第七話 その9 奇跡の匂い
第七話 その9 奇跡の匂い
「こむそおおおおおおおオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
崖上の女神が
いや鬼神魔弓士が吼えた!
その瞬間に白き魔王の敗北と消滅が確定した。
終始戦場を支配していた筈の核蟲は、まさにあのアルザスの指揮官の如く、ほぼ勝利の羽を手中にしていたはずだった。
その羽は最後の最後にふわふわと手のひらをすり抜け、勝負の天秤のイズサン達側の皿にふわりと舞い落ちたのだ。
両陣営の勝負はまさに羽毛1枚…
もし
あと1秒でも炎の壁が揺れるのが遅かったら、羽は恐らくはグソク側の皿に落ちていたのだ。
ただアルザスの指揮官と白き核蟲との違いは、その後のアルザスの指揮官は絶望的な敗北の屈辱感にまみれることになったのに対し、核蟲は自分が負けた事、いや死んだ事にすら気付かず昇天していった事であった。
それだけは幸いであったかもしれないが、アルザスの指揮官はその屈辱を発条に後年で雪辱を果たしたのに対し、核蟲には永遠にその機会は与えられなかった。
核蟲は勝利を確信してはいたが油断はしていなかった、知覚外からの即死攻撃を撃ち込まれては、核蟲にはどうしようもなかった。
もしグソク達に崖側と意思疎通できる能力があったなら、勝負の天秤のグソクの皿には羽ではなく、石が落ちていたはずだ。
だが崖と時計塔広場で意思疎通できないのはイズサン達も同じ!
核蟲にしてみれば、まさかの盤外も盤外から!
逆転の角行の切り裂きが王核蟲の駒を貫いたのだ。
核蟲に敗北の責任を問うのは酷な話であるかもしれない。
主を失ったグソク達は一瞬動きを止めた後、青大将を中心とした群れから真っ赤な眼を次々と白に変色させ、その暴走は放射状に止まってゆき、その輪は広場だけでなく街へ、郊外へ、ガリン平原へと広がっていった。
人々を襲っていたグソクは急速にその動きを緩やかなものへと変えてゆき、ある個体は左右に目的なく動き、ある個体は鈍い歩みに、
ある個体は動きを止め、そしてまたある個体は形を維持する事も出来ず土へと還っていった。
津波の様に凶暴な姿で襲撃していたグソク達は、今度は潮が引く様に姿を消していった。
あれほど街を埋め尽くしていたグソクは夜が明ける頃には、死骸しか街に残っていない状況となった。
長く険しい夜が明けた…
「この間抜け…あんたら…ばか…?」
その少女は傷付きボロボロの姿をしていたが、俺には高貴な、いいや何者にも侵し難い神聖なる姿に見えた。
彼女が俺を救ったのだ!
それは勇者としての勘でも泉輝の個人としての感想でも何でもない、彼女と俺達の間には信頼も何もないが
彼女が救った!
そう断言できるのは救われた者だけが分かる奇跡の匂いの様なものを感じた、そう言う他はない、説明できないがそうだ!
世の中にはそう言う事が得てしてあるものだ。
「まったく!この間抜け!いつまでトロトロやってたのよ!」
「面目ない…」
「お陰さまでこっちまで死ぬとこだったわ!」
「死ぬとこだったぴゅ…」
「死にそうだったっぽ…」
「ま、でも間抜けにしては、よく頑張ったわ、それだけは褒めてあげる」
「頑張ったッポ!」
「頑張ったピュ!」
「ふ!それほどでもないわ!照れるおw!」
「アンタに言って無い!」
「ないッピュ!」
「ないッポ!」
「ひどいお!」
「にしてもやっぱりエロピヨ!アンタしぶとく生き残ってたのね!」
「しぶといッピュ!」
「しぶといッポ!」
「ふ、わしはちゅん助、あきらめの悪い男だおw」
「ふん!あっそう!生きてようが死んでようがどっちでも構わないけど!」
「愚図で鈍間の勇者様のお望み通り!」
「私達の役目は果たしてあげたわよ!?」
「感謝するっポ!」
「ひれふすぴゅう!」
「まあこんな風になっちゃったこの街に、もう用は無いし、今度こそおさらばするわ!」
「アンタらも、これに懲りたら!」
「二度と今回みたいな身の程をわきまえない馬鹿な真似するんじゃないわよ!」
「次は!」
「助けないからね!」
「じゃ!」
「っぽ!」
「っぴゅ!」
少女に一方的に言われてしまったがこちらとしては仰る通りとしか言いようがなく反論の余地がない、ましてや彼女は命の恩人でもあるのだ。
俺は小さな声ですいません…そう呟くしかなかった…呟くしか…なかった…のだが!
「まってくれ!!!!!!!!!!!!!!」
ズシャア!
第七話
その9 奇跡の匂い
終わり
エンドカード!
イラスト絵師 穂みのつ様
「きゃああああ!」
「まってたお!その悲鳴!」
「美少女の羞恥の悲鳴こそ我が活力だおW」
「なんで!まともな格好が無いのよ!」
「まともなの表紙だけじゃない!」
「れーすくいーんは良いっていったお?」
「あれは特別だろ!」
「もともな衣装では読者の気を惹けんお!」
「内容で勝負しなさいよ!」
「内容で勝負出来るようなら!」
「アスアスちゃんみたいな美少女は必要ないんだお!」
「……………」
「それはそうだけど…」
(上手いこと丸め込めそうだおW?)




