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更新停止中 イズちゅん  作者: ちゅん助の!
第一章 サーキット行くつもりがどこ行ってんの???
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第一話  その5 顔

第一話 その5 顔


 どれくらい時が経ったのだろう?


 俺は今目を瞑っている、それだけは分かる、今、分かるのはそれだけだ。

 次に分かったのは閉じたままの目でも視界は真っ暗ではなく強い光が差し込んで網膜に白、いや赤に近い世界を作り出している事だった。


(明るい…)


 この光の正体は手術台のいくつもの丸いライトが円状に連なったドラマでしか見た事のないあれだろうか?

 俺は事故を起こしたはずだ、どうなったのだろう…身体は…そもそも生きているのだろうか?


(右手を動かしてみるか…)

(……?)


 予想外に痛みもなくスムーズに動き、右手の感覚が戻る。


(左手…右脚…左…)

「!?」


 四肢は怪我をしている様子は感じられなかった、指の先まで神経が繋がり自由に動かせる。


 感覚が戻っていた。


(どういうことだ…幸運にしては…)


 身体の感覚が戻ったあと次に戻ってきたのは温感だった。

 俺を照らしているであろうまばゆいであろう光は明らかに熱を持っていた。手術台の照明ならこれほど暖かい熱を持っているだろうか?


(目は、目は開くの…か…?)


 俺は恐る恐る少しだけ目を開いた、瞼も動く。


「ま、ぶしい…」


 確かに自分の発した声が聞こえた、喉も耳も無事らしい。

 眩しい光にしばらく目を開ける事は出来なかったが慣れるにつれだんだんと視界が作られていく。


「太陽…!?」


 俺を照らしていた光は高く昇った太陽だった。


「うーん?ここは?」


 恐る恐る身を起こして辺りを見回すと俺がいたのは高速道路でなく木漏れ日が降り注ぐ深い森の中の様であった。どうやら太陽が高い位置に昇った事で俺を照らしその事が目覚めを促したらしかった。


「どこだ、ここ?」


 シーン…そんな音にならない音が聞こえてきそうな森の中で人や生き物の気配がしない。

 俺以外には誰も居ないようだった。俺、以外?俺以外?そうだ!


「ちゅん助!ちゅん助は!」


 目を凝らして辺りを見回すが静けさが深まるばかりでやはり誰も、何も居そうにない。


「ちゅんすけー!おーい!ちゅーんすけー!」


 返事をしてくれ!自分がどこにいるのか?そんな疑問よりまずはちゅん助の無事を確認したかった。


 なんとか助かっていてくれ、頼む応えてくれ!


「おーい!ちゅんすけー!!!」


 声を大にして叫ぶが静けさの中にあっという間に溶け込むだけで聞こえるのは虫の鳴き声か鳥のさえずりのような音のみだった。


 目覚めた場所から動いて良いのかどうか分からなかったがとにかく今自分の置かれている状況だけでもなんとか確認したい、そんな思いが俺の歩を進めた。


(いったいどこなんだ、ここは?見慣れない植物とか日本にこんな場所あるのか?)


 そんな思いにとらわれながらも方向感なく歩を進めると水が流れる音がする。その水の音に導かれるようにさらに進むと樹々を抜けた先に小川が現れた。緊張感と自分の置かれた状況が理解できない事の不安からか気付くと喉が異常に乾いていた。小川の水は透き通って十分飲用になりそうだ。手で掬って渇きを癒した。


 喉の渇きが収まると今度は急に自分の置かれた状況にさらに不安になる。人の気配がしない、それが不安の濃さを深めていた。さらに目覚めてからかなりの距離を歩いた気がするが人工物らしきものが全く見当たらない。例えこの場所が山岳地帯の様な場所であったとしても空をぐるっと見渡せば高圧電線の一つも視界に入るはずだ。ここにはそれすらなく先程から航空機らしきものすら見当たらない。


 誰にもこの状況を尋ねる事が出来ない、たったそれだけの事実がこれほど不安を駆り立てるとは…


(どうすれば…一体どうすれば…)


 自分の置かれた状況に途方に暮れ刻一刻と心細くなってきた。


(誰か!誰かいないのか!)


 焦りと不安で胸が苦しくなる。思わず涙がこぼれそうになるその時だった。


「ようやく起きたかお?」


 不意に背後で声がした。声の方向へ振り返るがそこにはやはり誰もいない。


「どこ見とるんだお?ここだお!ここ!」


 声の主は少し怒ったような感じでさらに話しかけて来た。少し鼻にかかったようなどことなくコミカルな愛嬌を感じさせる女性の声に聞こえた。思い出せないがどことなく聞き覚えがあるような?


(下から?)


 視線を下に向けた。


「おわっ!?」


 声の主を探し当てるとその姿に思わず一歩下がってしまった。その姿は如何にも形容しがたい。


「顔!?」

(顔が喋ってる…)


 顔が喋るのは当たり前なのだがその形状は巨大なクリームパンの様な形をしており色は薄黄色のメロンパン色にも見えた。

 頭頂部には異様に長い毛が三本生えていた。パンというよりはクッション、そんな風にも見えた。


 その顔がこちらをじっと見つめているのだ。ただ恐怖は感じない。その不思議な物体?生き物?は危険な風貌とは程遠くひたすらコミカルな感じがした。


「勝手に動いたらあかんやで!」


挿絵(By みてみん)

 メロンパン色クリームパンがまた喋った。よく見ると体…というにはあまりに小さいが顔部分の3分の1程度の体らしきものがパタパタと動いている。


 第一話 

 その5 顔

 終わり

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