スピンオフ その27 今や遅し
「きゃああ!いやあああ!たすけて~!」
ガチン!ボコン!バシビシ!ゲシッ!
「ぎゃああ!」
「調子に乗ってなに痴漢行為に及ぼうとしとる!」
「そんなの神はお許しになりませんよ!ちゅん助さん!」
「うぐぐぐ、わしはただ梨沙に現実の厳しさを…」
「ウソつけっポこのヘンタイ!」
「ウソつくなッピュ!チカン!」
「救いようがないみゃあ…」
「うごごごご…」
「さ、さておき!」
「A3!きちゃまはもはや一般人と変わらぬ身体能力と」
「感性、感覚しか持ち合わせてないお!」
「スコープ無しでファースガンとか!」
「神が許しても!わしは許さないんだお!」
「さあ~どーするかお?どーするかおw?」
「お、おのれ~C2覚えてなさいよ!?」
「さあ~スコープを取れお~」
「同志少女よ、筒を取れ~w」
「クツ!こんな身体じゃ…あのクソださスコープでも無いと…」
「とても当たらないわ…」
「ダサいとか言うなお!ザ・ハッブルはちょ~かっちょいいお!」
「浪漫だお!」
「他のは無いのッ!?」
「ありませ~んw(有るけど出さないおwww)」
「仕方ないわね!寄こしなさいよ!」
「あん?よこせだあ???」
「クッ!」
「使わせて下さいだお!?」
「おのれ~!」
「代わりに私の身体を使ってください!と言わされるのがエロゲのお約束だお!」
「言うかあ!ボケエ!」
「使うわよ!使えばいいんでしょ!」
「分かれば良いのだおwこのエロガキメス犬がッ!」
地面にスコープ置き~
「アンタほんと調子にのんじゃないわよ!?」
「おい!いぬ!」
「なにスコープを手で拾おうとしとるお?」
「いぬはいぬらしく!」
「お口でひろうんだおw」
ガッチーーーン!
「ぎゃあああ!」
「いい加減にしろって言ってんのッ!」
「全く…」
カチャカチャ!
梨沙は渋々ザ・ハッブルを手に取ると苦々しい表情でスコープにセットし始めた。
数十秒でセットすると美しい立射の姿勢で再びゼロイン標的に向き直ると引き金を引いた!
「ぽお!こんどは少しズレたけど当たったッポ!」
「!」
先程までど真ん中を捉え続けていたはずの神業とは違って至って普通の狙撃であったはずだが梨沙は標的に当たった映像をスコープを通じて見ていた。その表情が少し驚いた表情になった。
「あの~梨沙ちゃん?」
それから梨沙は無表情になったかと思うと、呼びかけたちゅん助には目もくれず他の誰より熱心にゼロイン調整を行い始めた。誰よりも正確に、念入りに、熱心にその作業が続いていた
スコープを取り外して放った射撃は神業でセンターを捉え続けていたが、今のスコープを通じた狙撃はなかなか良い腕ではあったが時折センターを外れる事があり皮肉なものだと感じられた。
それでも調整の度に梨沙の狙撃の精度は増して行く。
一言も喋らず、言葉を発せずして休憩も取らず熱心にゼロインする梨沙の振る舞いにメンバーが何人か声を掛けたが梨沙は無視して一切反応の示さなかった。
ちゅん助はバツの悪そうな顔をして梨沙を見つめていた。彼はきっと彼女の能力を奪った事で梨沙が酷く立腹して意地になって調整しているのだと感じていた…
「あのう~?」
「梨沙ちゃん?」
「おまえの能力は凄すぎてぇ~…あのままゲームに持ち込むとお~?」
「バランスブレイカーと言ってぇ~?ズルではないのにい~?」
「卑怯者チート扱いされてしまうのでえ~?」
「わ、わしはぁ?あえておまえためを思ってえ~?」
「心を鬼にしてえ~?」
「けっして嫉妬心からの行いでなくてえ~?」
ちゅん助がしどろもどろになって言い訳を続けるのだが梨沙は聞く耳を持ってない様で反応を示さなかったが…
「ちゅん助…いいえC2!」
「は、はいっ!なんでございましょうお!?」
遠目からでもちゅん助の小さい体に緊張が走るのが分かった。ただでさえ小さいのにさらに縮こまっている!
「………」
「これ…」
「はいだお…?」
「これ!すごく面白いわね!最高!」
「エッ!?」
てっきり怒鳴られるのでないかと固まっていたちゅん助に梨沙が意外な言葉発した。そのセリフは俺達でも意外に聞こえたのだ。
「ホントに狙って当たるわ!」
「もうこの時点で面白い!!!」
「発射の時ズレたと思った時には本当にそっちの方向にズレてる!」
「赤外線は目に見えないのに!まるで自分の射線が見えるかの様だわ!」
「自分の感覚だけで当てられた時は、正直バカにしてたけど…」
「感覚では点を点で重ねる様な射撃に対してこれは本当に射線!」
「線を送り込むような感覚!」
「気に入った!気に入ったわ!」
「このだっさいスコープも!使ってみれば気にならない!」
「いいえ!口径が大きいだけあってとても映像が明るいわ!」
「そうだお!そうなんだお!」
「わしはその感覚が知って欲しくて!」
ちゅん助が本当にそう思っていたかどうか?は非常に怪しいが、ここにファースガン信者がまた一人誕生してしまった様だった。
しかし、梨沙より少し前に俺達イズサンずは全員ハマっていたのだ!このファースガンの魅力に!沼に!
動かない標的より!早く本物の敵を倒したい!皆がウズウズしていた!
通常のBB弾サバゲーからファースガンを体験した4人に1人がドはまりすると言われているが、そんな割合で済むだろうか?少なくともイズサンずは全員が全員!なんと!ゼロインの時点でファースガン沼にハマってしまっていたのだ!
「でも梨沙ちゃん能力封じられて怒ってたのではないかお…?」
「はあ?ちゅん助アンタバカぁ?」
「サバイバルゲームってのは、例えごっこでも真剣に戦闘を真似た行為でしょ!」
「戦いってのはね、いつでも万全な状態で臨めるなんて限らないわ!」
「いいえ!不自由でままならない事の方が多いのよ!」
「怪我した、病気した、精霊石の矢が無くなった」
「あらゆる困難な状況が常に生まれてくるわ」
「その度に文句言ったり泣き喚いても敵は待ってくれない」
「そんなのお構いなしに攻めてくんのよ!」
「だからいつだって有るものだけで状況を打開しなきゃいけないのッ!」
「そうだッポ!」
「そうだッピュ!」
「例え能力が封じられようが私は戦い抜いて見せる!」
「それにさっきので私、少し気付いた」
「私の狙撃は感覚と能力に頼り切っていた」
「それで当たるから今まで何の疑問も持ってなかったけど」
「本当に当てるって事はもっと理論的なモノだって!」
「今の状態はそれを学ぶのにちょうどいいわ!」
ちゅん助の目が羨望と尊敬の色を持って輝いた気がした。それは皆も、そしてもちろんこの俺の視線も同じ色を含んでいた。我がパーティー…チームの狙撃手はやはり頼りになると。
気が付けば俺達以外の参加者も続々と集まっており、その全てのサバゲーマーのスコープを覗く目が、今や遅しと輝いている。
ゲーム開始!開戦直前!




