第七話 その2 友よ!女神よ!
第七話 その2 友よ!女神よ!
「ちゅんすけええ~!ちゅんすけーーーー!」
「オオオオオオ!」
激しく、強い悲しみが俺を襲う。悲しみ…いいや自責の念。
俺は自分勝手な行動の結果、自意識過剰な義務感、考え過ぎの負い目から大切な友を失ってしまったのだ。
例えこの街が守られたとしても、友を失ってまで守る価値が、果たしてあったのだろうか?その答えは止めどなく溢れる涙と押し潰されそうなまでに膨らんだ自責の念が答えていた。
「ちゅん助~!許してくれえ!許してくれよ~!」
「こんな事になるなんて…」
「お前の言う事を聞いておけば良かった…」
「どうして俺はあんな…」
「許してくれー!ちゅん助~!お前の言う事に耳を貸してさえいれば…どうして…どうして俺はあ~!」
「人生に次は無いお、やり直せんのが人生だお」
「そうだよ、そうなんだよ、そんな事も俺は分からなかったんだよ!許しておくれえ!」
「次はちゃんと車間距離取るかお?」
「何百mだって取ってやるよお!オオオ!」
「サバゲに誘ったらちゃんと行くかお?」
「装備一式揃えてやるよお!ウオオオン!」
「おすすめのヒロインが出るアニメちゃんと見るかお?」
「学園物でも全話見るよおおお!わああああん!」
「わしのアカウントに雨雲ちゃんUR出るまで課金するかお?」
「………」
「わしにアルザスハイブリッド500買うかお?」
「………」
「わしにアルザス株一万株買ってくれるかお?」
「………」
「………」
「………」
「ちゅん助君…」
「ひょっとして…居るの?」
「ここだお…イズサン…そんなところでわんわん泣いとらずにさっさと助けてくれお…」
「な、な、な、泣いてねーし!ど、どこだよ!?」
「ここだお、グソクの死骸に埋もれて臭いお、気持ち悪い体液にまみれて悲惨だお…エ〇同人みたいになっとるお…」
「どこだよ!まさか!?」
声のする方に視線を向けるとひと際うず高く積まれたグソクの死骸の山があった。あの白き魔王が隠れていた付近の死骸の山であった。
この場所はちゅん助が落下した場所とは明らかに違うはずだが…?
「まさか!?お前!この中に居るの!?」
「はよう、出してクレメンス…窒息するお…」
「待ってろ!今どけてやる!」
俺は急いで死骸の山を掻き分け投げ捨て穿りかえした。
ピョン!
見覚えのある三本の毛が立ちあがる!
「ちゅん助ッ!」
グイ!
ズボ!
「こ!こらああああ!毛を引っ張ったら!抜けてしまうお!」
「ちゅん助!生きていたのか!」
「あやうく死ぬとこやったわ!」
「お前どうやって!」
「灰色どもに飲まれた瞬間、一か八か絶界を使ってみたんだお!フラフラで気絶しそうだったから移動できたのはわずか数m」
「移動後、気を失うのは明白だったから、死骸の山の中に隠れることにしたんだお!」
「クソ蟲どもも、まさかわしがあの魔王が隠れとった山の中に隠れ直すとは、よもやよもや思いもよるまいてw」
「ふっ!我が動きは浮雲!誰にも掴めんわw!」
「ちゅ!ちゅん助ええ!」
思わず俺は彼を抱きしめてしまった。
「うお!気持ち悪いお!わしを抱きしめたり撫でたりしていいのは美少女だけだお!」
構わず抱きしめる。
「ウオオオオオオオン!」
「ふぁふぁーん(←泣いている音)」
泣いていた、おっさん二人、大声で。
いつまでもいつまでも…
「よ、よくぞ!生きてくれていた!」
「ふふ!まだこんな姿にされた賠償!受け取ってないからなお!」
「さあ課金とアルザス500とアルザス株一万!」
「締めてざっと8千万!払ってもらおうかだおw!」
「お前…生き残れただけで大儲け、且つこの超感動的なシーンで…」
「金持ちの癖にがめつ過ぎない?」
「だまるお!癖にじゃない!」
「だから!金持ちなんだお!」
「……感動台無し…」
「………」
「………」
「友よ!」
「友お!」
「ウオオオオオオオン!」
「ふぁふぁふぁーん!(←強く泣いている音)」
ちゅん助が生きていた!その嬉しさと安堵感のせいで今までの激戦の疲れがどっと噴き出した俺達はいつの間にか、また眠りに就いたのだった。
未だにあの戦いの結末がどうなったかが不明であったが、俺は!俺達は生きていた!その事実の嬉しさの前にはそんなものどうでも良かった。
今はただ眠りたい、ただただ眠りたい…俺はちゅん助を腹に抱きながら深い眠りに就いた。疲労は限界を超えていて泥の様に眠る、その意味がはっきり分かるくらい眠ったのだった。
どれだけ眠ったであろうか?半日?数時間?いや数十分だったかもしれない。
意識が戻ると閉じた目でも感じる位、強い日差しが降り注いでいた。太陽が最も高く登っている時間だろうか?
目を開ければ眩しい光が飛び込んでくるに違いない。傷がまだまだ痛む。もう少し寝ていようか?
そんな風に感じていた時、ズッ!トソ!ズ!トソ!と小さいながら引きずっているかのような足音が聞こえてくる。
誰かが近付いてきたようだった。
ガサガサと気色の悪いグソクの足音とは違う。足取りは重そうだったが、人の近付いてくる足音だった。もうすぐそばまで近付いてきていた。足音の主が作る影が俺の顔を覆い、太陽の日差しが和らいだように感じた。
足音が止まりその人物は足元に立っている様だった。
「うーん!?」
痛む身体をなんとか起こしながら持ち上げ、ゆっくりと目を開ける。見上げた影の正体がマントで覆われた顔がこちらを見下ろしている。小柄で下半身は素肌が見える。身体つきからは女性かもしれないと感じた。
不意にヒュっと心地よい風が辺りを吹き抜けマントが翻った。
影の主は太陽を背にしながら右手で顔を覆ったマントめくり取ると、腰に手を当てながら俺達を指差しながら言った。
「この間抜け…あんたら…ばか…?」
表情にはもの凄い疲労の色がありありと出ており、脚には出血と火傷の様な痕、強気な表情と口調は薄れボロボロに見えるが影の主はあの少女だった。
その姿を見たとき、俺は直感した、いや確信と言ってもいい。
間違いなく!
間違いなくあの絶体絶命の窮地を救ってくれたのはこの子だ!そう確信した!
どうやって?とかどんな風に?とかそんな事は分からない!そんな事は問題ではなく、この確信には間違いない!
何故かって?ボロボロで憔悴しきった様に見える彼女の姿、俺には逆に女神がオーラを纏っている、そんな風に見えたからだ!
「女神よ…」
第七話
その2 友よ!女神よ!
終わり




