第六話 その16 勇者よ!気付け!
第六話 その16 勇者よ!気付け!
「頼む!コイツを!」
「この白い核蟲を撃って!撃ってくれえ!」
声の限りに何度叫んだだろうか?目の前に迫る青大将の大口とその下で不気味な笑みを浮かべるかのような白の魔王。
どんなに叫んでもその絶望的な光景が変わることなく続いていた。
(ダメなのか…)
(ダメなのかッ!)
(やはりこの状況下で彼女が残ってくれているなどと…そんな虫のいい話はあるはずがない…)
腕がしびれる、目が霞む、足元すらおぼつかない…疲労と絶望によって死の恐怖すら薄まっていくようだった。
パアアアア!
俯き目を閉じかけようとした俺の頭上で、まばゆい輝きが降り注いだような気がした。
その輝きにつられて思わず天を仰ぐと美しい彗星がゆっくりと頭上を通過していくところだった。美しい輝きではあったが日本では彗星は不吉の象徴である。
(なんだよ…コレ…)
(最期に見る光景としては相応しいってか…)
そんな皮肉な思いが俺の中に去来する。
カシーン!
「!」
彗星と思われたその輝きは俺の頭上を通過すると、すぐに地上へと落下し、なんと地面に刺さったのであった!
「矢…?」
「矢だと!?」
何とか振り返って確認した、その輝きの正体は一本の矢から放たれた光であった!
「まさか………?」
「いいや!あの子だ!」
思わず俺はそう叫ぶ!
やはり!やはりあの子は居たのだ!この状況を見ているのだ!
俺は青大将に振り回されながらも矢が飛んできたであろう時計塔の方角を必死になって注視する。
矢はまっすぐに頭上を通過していったはずだ!
そうであるなら時計塔から放たれた物だろうか?いや時計塔が高いと言っても、たかだか10mだ、塔と言っても人が登れるような構造にはなっていなかったはずだ。
塔の屋根に人影は無い。大体、彼女がこの広場に居たのなら即座にこの核蟲を撃ってくれていただろう、だとするとどこから…俺は思案を巡らせた。
街の中央付近にある、この広場は何回か訪れた事がある。
その時の記憶を必死でたどる。
広場から時計塔を見上げるとその真後ろにはこのガリンの平原に似つかわしくない、そこそこの高さの崖山がそびえていたはずだ!
確か時計塔の真後ろ、街の真北とその西隣に連山の様な形で険しい壁面を向けている崖山があった。
似たような形、高さの崖山だったから記憶にしっかりと残っている。
壁面だけを見ると人が登れそうにない崖山であったが、あえて登る目的がないだけであって、かなり険しく危険ではあるが側面や裏面からは登る事は不可能ではない、そう聞いた事があった。
彼女はそこに居るのだろうか?
確かにグソクの大群から避難するにはうってつけの場所かもしれない!そして頂上からここまで数kmは離れているが、あの子の腕前ならなんら難しい距離ではなかったはずだ!
(間違いない!)
彼女は!
神魔弓士は!
あの崖上に居るのだ!
逆転の、大逆転の一手がまだ残っているかもしれない!
痺れは身体全体に伝わり始め、頭から喰われるのはもう時間の問題であるこの状況…しかし諦めかけていたこの状況でこの一本の矢が放った光は文字通り一筋の光明であった!
だがこの光る矢の意図が分からない…狙撃可能位置に付いているならとっとと、この忌々しい白ダンゴ野郎をブチ抜いてくれてもいいではないか!?!?
「コイツなんだ!コイツを!」
「コイツを早く!撃って!撃ち抜いてくれえ!」
俺は必死に叫び続けるが、期待するような狙撃弾の類は全く来ない。
何故だ!?
どうしてだ!?
逆転の一手はそこにあるはずなのに何故発動しない?このまま見殺しにするつもりか!?
俺は腹が立つような感覚に襲われ、その感情は冷静な思考を失わせようとしていた。
『勇者よ!あとは託した!』
不意にちゅん助が最期に残していった言葉を思い出す。
(ちゅん助…俺は勇者じゃない、お前が一番よく知ってるはずだったじゃないか)
なのに俺は今もこうして無駄な足掻きとも思える抵抗をして死ぬことを引き延ばしている。いいや!ちゅん助達が作ったチャンスとこの光明!簡単に諦めるわけにはいかないのだ!
考えろ!考えろ!この矢の意味はなんだ?
無様な死に様を見てあげてるわよ?そいういう意味か?
いいや!あの子は強気な態度は取っていたが、嫌味を、そんな嫌味を言うタイプではなかったはずだ。
ちゅん助に神愛生物の天令が下って彼が落ち込んだ時も、最初は大笑いして馬鹿にしていたがちゅん助のあまりの落ち込みを見て気遣う態度を見せていた。
そんな彼女が「ただ見ているだけよ」そんなメッセージを送るだろうか?
凄腕で射程距離とか命中精度とかが驚異的なのは、この目で見て確かだが、ちゅん助からは位置取りとか感知能力にも彼女達には絶対の自信がある!そんな様な会話をしたと聞いた記憶がある。
週末サバゲーマーであるちゅん助はよく、狙撃手は絶対に自らの位置を知られてはならない!超一流のスナイパーは射撃の腕前は当てて当然、それよりも狙撃の機会を得られるような絶妙の位置取りや、絶好の射撃チャンス、そうした瞬間が訪れる場所、その時にそこに存在できる者こそが真の狙撃手!キリッ!みたいな事を言っていた。
彼女にそうした能力があるならば、わざわざ自分の射線を知らせる様な迂闊な真似はしないはずだ。
だとしたら…この矢はなんだ?
考えろ!
必ず何か意味があるはずだ!
あるはずなんだ!
「アイツ気が付くかっポウ…?」
「気付くっピュウ!なんのための天令だッピュウ!気付くっピュウ!」
「あの間抜け!気付きなさいよ!気付かなきゃ私達の負けよ!気付きなさい!」
「このままだと!私達の負けなのよッ!」
「あんた!天令の勇者でしょ!」
少女にとってこの戦況はいつの間にか「私達の」そうなっていた。
彼女にガリン平原で助けて貰った時、風の精霊らしき声は確か大きい攻撃は2回しか出来ない、そんな事を言っていたはずだ。
この街の混乱時に遭遇した時も、大爆発はやれるもんならとっくにやってる!そう言っていた。
となると彼女達は大規模な攻撃手段は何らかの原因で持ち合わせていない!という事になる。
「!」
俺の脳裏に閃くものがあった。
(出来ないのは大規模な攻撃!?)
(なら普通の狙撃は出来るんじゃないか?)
(わざわざ尾を引く照明弾で自らの射線を知らせた!?)
「これって!」
「核蟲が死角に入ってる!なんとか向きを変えなさい!この間抜け!」
「そう言いたいんだなあああ!?」
そうだ!
そう言う事なのだ!
きっとそうに違いない!
照明弾の飛んできた方向は俺の真正面、時計塔の方向だった!
それは完全に青大将に対しては真後ろの位置という事になる!その方向からではどんなに上空からでも、この白い奴は巨体に隠れて完全な死角になるはずだ!
直接射撃では絶対に狙えない位置なのだ!
それならひょっとして白い奴の情報は伝わっているのか!?超長距離でも風の精霊の声は届いていた。
俺の声が聞こえている?逆も可能なのか?
いや!
それなら今回は何故、向こうからの声による伝達が無い?
こっちの声が聞こえているなら照明弾はもっと早く来ていてもおかしくない
声が伝わっているとは考えにくい。
だが、この状況を見ているのは間違いなさそうなのだ!
見ている?視覚?
視覚で情報を得るモノと言えば…?
さっきから俺はコイツを撃てと叫んでいる!口の動き?読唇術?それならばなんとか読み取るのは可能かもしれない!
映像的に死角を覗き見るには、屈折か反射…鏡の様な物が必要だが…この広場に鏡なんて?
いや!
ある!
俺の眼か!先程から散々に振り回され角度が変わり射線上に俺の姿がはみ出るようなタイミングは何回もあったはずだ!
でも数km離れた地点から激しく動く動体目標、しかも人の眼など…
いや!
出来る!
彼女達なら、そんな事すら可能なはずなのだ!これは希望的観測ではない!根拠など無い!しかし俺には確信めいたものがあった!
あの魔法陣の望遠鏡ならそんな離れ業も可能なはずなんだ!
俺は振り回されながら、痺れが極限に達しそうな腕で必死に抵抗しながら周りの状況を見渡す!
相変わらず周りは乱戦が続いていた。
ちゅん助達によって放たれた火によって青大将の後方への青グソクの補充は防がれており一進一退の攻防が続いていた。
だがガレッタを失った今では、もともとまとまりのない集団だ。バラバラに戦ってこの戦いの勝利条件と目的を見失っているように見えた。
(バラバラに戦っていて押され気味でも均衡を保っている?)
(ならこいつらを効率的に戦わせれば!)
勇者としてではない!俺だって元の世界でかなりの経験を積んできたのだ。
ちゅん助の様に数々の職場を巡ってきたわけではない。
しかし!
一社懸命!
ブラックでも同じ職場でずっと生き抜いてきたのだ!
泉輝!
この俺の46年間!
無駄ではないと!
証明してやる!
第六話
その16 勇者よ!気付け!
終わり
エンドカード!
ラフイラスト絵師 いぶき様
「さあ読者たち!」
「このラノベにはセ〇シーイラストがたまに掲載される!」
「気付きなさいお!」
「気付かないと!」
「気付かないとわし達のラノベの負けなのお!」
「ちゅん助にとってこのラノベは…」
「いつの間にか『わし達の』そうなっていたお…」
「ふざけんなあああああああああああああ!!!!」
「劇中のシーン借りて!」
「エ〇イラスト載せる口実にしてんじゃないわよ!」
「しかも!また私に何て格好を!」
「ふふふのふw」
「今回はツイッターで良くしてもらってる」
「いぶき(デジタル修行中)様に無理言って描いてもらったんだおw」
「アンタ…至る所に魔手を伸ばして!」
「エ〇はPVを救う!」
「ふざけんなああああああ!」
「おお?まだまだラフの段階だお?」
「ま・さ・か!」
「この程度でねをあげてるんじゃあないなお?」
「そんなんじゃあ最後までもたないおw(←なぜか言い方がいやらしい)」
「クッ!」




