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更新停止中 イズちゅん  作者: ちゅん助の!
第一章 サーキット行くつもりがどこ行ってんの???
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第一話 その11 車輪よ!

第一話 その11 車輪よ!


「さあ、あれがアリセイの町じゃよ」


「翼よ!あれがパリセイの灯だお!」


「飛行機じゃねーだろ!」


「ヒコーキ?なんじゃそれは?」


「ああいえ、こいつがおかしなことを言うもので…」


「車輪よ!あれがパリセイの灯だ!お」


「アリセイだって、勝手に町の名前を変えるなよ!失礼だろ!」


「スピリット おぶ ちゅん と イズ号到着w!」


「だから人様の馬車に勝手に名前を付けるなって!」


「ほっほっほー」


 俺達のやり取りを聞いてジュセルさんが本当に愉快そうな笑い声をあげる。


「本当に愉快な奴等じゃて、若いもんはええのう」


「じいちゃん実の所、わしらそんな若くないんだわw」


「はて?いろいろ不思議な事を言うもんじゃわい」

「まあいいわい、教会は町の通りを真っすぐ進んだ突き当りにある」

「陽が完全に暮れないうちに助けを求めるんじゃな」


「あの、本当に…本当に助かりました」

「何とお礼を言っていいのか言葉も見つかりません」


「じいちゃんは命の恩人なんだお」

「この借りは必ず返すお!」


「大げさじゃよ、ほんの少しついでに馬車に乗せただけじゃ」

「おかげでめったにない楽しい話も聞けたしな?」


「御恩は一生忘れません」


「ははは、また大げさな」

「まあお若いの、イズサンといったな?」

「ガリンの街に行くのは構わんが」

「もう少し旅に慣れてから行動するのをお勧めするぞ」


「はい身に染みております、ご助言に従いたいと思ってます」


「じゃあの」


「大変お世話になりました!」


「じいちゃん!わしを撫でたくなったらまた言うんだお!」

「ほんとは美少女にしか撫でさせないけど、じいちゃんは特別だお!」


「ほっほーまたそのうちにな」


 最後の最後まで馴れ馴れしい態度のちゅん助に俺は少し腹が立ったが、ジュセルさんは全く気にしていない様子で去っていったのが救いであった。


 アリセイは規模的に千人程度だろうか?小さな町であったが寂れた感じは全くせず、むしろ夕暮れ時だというのに活気があるように感じた。


 あのグソクという蟲の経済効果がこの町まで波及しているのだろうか?


 教会へと続く道の脇では至る所で賑やかな人の集いが見られた。

 これほど活況なのに俺達が目覚めた場所近くには人通りが無かった事を考えると、ここアリセイの町までがグソク経済効果圏内なのだろうか。


 ジュセルさんの故郷の村までは歩きで1週間、馬車でも3、4日はかかると言っていた、そこに影響が及んでいないらしい事を考えると、交通手段は馬車が主で貧弱なためかもしれなかった。


「しかしジュセルさん、若いの若いのって俺」

「そんなに未熟に見えたのかな?」


「は?」


 俺の問いかけに頭上のちゅん助が不思議そうに返してきた。


「いや、だからさ俺達、ってお前はその姿だから別にして…」

「俺は別に若くはないだろ?」


 ピョン!


 頭上からちゅん助が飛び降りて、下から俺を怪訝そうな表情でじっと見つめている。


「おまえ、それマジで言ってんのかお?」


「マジも何も俺ら46だぜ46!」


「………」


「おっさんだろ?」


「まだ気付いてないんか?」


「気付くって何が?」


「まあええわ」


 ちゅん助はそれ以上は何も言わずに再び俺の頭上に陣取ると、ポカッと俺の頭を叩いた。


「イテッ!」


「まったく、おまえばっかSSR引きよってからに!」

「わしはこんなんだというのに!」

「わしもSSRあまぐもちゃん引きたかったお~!」


「ゲームかんけーねーだろゲーム!」


「美少女の恨みは恐ろしいお…」


「だとしても俺は悪くない件」


「まあええわ!顔でも洗った時にその顔をしっかり見てクレメンス」


「なんだそりゃ、変なシールでもはっつけただろ!」


「ふん!」


 他愛もない会話をしながら歩いていたが教会までは結構遠く20分程かかってようやく到着した。


 すっかり日が暮れそうであったが、エントランスらしき場所で呼びかけると若い修道女見習いの様な女性が応対をしてくれた。


 ジュセルさんの時と同じように、いきなりちゅん助が飛び出して事情を説明した。

 不思議な生き物に最初は女性も少し戸惑っていたが、例のふぁふぁーん!(←泣いている音)と足元でスリスリと体を擦り付けのセットで甘えるとすぐに柔らかな表情になり、自らちゅん助を抱きかかえると気持ちよさそうに撫でながら


「それはそれはお困りでしたね、我が教会は旅の方の味方です、どうぞこちらへ」


と教会内に案内してくれた。


「フフン!イズサンわしの可愛らしさ、恐れ入ったかお?」


 女性の胸に抱かれ撫でられながらデレッデレの表情で、どうだ!と言わんばかりにこちらを見て来る。


「あほ!教会とその神様のご厚意だろ!」

「お前が可愛いとか関係ないわ!逆に失礼だぞ!」


「ファーw」

「イズサンの負け惜しみが心地よいおw!」

「わしの毛並みは!猫の喉毛の10倍柔らかくて気持ちがいいんだお?」


「お前、3倍とか言ってなかったか?」


「おろかものめ!」

「生き物の毛のツヤは日々変化してるんだお!」


「ああ、そうかいw!」

「まったく調子のいい!すいません、変な奴で…」


 俺は女性に頭を下げた。


「ふふふ、愉快な方々ですね」

「そのお元気なら体調は問題なさそうで何よりです」

「その分、お腹が空かれたのでは?」


 女性の言う通りだった。

 ジュセルさんから食料を分けてもらってはいたが目覚めた時からそれ以外は小川の水しか口にしていない。


 不安な状態から何とかなりそうな安堵感に包まれた事もあって急激に空腹が意識された。


「お恥ずかしながら…」


「腹ペコなんだお!」


「ふふふ、でしょうね」


 俺達は食堂らしき場所に通された後、質素ではあるが十分の量の食事を与えられ寝床まで用意してもらった。


「あの本当に恐縮です」


「よろしいのですよ、神はいつでも困った方の味方です」


「人を助けるのも人を殺すのも全て人だお!」

「神様なんて…うわっモゴモゴゴ!」


「いいからお前は黙ってろ!」

「助けてもらって失礼な事言いそうになるんじゃない!」


 神様が居るか居ないか、それに対しては俺も懐疑的ではあったが他人の神様を、ましてや助けてもらった方々の神を否定するのは…

あまりに無礼というもの。

 俺は慌ててちゅん助の口を塞いだ。


「は?わしは信心深いお!」

「八十八か所だって20か所ぐらい御朱印廻っとるお!」


「微妙な数を言うんじゃないよ…」

「どうせスタンプラリーかなんかのノリで始めてすぐ飽きたんだろうが!」


「は!?スタンプラリーですがなにか?」


「お前…なんちゅー罰当たりな…」


「なに言っとるんだお!お賽銭なら1円、5円で済ます奴も居ろうが!」

「御朱印なら押す側は30秒かそこらで読めへん様な字さらさらっと書いて!」

「一気に300円ゲットや!時給換算10万円やぞ!?」


「罰当たりな上、どういう計算しとるんだ!?お前は!」


「わしが言いたいんは、神仏は集金システムとして優れとるちゅーことだお!」


「だから思ってもそういう事は口に出すんじゃねーよ!まったく!」


 ちゅん助の図々しい上に失礼な物言いに女性が怒りだすのではないかと思って俺は無礼すぎる奴でほんとに申し訳ありません、と言って彼女の方を見たが怒っている様子はなく、俺達のやり取りを微笑ましく見ているのを見てホッとした。


「まあいきなり八十八は多すぎたので三十三に変更するおw」


「勝手にしろ!」


 ちゅん助のアホな物言いにいつまでも付き合ってはいられない。

 

 今日の安心はなんとか確保したが明日からもこんなに事が上手く運ぶ確証はない、早めに手を打っておかないと…


「そのー明日からの事なんですが…」


 金がない、恐らくそんな事は彼女も俺達のなりを見て重々承知の事と思うが職まで探してくれ、と言うのはどうも心苦しい。


「ああ、それでしたら、先程ジュセルさんから伺ってますよ」


「ええ?ジュセルさんが?」


「はい、どうやらガリンでの狩りに興味があるようだが旅人としても冒険者としてもどこか危なっかしいので」

「彼らさえ良ければとりあえず町の警備隊で見習いをさせてやってもらえんか?そう仰ってました」


「なんという親切な!…」


「じいちゃん聖人すぎるお!ジーザス!聖徳太子!ナポレオン!」


「最後のは違うんじゃねーか…」


「警備隊は教会の管轄なのです」

「よろしければ明日にでも隊長様にお迎えに来てくれないかお伝えしておきますが」


「願ってもない!是非とも!」

「あとお迎えだなんてとんでもない!こちらから参上いたします!」


「ほほう!?イズサン良き心がけじゃ!」

「さっきのグソクのあまりの弱さに!」

「俺にもできると強気になっとるな!?」


「余計な事言うんじゃねーよ!」

「ジュセルさんに借りを返すためにも働かないかんだろうが!」


「うむ、良き心がけじゃ!!」


「謎の上から目線やめろや!」


「うふふ、お聞きした通り面白い方々ですね」

「ジュセルさんも愉快な奴等じゃが…」

「調子に乗らんように面倒見てやってくれと」


「え?」


「そうやぞ!イズサン!いい気になっとったらあかんやで!」


「お前の事だよ!俺がいつ調子に乗った!?」


「というわけで修道女のおねーさん!」

「イズサンが調子乗らんようにわしがしっかり監視しとくから!」

「隊長さんの件はよろしく頼むお!」


「逆だろ!」


「うふふ。はい、しっかりお伝えしておきますね」


「場所はどちらへ行けば?」


「それには及びません」

「実の所、グソク騒動で出稼ぎに行く方が増えていてアリセイの警備隊の方々は少々手薄なのです」

「ですからあなた方みたいな失礼ながら駆け出しの方であっても、その人手が足りていないので…」


「なるほど」


「需要と供給が一致したなお!安心せい!」

「日の出る国、壱の剣士イズサンがグソクなど一刀両断にしてくれるわ!」


「俺かよ!てか剣なんて握った事もねーわ!」


「ふふ、大丈夫です」

「隊長は長年この町を守ってくださるしっかりされた方ですし」

「この辺には危険な魔物は少ないです!」


「イズサンの秘剣!天昇る龍の閃きで一刀の元にい~!」


「ねーわ!」

「あとどっかで聞いた様な必殺技と俺の剣士設定やめろや!」

「恥かくだろ!」


「超集中!火の息吹き!参の構え!家計火の車!」


「貧相な秘剣だな、オイ」


「うふふ、お話通りの方々ですね」

「それでは今日はそろそろお休み頂いて、明日隊長さんにお会いして頂く」

「それでよろしいでしょうか?」


「はい!是非とも」


「よきに計らって欲しいお!」


「無礼な上から目線の件」


 失礼なちゅん助の態度に最後まで修道女は嫌な顔一つせず逆に微笑みを浮かべながら


「では」


と言って戻っていった。


 彼女達の信仰する神様が素晴らしいのだろう、全くもって寛容なる神に俺は感謝した。


「ふう」


「ふうだお」


 俺達はドサリと疲れた身体を寝床に投げ出しながら深く息を吐いた。まったくとてつもない日だった。

 今日起こった出来事が未だに現実の事とは信じられない。


 思い返してみると今日何とかなったのは本当に運が良かっただけだ。


目覚めた場所でちゅん助と合流できなかったら?

道のどちらかへ進む、そう決定できずに林の中で夜を明かしていたら…

道の右側に進んでしまっていたら…

ジュセルさんに会えず、いや会ったとしても馬車に乗せてもらえなかったら…


ほんの少しの運命の歯車のズレで大変な事になっていたかもしれない。


 最悪命を落とす危険性もあった、そう考えると今でも身震いが起きる。何といってもちゅん助と合流できたのはありがたかった。


 振り回されて腹が立ったこともあったが、奴のおかげで色々な判断も出来た訳だし、何よりその馴れ馴れしいまでのコミュ力のおかげで今こうして腹を満たして安全な寝床にありつけているのだ。

それは認め感謝せざるを得ない。


 お互い、友達が多い方でなく、彼女も居ないのは一緒のはずなのに奴は妙に場慣れしてる節がある。

 同じオタクでも彼は何回も言葉も通じない場所の海外旅行に行ってるはずだ。

 その経験の差がこういう世界で立ち回りの圧倒的な差として表れてしまったのか…少々悔しい気もしたが、今回ばかりは彼のおかげで助かったと言わざるを得なかった。


「ちゅん助…」


「zzzzzzz」


 今日は助かった、ありがとう、そう伝えたかったが、既に眠りについている様だった。


 そう言えばいつもサーキットでのホテルでも体力と健康状態に不安のある彼は遅くまで起きている俺を尻目に早々に寝床に就いてしまうのだった。

そんなところはこんな小さい体になっても同じらしい。


 ホテルではよく


「お前のイビキと歯軋りで眠れなかったし!」

「何回も起こされてしまったんだお!!!」

「謝罪と賠償を要求するお!」


と怒られたものだ。

今日くらいは彼の眠りを妨げずにしておいてやろう。


 信じられない出来事に興奮している身体と心で上手く眠りにつけるか不安であったが、無用な心配だった。

 緊張から解き放たれた身体は想像以上に疲労を溜めておりその日俺は泥に沈んだように眠ったのであった。


 第一話

 終わり

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