第八話 その2 お子様ちゅん助
第八話 その2 お子様ちゅん助
俺は最初のうちは、ちゅん助の嘘の話の否定に躍起になっていたのだが、何を言っても無駄なので、今は冷ややかな目で静観しているのだった。
もう一人呆れた視線で今なおテーブルの上で繰り広げられている小芝居に冷ややかな目を見せる人物があった。アスリであった。
アスリもちゅん助の嘘を半日ほど否定していたが、俺と同じく何を言っても無駄!と早々に気付き俺と対応を同じくしている。
だが彼女の視線はちゅん助に対しては冷ややかであったが、その話に熱中して狂喜乱舞する炎風コンビに対しては時折であったが
「ふふ…」
といった感じで優しい眼差しを見せる事があり、普段は強気で厳しい表情をしているのに、時折だけ見せるそんな彼女の美しくも柔らかい表情を見ると、なるほどちゅん助が夢中になるわけだ!と認識させられるのだった。
しかし!
恐るべきは…このちゅん助と言う男…炎風コンビはその見た目は幼稚園から大きく見積もっても、小学校低学年といった姿であり、その恐るべき能力や実力は置いておいて、話している内容から精神的には幼いのは間違いなさそうだった。
そんなコンビに対して、この男は同レベルかそれ以下で、ワイワイ!ワイワイ!と飽きもせず戯れているのだ…
(中身46歳のおっさんが…)
同じこどおじ独身貴族の俺がちゅん助の事をとやかく言えた義理ではないのだが、そんな俺から見てもちゅん助の精神年齢の低さは凄まじかった。
前の世界でこんなエピソードがある…実はちゅん助には弟が居るのだが、その弟さんは離婚、再婚し二人の女性の間に計三人の娘が居るのだが
「なんであんなクソガキが二回も結婚出来て!キモヲタのこのわしが結婚出来んのだお!」
と自分で答えを言ってしまっている様な恨み言を言っていたのだが、先の奥さんと弟さんとの間の二人の娘、つまりはちゅん助の姪にあたる姉妹がちゅん助家を訪れた際、マルオレーシング、通称マルレーなる携帯ゲーム機のレースゲームでこの二人をもてなしたらしいのだが、小学生相手に本気を出して、母や姉に、伯父さんなんだから手加減してあげなさい!子供相手にやり過ぎよ!という忠告、警告を一切聞かずしてメタメタにやっつけてしまい得意気になっていたというのだ!
そしてこの話には続きがある。
ちゅん助に散々にやり込められた姉妹はゲームの練習を行い、翌年リベンジマッチを挑んできたのだ。小学生相手に負けるはずないと高を括っていたちゅん助は姉妹のコンビネーションに手も足も出ず惨敗を喫する事となった…
「くやしいお!くやしいお!」
惨敗後、ちゅん助はそう言って泣きながら俺の家に駆けこんで来て、俺はとばっちりを受ける形でマルレーの特訓に延々付き合わされる羽目になったのだった。
「これだけ上達すれば!あのクソ姉妹!次はボコボコにしたるおwww」
と満面の笑みで帰って行った彼の顔を覚えている…
だが!
この低レベルで幼稚すぎる争いは翌年に突然の終戦を迎える事となるのだ…
準備万端!
リベンジのリベンジを!と手ぐすね引いて待ち構えていたちゅん助なのであったが
「去年はひきょーなコンビ走法にやられたが!今年はそうはいかんおw!」
「いざ尋常に勝負だおおおおおお!」
「え?オジサンまだゲームなんてやってるの?」
「私たち勉強で忙しいんだけど?」
「オジサン何歳だった?40軽く超えてるよね?」
「ゲームばっかやってるから結婚も出来ずに…」
「可哀想だけど少しは父さんを見習ったら?」
「ッ!!!???」
「ふぁふぁー(以下略)」
という屈辱的かつ惨めすぎる結末を迎えていたのであった…
そして俺の家にやって来ては
「ふぁふぁーん!(←リアルなおっさんでも泣いている音)くやしいおくやしいお!」
「物事には!言って良い事と悪い事があるんだお~!親戚だからって許されないお~!」
「ふぁふぁーん!(←泣いている音)くやしいおくやしいお!」
と泣きじゃくったのだった。
ちなみにこの時のちゅん助の怒りと悲しみを鎮めるためには、ブロンコビリーの特選ステーキとあみやき亭のヒレ肉五人前をおごってやって、ようやく治まったのだった…
そう!
このちゅん助という男は!
恐ろしく!恐ろしく…精神年齢が低いのだ!
際立っているのだ!
同じこどおじの俺から見ても彼の幼稚さは異常なまでに際立っているのだ!
そんな過去の事を思い出している間にもテーブル上ではちゅん助の独演会が続いており、いよいよ最高潮に達している様だった…
「ぐわああああやられたあああああ!」
「時計塔広場に核蟲の断末魔の絶叫が響き渡る!」
「わしに倒され、炎の中で奴はこう語りかけて来たお!」
「真実の勇者ちゅん助よ…よくぞ私、この白き魔王を倒した!」
「ふ!このちゅん助!降りかかる火の粉を払ったまでだお!」
「おおウソだぴゅうううううううううううwww!」
「とどめはご主人サマとワタシとで刺したぴゅう!」
「さいしょからさいごまで見事なほどの作り話だッポオオwww!」
「ほう?」
「どこぞのインチキ精霊は人の手柄を盗むというかお!」
「なんたる手癖の悪い!」
「きっとどこぞのご主人サマのお躾が悪いお!お躾がw!」
「ご主人サマとやらのツラが見たいお~w」
そう言うとちゅん助はアスリの方をチラチラと盗み見た…小学生が好きな子に意地悪…そういうレベルなのだ…
ちゅん助はアスリの気を引きたくてしょうがないのだ!当のアスリはと言うと若干イラッ!と表情を変えたが我関せず、努めて戦略的放置を決めている様だった。
「てがらぬすんでるのはちゅんすけの方だっポ!」
「そうだぴゅう!なんちゅうわるい奴だぴゅう!」
「は?」
「わしが盗んだ証拠がどこにありますかあ?」
「なに!?」
「証拠を出せない!?」
「なのに人を盗人扱いしたお!これは恐ろしいまでの人権侵害だお!」
「それを今まさにやってるのがオマエだっぽう!w」
「だいたいなにがじんけんぴゅう!wトリにじんけんはないっぴゅう!w」
「は?」
「わしは鳥じゃないお!あんな寝袋の中身の素材と一緒にするなお!」
「さておき!」
「魔王は言ったお!」
「ふん!流石だな勇者ちゅん助よ!だが!」
「お前の様な光がある限り闇もまたある……」
「私には見えるぞ!」
「何百年!何千年とその先、再び何者かが闇から現れよう……」
「だがその時はお前はとうに朽ち果て生きてはいまい」
「わははは………っ!ぐふっ!ぐふふっ!ぐふふらいとたいぷ…」
「ぴゅ!?どうなるッピュ!?」
「ポ!?ヤバイ!やばいっポウ!」
(おい!作り話だろうが!そういうとこやぞ!お前らのそういうトコがこのヘンテコをますます調子づかせる羽目に…)
「魔王の亡骸をじっと睨みつけるわし」
「その背中に女性が近付いて優しく言葉をかけたのだったお!」
「大丈夫よ、勇者ちゅん助」
「貴方の意志を引き継ぐ者は既に私の胎内に」
「きっとその子孫もこの世界を代々守り継ぐことでしょう!」
「そしてその女性と勇者ちゅん助はたくさんの子をもうけ」
「その血を脈々と受け継いだ子孫たちがこの世界を永遠に守り抜き!」
「ちゅん助とその妻は余生を幸せに過ごしたのであった!」
「これが!」
「この世界に語り継がれる、勇者ちゅん助の伝説だお!w」
「うそっぴゅっぴゅうwうそっぴゅうwいまオマエはひとりみだっぴゅうw」
「うそぽっぽうw!うそぽっぽw!トリさんはけっこんできないっぽw!ちゅんすけではむりだっぽw!」
「わしは鳥じゃないお!あんな3歩歩いたら忘れる奴等といっしょにするなお!」
「あと!無理とか!それは言ってはならない約束だお!」
「じじつを言っただけだっぽ!」
「そうぴゅ!」
「はああああ!!!?するもん!わし結婚するもん!」
「勇者ちゅん助の子を孕みしその女性!その名はアス…」
ガチコーーーーーーーン!
「ぎゃあああああああああああ!!!!!????」
遂にアスリの鉄槌がちゅん助の脳天に炸裂した!
黙認、静観していた彼女だったがちゅん助のホラ話が尾びれ背びれがついて遂には魚が変わり、とうとう魚が鯨に変わった時に彼女の怒りの限界水位を超えた様だった。
「何から何まででたらめばっか言ってんじゃあないわよ!」
「まったく!どうやったらそんな嘘が次から次へと出てくるのかしら!?」
ギュウウウウウウウウウウウウ!
「ぎゃあああああああ!潰れるううう!中身がでるううううう!」
鉄槌を落としたままアスリはその拳でちゅん助をテーブルに押し潰した!
「嘘ばっか吐いてるからこの際、全部吐き出させてあげてんのよ!」
「ふぁふぁーん!(←泣いている音)イズサンタスケテー!」
「………」
(アスリが切れた以上、下手に関わるとヤバい…ここは無視が最善の一手)
「はくじょーものー!」
「ウィンドミル!ファイアストン!ご主人サマの暴走を止めるお!」
「ぴゅ!?ワ、ワタシしょくじに忙しいっぴゅう…」
「どこからともなくなさけない声が聞こえるっぽ…気のせいっぽ…」
「うそつきにはにあいのまつろだっぽうw」
「ウソつきはげんばつがひつようぴゅw」
「ひきょーものー!たすけるお~!ぎゃああああ!」
「ぐふっ…ふらいとた…い……」
「ぷ…………」
「………」
「しんだっぽ…」
「いったぴゅね…」
テーブルの上で残骸となったちゅん助を見つめてコンビが言った…こういう事態の時、下手にちゅん助に関わると自分達にも雷が落ちる事をこのコンビは知っているのだ…
「ふん!食事くらい静かに摂ってくれないものかしら!?」
「そうだっぴゅうw」
「そうだっぽうw」
「アンタらもよ!」
「ピュ!?」
「ポっ!?」
第八話
その2 お子様ちゅん助
終わり




