終わる遥か前に完全に食い気味…食いで!ちゅん助がしゃしゃり出た!


「お、おにゃのこ?」


「すいません!気にしないで!俺達、旅人というか冒険者というか一緒に行動を共にする仲間を探してまして…」


「おにゃのこだお!」


「黙れって!」


 俺はカウンターで飛び跳ねるちゅん助が、これ以上恥ずかしい行動をしない様に引き寄せて拘束した。


「は、はあ…それでしたら何か職業とか希望の条件をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


「よくぞ聞いてくれたお!」


「あ!こいつ!」


 ぎゅっと押さえつけていたはずなのにいつの間にかスルリと腕からちゅん助が抜け出して、再びカウンターで跳ねた!こうなるともう手遅れだった。


「仲間に求める条件!まず第一にベースはラヴァーのアスカだお!」


「べ、ベース!?アスカぁ!?」


「ちゅ!ちゅんすけえ~!」


 止めてくれ!そう懇願しようとする俺にちゅん助が鋭すぎる眼光を飛ばす。


「イズサン…わしは今!この世界での最大、そして最重要なイベントに足を踏み入れとるお?」

「すべては…すべてはここで決まるんだお!ここで邪魔をするようなら、死んでも知らんお!!!???」


「ああ~もうだめだぁ~…」


 こうなるともう止める手立てはない…神よ…


「ベースはアスカだお」

「髪は黒でロング、サラサラ且つフワリ!しかしウェーブやパーマはいかんお!」

「ハサミで切ったような直線が入るような髪型は不可だお!」

「瞳の色は青でも黒でも可だお!基本垂れ目で怒ると吊り上がるお!」

「眉は強気な感じで!」

「唇はやや薄い感じで!」

「胸はC寄りのB!80まで、尻は89!90に乗ってはならないお!」

「Bと言っても貧乳でないお!あくまで美!微乳だお!」

「つまり!身体は夜岸りさちゃんベースだお!」

「身長は高くなく、しかし低くもなく!」

「そして!ベースが夜岸りさと言っても体つきはグラドルじゃなくアスリート寄りだお!」

「特にケツと脚はデカく太いけど!絞られていて逞しいお!」

「腕は細くて華奢な感じでも構わんお!」

「体重は見た目のわりに筋肉が付いてるので重くて良しとするお!できれば体重、小さめの乳、でっかいケツにコンプレックスを感じててほしいお!」

「コンパクトに纏められた乳とグラマラスな下半身!これはフロントは鋭く空気を切り裂くロードラッグ!リアはビッグトルクを受け止めるワイドぼでぃ!最新のレーシングカー理論だお!」

「性格は強気且つ強気!同〇誌で虐められ辱められても最後の最後まで堕ちないお!」

「~で!~に!」

「~であるからして~であって!」

「あーだ!こうだ!」

「こうしてこうなって!」

「であるからこれで!」

「絶対!~で!」

「これも~だから譲らんお!」

「etc!etc!etc!etc!etc!etc!etc!etc!etc!etc!etc!etc!etc!etc!………………!」


 ああ…だめだコイツ…早く何とかするべきだった…案内役の女性の顔が見る見るうちにひきつって絶望的な顔から血の気が引いた冷めた汚いものを見る目へと変わっていくのが分かった。


 ときおりこちらに冷たい刺す様な視線を向けて、おいお前!この変態ぬいぐるみ何とかしろよ!何ともできないなら廃棄してこい!的な目線を向けるが、俺はすいません、というように俯いて首を振るのが精一杯だった。

 

 恐ろしい、恐ろし過ぎる奴…こんな見た目でも中身は46歳のおっさんなのだ。


 この歳ともなれば2児の父親であってもおかしくない、分別あって社会的地位もあっておかしくない年頃。


 そのおっさんが、今日初めて会ったばかりで、しかも教会の聖職者であろう案内係の女性に対して、自らの理想の女性を紹介せよと迫っている。

 

 いや!理想の女性を紹介ならまだ可愛げがある…

 

 コイツがやってることは、そう『ぼくのかんがえたさいきょうのびしょうじょ』という妄想を臆面もなく晒し吹聴しまくっているだけなのだ。パーティーメンバーの募集などではない。


 ひょっとしたら、ゲームのキャラクターメイキングかガチャかなんかと勘違いしているのだ…46歳の…46歳のおっさんが…臆面もなく…


(コイツがここまで手遅れだったとは…どうしてこんなになるまで放っておいたんだ…)

(こ、拗れるという事は…ここまで恐ろしい事だったとは…)

(46歳の…おっさんが…)


 俺は10分以上にわたるちゅん助の独演会を横目で見ながら、ただただ、ただただ呆れるばかりであった。


「はあはあ!だいたい大まかに言うと、はあはあ…こんなとこだお、はあはあ!大ざっぱですまんお、はあはあ」


 スパーン!


「詳細且つ生々し過ぎるわ!」


 ちゅん助の要求は姿形から始まって性格、気性やあんな事からこんな事まで聞くに堪えないような事柄を、それも女性の前でしたのだった。


 案内係の生気のない、もうすぐ殺気が混じりそうな表情が怖かった。


「はあはあ、一番大事な事を忘れとったお!」

「中の人は峰ちゃんで頼むお!!!」


「な、中の人ぉ?ミネちゃん!?」


 案内係には何の事か分かるはずもない…


「峰ちゃんと言ったら峰原梨沙しかおらんお!これは絶対譲らんからな!だお!」


「もういい加減にしてくれ…ちゅん助…お前、親の前でも同じ事できるの?」


「できるお!」


「そうですか(棒)」


「お気が済まれましたか?(冷)」


 もはや付き合いきれぬ!といった感じで案内係が発した。


「うむ、我が主張に一片の悔いなし!どーん!」




挿絵(By みてみん)



 ちゅん助が左腕?左羽?を天に衝き上げてるポーズを取っているのだろうが、手足が短すぎてピコピコ動いているようにしか見えない…


「それではさっさと只今の主張()を念頭に置いて、この照合石に触れてください!早急に!」


 案内係の前にある大きな精霊石みたいなのは照合石というらしい。どうやらこれに触れることで条件検索や募集内容の応募のようなことが出来るらしいが…?


 第四話 

 その2 ちゅん助吼える!

 終わり

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