第一話 その3 負け組二人
第一話 その3 負け組二人
(もうなってるから…)
そう発した俺と突っ込まれたちゅん助が時同じくしてはあ~…っと深いため息をついた。
俺達二人のコンビ関係も20年を超えた。お互い歳を取った。気が付けば50歳も近い、なのに二人とも会社では出世からは程遠く、婚活はしたにはしたがうまくいかず人生の行き止まりが見えているのだ。
ちゅん助に至っては体調とストレスが理由で先日退職した。
本人曰く
「もはや一秒も働かなくても、結婚できなかったせいで」
「経済的には墓場までは余裕で何とかなる」
だそうだが、結構長い事勤めていた会社で改善提案出しても現場からは支持を受けても、経営陣の覚えが悪いため好き嫌い人事によって何の評価も得られず無念の退職であるようだった。
俺はと言えば大学卒業以来今の会社一筋で勤め上げて来たというのに55歳まで勤めた、というテイでの割増退職金をやるから子会社に再雇用というインチキの見本のようなリストラに遭って二人とも絶賛負け組進行中なのだ。
(もうなってるから…)
「はあ~…」
「ハァーだお…」
ちゅん助のボケも俺の突っ込みもどこかしら自虐的な響きがあった。それ故、二人の口から時を同じくして深いため息が出たのだった。
「今年はすっばらしいレースクイーンが居るかお?」
空気を換えるべくちゅん助がまた話題を変えて振ってきた。
「忙しくて調べてないけど居ると良いな」
「エッw!なRQを所望するお!」
「お前、毎年そればっかだな…」
「ハミケツ!下乳!お子様に有害なあーんな衣装、こーんな衣装要求するお!」
「今は絶滅したハイグレを要求するんだお!ハイグレを!」
(ハイレグと言いたいのか…)
「今はそう言うのダメなんだ、諦めろって!」
「ふぁーふぁーん!(←泣いている音)」
「わしはこの目で古き良き時代を確かめたいんだお~~!」
「エロばっか求めんなよ!顔、スタイル、バランスが大事なんだよレースクイーンってのは!」
「ふぁーふぁーん!(←泣いている音)」
「彼女にできるわけじゃないんだからエロを求めるお~!」
まったくちゅん助は無理な事を言う。そういうのが好きなんであればコスプレ風〇とか行けばいいのに、身体の弱い彼曰く
「そんなの行った日にはあっと言う間に病気をうつされてしまうんだお!」
だそうでそれを言い訳に行く度胸まではないらしかった。
「相変わらず撮影会は行っとるのかお?」
レースクイーン繋がりの話題だ。実はというとカメラが趣味な俺はサーキットでマシンやレースクイーンを撮影するうちに彼女達から撮影会参加を促されてお気に入りの子の撮影会だけは足しげく通っているのだった。
「ま、まあ月一程度には…」
「いいなおーいいなおーわしも撮影会行って水着からはみ出た尻や乳を動画撮影したいんだお!」
「動画は禁止だって!」
「それに今通ってる子は水着はねーぞ!」
「は!?」
「水着はありません!」
「は!?は!?はw!?」
水着なし、にちゅん助が食いついてきた。
「イズサン!イズサン!撮影会くんだりに行って水着がないとかw!」
「お前は一体なにを撮りに行っとるんだお?」
「ヌードかお?」
「ねーよ!」
「レオタードかお?」
「ないって」
「ブルマかお?」
「ないって!」
「チアコス!」
「んなわけあるか!!」
「裸パジャマor裸ワイシャツ」
「んなわけあるか!!!」
「競泳水着だなお!」
「だから水着は無いって!」
「じゃあなに撮っとるのかお!?」
「普通に私服ですがなにか?」
「は!?はあ!?はあ~w!?」
「なんだよ」
「私服とかw私服で至福とかお主アホかおwバカかおw!」
「い、いいだろ!」
「その私服の撮影会とやらにいくら出しとるかお?」
「まあ1部8000円で4部通しで30000円てのが多いな」
「ぶあっはっはっはw」
「なんだよ!」
「私服の撮影会にさwんwまwんwえwんw」
「いいだろうが!」
「はあ~⤴私服姿になぞ、我が人生最強最高のグラビアアイドル夜岸りさちゃんであっても1円も出さんわ!」
「お前の価値観といっしょにすんな!」
「エロコスは私服より重い!この価値観を誤魔化す奴は生涯地を這いつくばるお!」
「だからお前の価値観だろうが!」
「夜岸りさ~♪やぎしりさ~♪よぎしりさ~♪よきしりさ~♪良き尻さ~♪」
「あの迫力のケツ堪らんおw胸は微!微は美なり!最強のスタイルだお~!www」
「なのに~なのに~♪ふぁーふぁーん!(←泣いている音)多和田は氏ねだお氏ねだお~!!!」
まったくちゅん助ときたら急に歌い出して先程までの私服撮影会の価値観の話は既にどうでもいいらしい。
多和田というのはちゅん助が生涯で一番最高のグラドルだと言っていた夜岸りさと最近結婚を発表した実力派俳優でちゅん助はこの事態を逆恨みして嘆いているのだ。
「いつまで言ってんだよ、諦めろって」
「実力派の俳優の多和田と俺達みたいのじゃ最初から相手にならんて!」
「は?わしは夜岸ちゃんのブルーレイ、穴が空くまで見た熱烈ふぁんなんだお!」
「それは最初から空いてるだろ…」
「擦り切れるまで見たんだお!」
「レコードとかビデオテープじゃないって…」
「ふぁーふぁーん!(←泣いている音)」
未練たらしくちゅん助が泣き声を上げた。
「しかし!まだだ!まだ終わらんよ!」
「今度は何だよ、まったく」
「世に九十九のりさあれど、最強は夜岸りさ!そして峰原梨沙!」
「最強なのに二人いる件…」
「だまるお!まだわしには峰ちゃんがいるんだお~w」
「誰だよ…」
「希望はあるよ、どんな時も♪どんな時も♪」
「ラヴァーネタとJPOPどっちかにしろよ、てか峰ちゃんて…」
「は!?峰ちゃん知らんのかお!」
「知らんて!」
「あのすんばらしい声優知らんとか人生半分損してるお」
「いや一…般人はあんま声優とか気にせんから!」
「おみゃーにもあの中学生の美少女が剣持って戦うアニメ見せたやろ!あの声優さんだお!」
「ってあれかあ…」
まあ、あのアニメ、ちゅん助がしつこく勧めてくるのでほぼ強制的に見させられたのだが
「せ、先輩!ダメです、そ、そんな事!」
なーんて展開しか記憶に残っていないのだが…
「あの強気声からの一転!もうらめぇ~声、峰原梨沙エロスギィ~w」
やはりそこか…
「お前、エロしか頭にないのな…」
「黙るお!ええか!?峰ちゃんはエロスギィwなのや!エロスギィ!やないんやで!」
「どう違うんだよ、言ってる意味が分からんぞ!」
「エロスギィのあとに草か!ビックリマークか!」
「この違いは天と地の差があるやで!」
「お前しか分からんて!」
「ともかく強気声からの!もうらめ声させたら峰ちゃんの右に」
「いや!右にも!」
「左にも!」
「前にも上にも!」
「出る者がおらんどころか!」
「足元に及ぶ者すらおらんやで!」
おかしな性癖…いやこだわりと言っておいてやろう、ちゅん助が臆面もなく強いこだわりを主張した。
「わしも峰ちゃんにあの声上げさせたいお~~~www」
「かなり気持ち悪い事言ってるからな、お前…」
第一話
その3 負け組二人
終わり




