第六話 その22 友の聲
第六話 その22 友の聲
俺の意識は暗黒の宙に舞う様に漂っていた。身体の感覚がない…俺は死んだのだろうか?
フワフワとした意識だけが漂っている感覚があった。
不意に昔の事が思い出される。映像は無い、声が…声だけが意識の中に鳴り響いていた。
友の声が…
「おーい!イズサン!そのハイパーロボ対戦とか言うオタゲーばっかりしてないでわしと遊ぼうずw」
「……」
「必殺技なんか出してないでサバゲ行こうずw!」
「……」
「ゲームじゃなくて本物の人間相手にBB弾撃ち込もうお!」
「やだよ!それ逆に撃たれたらイテーんだろ?お断りだね!」
「……ショボーン」
「しかし!わがハチナイ式折曲銃床型小銃の3点バースト射撃を見れば!やりたくなるおw!」
パパパッ!パパパッ!パパパッ!パパパッ!
パシパシパシッ!
「こらああ!部屋の中で発射する奴があるかあ!!!」
「ならば!」
ガラガラガラ!(まどあけ~!)
「屋外に向けてフルオートだおwww!」
パパパパパパパパパパパパッ!!!!
「アホウっ!ご近所様にトチ狂った奴がおると思われるやろがーい!!」
ガチーン!
「痛いお…」
「おい!イズサン!このアニメ見ようず!このヒロインの素っ気なさと強気と言ったらそれはもう…」
「はあ?どうせまた下らん学園物だろ?学園物は興味ないんだわ」
「ショボーン」
「イズサーン!見ろや!これ!雨雲ちゃんのUR!ついに10連だけで引き当てたおw貴様ばっかりSSR引きよってからに~w!」
「ほう、凄いな、でも俺も30連で出たけど?」
「!」
ポカポカポカ!
「うわ!何をする!」
「雨雲ちゃんはわしのだぞ!勝手に引くんじゃあないお!」
「そんなの!それこそ勝手だろうが!」
「ふぁふぁーん(←泣いている音)くやしいお!くやしいお!」
「イズすわーん!この映画見ようず!この若手女優がなかなか特徴あって可愛いんだおw!」
「ふーん」
「どうかお!?どうかお!可愛いお!」
「べっつに?あんま好みじゃないなあ…」
「ショボーン…」
「イズサン!イズサン!今度のレース!霊峰スピードウェイにはいつから出発するお!?」
「我がアルザスの勝利を見せつけてくれるンゴw!」
「ああ、次のレースな、お気に入りのレースクイーンはその日、東京で撮影会なんだわ。一人で行ってくれよ」
「!」
「なんだよ?」
「友を置いて!キサマはおにゃのこのケツを追っかけるというのかおっ!」
「そうですが何か?」
「ショボボーン…ひどいお…」
「イズサン」
「イズサーン!」
「イズサン!イズサン!」
思えば彼は事あるごとに俺を誘ってくれていた。
お互い遊べる友達が少ないから、あの時はそんな風に思ってずいぶんと邪険に扱ってしまっていたが、いざ失ってから思い出すと俺はなんという態度をとっていたのだろう?
負け組同士が組んでおっさん二人、傷をなめ合うような関係だと思った事も無いではなかった。
しかし、それでも、あの日々もまた、かけがえのない日々だったのだ…
面白そうだな、試しに一回ぐらい行ってみるか!
一話斬りかもしれんけど?お前がそう言うなら見てみるわ
お前の愛が僅か0.75%の確率なのに、たった10連で引かせたんだな!
ほう、お前好みの特徴がある可愛さを持った女優さんじゃないか
すまん!撮影会が終わったら決勝だけでも合流するから今回だけは別行動にしてくれないか?
あの時…
何故そんな事くらいが言えなかったのだろう?
何故!
何故
何故…
当り前の日々は、当り前ではなかったのだ。
今回だって、俺ではなくあの子の後を追っかけていれば、ちゅん助ならば絶対死なずに済んだはずなのだ。
なのに、彼は危険を顧みずに先走ってしまった俺の後を追っかけて来たのだ。
『だからこそ、俺にとってお前との関係は尊かったのよ!』
果たして、俺にそれだけの価値があっただろうか?
後悔先に立たず
この言葉がこれ程重いとは…
ツツー
涙が零れる。熱い熱い大量の涙が頬を伝って…
熱い…涙が…
第六話
終わり




