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更新停止中 イズちゅん  作者: ちゅん助の!
第八章 俺が必死こいて試験受けてるのに、ちゅん助…お前、なにやってんの…?
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第八話 その3 怪しい視線

第八話 その3 怪しい視線


「ピュ!?」

「ポっ!?」


 得意気に大喜びしていたコンビが一気に縮み上がる、アスリが怒ると彼らも怖いらしかった…


 しかし今、目の前で流れた光景は実は本日でもう三日目なのだ。


 糞尿まみれ土下座事件の翌日、俺達が朝食を摂っていると彼女達がふらりと現れて、食事くらいは一緒に摂ってあげる、そう言われて舞い上がったちゅん助は調子に乗って毎日毎日朝昼晩飽きもしないでホラ話を吹聴しまくりこのザマなのだ…


 食事くらいは一緒に、という文言とジッと俺達を注意深く観察するようなアスリの視線は、どう見ても好意的なものではなく、とても仲間に入ってもらえる!などとは思えず、言葉通りパーティ加入、もしくは指導役を引き受けるかどうかを検討してくれているだけ、という事の様だった。


 そんな事はアスリの態度を見れば嫌でも想像が付く、言ってみれば俺達はアスリに厳しい面接を行って貰っている最中とも考えられなくはない。

 こういう時は出来るだけ行儀よく、そして印象良くするのが普通の人間の対応だと思うのだが、先の様に毎回毎回アスリを怒らせるちゅん助の神経は理解できない…

 

 そう思っていたのだが…


 2日目にその事をちゅん助に諭すと、いつも通りあのいやらしい目つきになって彼はこう言ったのだった…


「イズサン!」

「だから貴様は二流だと言うのだおw」

「あの精霊コンビのわしの話への喰い付きようを見たおw?」

「将を射んとする者はまず馬を射よ!」

「美少女をハメんとすれば!」

「まず精霊を嵌めよw」

「だおwwwおっっおっっお!こりゃ堪らんw!」


 なるほど…


 無神経、無計画に見える彼のあの行動の裏に、そのような恐ろしい…いや…イヤらしい欲望まみれの計略がめぐらされていたとは…

とその時は思っていた。


 が!


 今日までの行動を見ていると…ツッコミ役の俺の面倒見があまりよくなく、遊び相手に飢えていたちゅん助には絶好の相手が一気に二人も現れたという事で、つまりはちゅん助は遊びたいだけなのであった…

 

 結果的にそれがちゅん助の、下卑たる企みの成功に至れば!理由はどうあれ心強い仲間を得られるのだが、はて…


 それよりも気になるのが面接、いやアスリが仲間になってくれるのかどうか?だが

 その選考基準の重心が、ひょっとしたら問題児のちゅん助より俺の方に有るような気がして落ち着かないのだ。


 勘違い無いように言っておくと、別にこれは自意識過剰で言っているのではなく、アスリは言葉には出さないが、俺を見る視線がやけに厳しい様に感じるのだ…

 ちゅん助に厳しいのは奴が変態であるからであって、それとは違う、試されている様な?疑われている様な…?値踏みされてるような?


 ともかくアスリの思案中の懸念事項は俺の方に有るような気がしてならなかった。

 おいそれと聞くのも藪蛇になりそうで黙っているが、悪い事をしたわけでもないのに、やや気まずい状態で朝食を摂っている…


 そんな俺達のテーブルの方に隠れて熱い視線を向ける人物があった。

 その人物の視線は主にアスリを捉えているようだった。





(なんて美しい子だ!)

(やはり地元の町を出て、大きな街に出て来た甲斐があった!)

(大混乱があって街は大変な状態になっていてマズい時に来てしまったと思ってたけど)

(逆に運が良い!)

(故郷の町ではあれ程の女性は見た事がない!)

(美しい!)

(なんて美しい!)

(あんなに強気な顔立ちなのに!)

(荒々しさは感じさせず、時折見せる微笑みや憂いの表情が絶妙なエッセンス!)

(なにより!)

(あの美しさの中にはうっすらと狂気すら垣間見える!)

(女神、悪魔、空想上の存在にすぎない彼らが地上にあるとすれば!)

(ひょっとしてあんな子なのだろうか!)

(ああ!)

(思わず筆が!)

(筆が進んでしまう!)

(正式にモデルになってもらえたらなんて素晴らしい事だろうか…)

(でも会話から洩れ伝えてくる内容や態度を見てると)

(とても引き受けてくれるなんて思えない…残念だ!)

(ああ!筆が進む!)

(でも、僕の絵では…)

(彼女の様な真の美しさ)

(その真実を…ありのままに伝える力が…)

(僕の筆にあれば…口惜しい…)


 熱烈なる視線の主は隠れるようにして画用紙に筆を走らせている様だった。その熱い視線にたった一人気付いた者がいた。


「おにいさん、さっきからコソコソとなに熱心に描いているのかお?」


「いやあ、あのテーブルに居る少女のあまりの美しさに僕の筆が勝手に動いてしまってね!」


「おほー上手いではないか!この世界にこの技法を使える者が存在するとは!」


「いやいや、僕の絵なんか大したことないよ」

「全然上手くならなくて、上手く見えるとしたらあの子があまりに…」

「って!えええ!?うわああああ!」


 筆を走らせていた男は自分の膝上に突然に現れた黄色い物体の後頭部に気付き驚きの声を上げる!


「なななな!…いったいどっから!いつの間に!?」


「どうしたのかお?続きは描かんのかお?これ、わしの嫁を描いているんだお?」


「よ、嫁え!?失礼しましたあああ!悪気は無かったんですウウウウ!ごめんなさああああい!」


「あ!おい!わしは別にそんなんじゃあ!……行ってしまったお…うん?」


 画家と思われた筆を走らせていた青年はその画用紙を残し、慌てふためく様に店を出て行ってしまった。


「ふむ、まだラフ段階の様だが、これは!これは凄い!すごいおwとんだ拾い物をしたかもしれんお!」

「なるほどのうwなるほどのうw」


 画用紙を仕舞いながらちゅん助の目が妖しく光りいやらしく気持ちの悪い三日月の様な形になった。


「おい!ちゅん助!どこ行ってたんだ!このテーブルだけでも鬱陶しいのに、他のテーブルにちょっかい掛けに行くんじゃないぞ!」


「は?イズサン!わしは周囲の警戒をゴンにしとっただけやぞ!ゴン!」

「おまえだったのか!?周囲の安全を守ってくれていたのは!」


「キツネの話はやめろ!あと感動のシーンをつまんねえギャグにすんじゃないよ!」


 いつもの俺達のやり取りを眺めていたアスリだったが、その様子を見て判断したらしく立ち上がって言った。


「食事はみんな終わった様ね?イズサン!その様子ならもう全快、そう判断しても良いのかしら?」


「わしはまだまだ体中が痛いお!やさしく撫でて癒してほしいお!場所によっては舐めても…」


 グシャ!


 潰れた黄色いクッションは、ほかっておいて、ここは真面目に答えんと不味い事になる場面だ…


「え?ああ、グソク襲撃では疲労は溜まりまくって死にそうだったけどお陰様で致命傷は免れたから、身体は十分動くよ?」


「ふ~ん?」


 アスリは確かめるように俺の全身を一瞥すると潰れたクッションを俺の方に投げつけ言った。


「じゃあ、行くわよ」


「行くって何処へ?」


「着いてこれば良いのよ、剣は忘れないで」


 そう言って足早に彼女は店を出て行く。その背中を慌てて剣を携え俺は追って行った。


(どこへ行くんだ!?剣?何かを退治するのか?グソクの危機は去ったはずでは…)


 アスリの言動を不思議に思いながらも彼女の後ろを着いて行く。ようやく彼女が立ち止まったのは、いつぞやの見張り小屋の旗を撃ち抜く衝撃的な腕前を見せてもらった街の郊外だった。


「街中では道場や修練場でもない限り、非常時以外は剣を抜くの、ご法度だからね」


 振り返りながらアスリはそう言った。


(剣を抜く?が彼女は剣なんて持ってない様に見えるが…)


 彼女が身に付けている物はあの弓に展開する竪琴くらいなのだ。まさかアレは剣にもなるとか…そんなわけないよな?


「ご主人サマ~適当な棒っ切れもってきたっぴゅう~!」


 見るとウィンドミルが1m弱の2㎝ほどの太さの木の枝を持ってアスリの方に飛んで来た。


「ありがとうウィンディ、ちょうどいいじゃない」

「ぴゅう!」


 アスリは枝を受け取ると慣れた手つきで剣に見立てた様にヒュンヒュンと数回振ると、その枝を俺に差し向けて言った。


「さあ、イズサン試験よ!」


 第八話 

 その3 怪しい視線

 終わり

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