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更新停止中 イズちゅん  作者: ちゅん助の!
第三章 湖の街アクリム
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第三話 その4 ルノアとマノア

第三話 その4 ルノアとマノア


 恐らく手持ちがゼロになったというのにちゅん助は気にする素振りもせず商売を続けた。


 俺もこうなっては仕方がなく次善の策としてちゅん助の商売に付き合わず、この街での狩りや依頼を引き受けては稼ぐしかなく、ちゅん助の所に顔を出す時間は極力短くしたのだった。

 

 今日も仕事を引き上げちゅん助を迎えに行く途中なのだが、あれ以来やはり売り上げはゼロ。


 珍しい商品ではあるため人だかりだけは出来るようだったが…出来ては去り出来ては去りを繰り返すだけで肝心の売り上げはさっぱりのようだった。

 

 ちゅん助の売り場に着くと、どうやらちゅん助は二人の老婆を相手にしている様だった。


「ちゅんちゃんが毎日一生懸命やってるから、一つだけ頂こうかねえ」


「マノアねーちゃん!ありがたいんだお!」

「60年遡ったらお嫁にしたるおw!」


 どう見ても老婆なのだがちゅん助は年増の女性に対しても老婆に対しても絶対におばさんとかばあさんと言わずおねーさんと呼ぶ。

 そういう部分は見習いたいのだが、後半部分は何気に失礼な事を言ってる気がせんでもない…


「マノアさんお止めなさいって!こんな訳の分からない御守りなんて!」


 マノアと呼ばれた老婆の手をもう一人の老婆が軽くはたく。


「あ!ルノワねーちゃん!なにするんだお!」

「マノワねーちゃんがせっかく買ってくれるって言うのに!」


「うるさいねえ!この子は!」

「わたしゃいい加減な商売で人をだまくらかすなんて許せないのさ」


 ルノワと呼ばれた老婆の言い分はもっともだが…


「ひどいお!わしは騙してないお!いい加減じゃないお!」

「この御守りは役に立つんだお!3年の安心が買えるお!安いんだお!」


「フン!たかが火事除けだろ?いいかい!」

「この街ではね火事なんて言葉すら、もう忘れちまってる住民がほとんどさ!」

「役にも立ちゃしない物を!」

「こんなべらぼうな高値で売りつけて!どこがいい加減じゃないんだい!?」

「こんな金があればいったい、どんだけのパンが買えるのさ?言ってごらん!」


「むぐくくく…」


 ルノワの言い草はきついものであったが、全くもっての正論であり、ちゅん助はあっさりと言い込められてしまった。


「ふぁふぁーん!(←泣いている音)天災は忘れた頃にやって来るんだお!」

「ルノワねーちゃんは意地悪なんだお!」

「いっつもこうやってわしの商売邪魔してイジメるお!」

「その点マノワねーちゃんはやさしいお!」

「いっつも気に掛けてくれてお菓子とかくれるお!」

「似たような名前なのにわしはマノワねーちゃん好きだお!」

「ルノワねーちゃんは意地悪だから嫌いだお!」

「ふぁふぁーん!(←泣いている音)」


 言い込められたちゅん助もさるもので、即座に話題をすり替え、マノワに抱き着くと被害者を装って同情を集める作戦に変更したらしい。


「フン!アンタみたいなジャガイモ頭に好かれたくないね!この詐欺師!」


「はあああア!?わしは芋じゃないお!あんなカレーの具材と一緒にするなお!」

「ふぁふぁーん!(←泣いている音)あと詐欺師って言った!詐欺師って言った!」

「わしはレッテル貼られてイジメられたお!」

「マノワねーちゃん!わしは悔しいお!ふぁふぁーん!(←泣いている音)」


「よしよし、ちゅんちゃんそんなに泣かないの。男の子でしょう?」


(おっさんです…)


「わしは悔しいお!ふぁふぁーん!(泣いている音)悔しいお!悔しいお!」


「よしよし、後でまた私の作った飛びきりのお菓子をあげるから、泣き止んで?」


「ふぁふぁーんw(←泣いているようにみせかけている音)いっぱいほしいおw」

「お礼にこれ一つあげるおw」


 そう言うとちゅん助は御守りをマノワに手渡した。


「あらあら良いのかい?こんな高いもの、売り物なんでしょう?」


「つまらないものですが良ければ!」


「それ見た事か!フン!情けないったらありゃしない」


「は?これは日の出る国、ニッポンのしゃこうじれいという奴やぞ!」


 語るに落ちた盛大な自爆をしたちゅん助…


 如何にも気の良さそうなマノワさんは、大げさに泣き喚くちゅん助の頭を優しく撫でて慰めるのであった。


「悔しいお!悔しいんだお!火事さえ!火事さえ起これば!」

「この御守りの凄さが分かるのにぃ!ふぁふぁーん!(←泣いている音)」


 いい大人がふぁふぁーんを連発するんじゃないよ!

 頃合いだな、そう思って俺は割って入った。


「すいません…連れが迷惑おかけしました」

「ちゅん助!お前もお前だ!火事が起これば!」

「なんて人の不幸を期待するようなこと言うんじゃないよ!」


「ふぁふぁーん!(←泣いている音)わしを奴隷扱いして、強制労働させてる酷いご主人さまが来たお~w」


 まだその設定やってるのか!なんちゅう奴だ!


「うっさいわ!ここ数日の宿代と飯代、全部俺が払ってるだろうが!見え透いた嘘つくな!」


「ふぁふぁーん!(←泣いている音)今日は肉喰いたいお~w」


「稼ぎもない癖に!なんという贅沢な!」


 慌ててマノワさんの腕からちゅん助を受け取ると急いで宿に帰った。これ以上あの場に留まるとホントに俺が奴隷商人かなんかに仕立て上げられかねん…


「ちゅん助、お前は!わっるい奴じゃのう!」


「お代官様こそw」


「そういう話じゃねーよ!」

「お金持ち相手に売りつけるならまだしも、あんな老人達相手にまで!」

「役立たずを売りつけようとするなんて恥ってもんが無いのか!恥というものが!」


「なにを言うかお?わし特製御守りは逆にプレミアがついてもおかしくない逸品だお!」


「バカ!見ろこれ!」


 俺はちゅん助を引き上げた後、そのままほったらかしにしておいた御守りの存在を思い出しわざわざ市場まで取りに戻ったのだった。


「ほうほう?銀色にうっすら影を纏った渋みのある輝き」

「わしの人生にも似た玄人好みの素晴らしき御守りではないか!」


「それはお前の顔が刻印してあるからだろ…」

「言いたい事はそうじゃない、いくつある?」


「みれば分かるお?5×10で50っ個あるお?」


「そうだ、スリだの盗人だの騒がしいあの市場で一時間以上放置されてて一つでも無くなってるか?」


「………」

「ふ~む?」

「つまり!」

「どういうことだってばよ?」


 スパーン!

「分かれよw!誰もこの御守りに価値を感じてないって事だよ!」


「なんだって~!?」


 スパーン!

「わざとらしいんだよw!」

「とにかく!いつまでもこの街に留まっていられない」

「ガリンの街にはグソク云々より目的があるだろう?」

「この街で既に10日以上。お前が遊んでる間に大体の準備を済ませておいた!」

「もうこの街に留まる理由はない、明日!さっさと旅立つからな!」


「そ、そんな~!」


「そんなー!じゃあねえよ!いつまでオママゴト続けるつもりなんだよ!」


「おでえかんさま!おねげえですだ!おらに時間を!」


「ならぬならぬ!」


「あと1週間!」


「1日!」


「5!」


「しつこい!3だ!3!これ以上はまけぬ、3日だ!」

「それまでにちゃんと商売たたんどけや!」


「お代官様もわるですのうw」


「もうその設定はいいって!」


 俺は無理やりちゅん助を説き伏せると強引に期限を設定し出発日を定めた。

 このままいつまでも引っ張っていては損失が大きくなる。商売なら見極め、引き際が肝心だろう?


「おでえかんさま~!どうか、おかんがえなおしを~!」


 もうその設定はいいって…

 とにかく3日。

 3日は譲らん!


 そう思って厳しくちゅん助に最後通告した俺だったがその期限を待たずして、この日の夜、事態は風雲急を告げたのだった…


 第三話 

 その4 ルノアとマノア

 終わり

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