第六話 その15 彗星 点火星(セルスター)
第六話 その15 彗星 点火星
「!」
「ウィンディ…映像を大きく!アイツの顔を捉えて!」
「ピュッ!」
少女の指示通り対物魔法陣レンズが回転しながらその径をググっと拡げていく!
像は苦も無く拡大されていくがその分、イズサンの姿は大きく振り回される度に画面から外れ、捉えることが困難になっていく。
「ファイアン!アイツの動きに追随させて捉え続けて!」
「ッポ!やってみるっポ!」
ファイアストンが再び対物レンズに触れると青大将の動きを予測し、同期したかのような動きでイズサンの顔だけを抜き続けた映像が送られてくる。
「ここだ!コイツを!この白い奴を撃ってくれ!間違いなくそう言ってるっポ!」
「白い奴ですって!?」
「ウィンディ!拡大!アイツの眼だけ抜ける!?」
「ファイアン!出来るだけ正確に捉え続けて!」
「ッピュ!」
「ッポ!」
画像はなおも拡大し振り回されるイズサンに何とか同期し追随し、遂に角膜の映像を捉えるまでとなった!
「何て事!」
イズサンが大きく右に振られ青大将の巨体からはみ出た時、ほんの一瞬であったが映像はイズサンの瞳に映った、邪悪なまでに美しい白いグソクを確実に捉えていた!
「アイツら…まったく!」
少女は呆れる様な言葉を発したが、その心中は呆れではなく正直な所、感心…いや感服と言った方が正しかった。
彼らは恐らく、あんな状況の中で、この街の危機の根源にたどり着いていたのだ!
そう直感した!
「あの程度の腕前で…よくもここまで…」
「見直したわ…」
そう少女は素直に胸中を吐露した。
「でも…」
精霊石付きの矢があれば例え背面からでも間違いなく、あの核蟲を撃ち抜くことが出来た。
その自信はあった。
しかし、今、少女が手にしているのは照明弾が精一杯の、あまりに弱々しい火の精霊石一発のみだったのだ。
あるいは、最終手段
できればそれを使用するのは避けたいが…
あの男が、イズサンが何とかして、あの巨体を動かし、こちら側に核蟲面を向かせることが出来れば対処のしようがあるのだ。
今の様に、完全に背を向けた状態では、その方法では手の出しようがないのだ…
「コイツを!コイツを!白い核蟲を撃ってくれええ!」
そうとは知らずイズサンの必死の呼びかけが続いていた。
「せめて、こちらに向けさせてくれれば…」
「向かせたとしてご主人サマ!まさかアレをやるつもりッピュ!?」
「今この場所でアレは危険だっポ!」
「それは分かってる…」
「でも、仕留められるとしたらアレしかないのよ…」
「あの間抜けと周りの奴等で対処できると思う?」
「無理だっぽ…」
「無理ぴゅ…」
「今、この場でやれるのは私しかいない、そういう事よ…」
「ぽぅ…」
「ぴゅう…」
「でもやるとしてもアイツがどうにかして白い奴をこちらに向けてくれない限りはお手上げよ」
「残り一発が風石だったらウィンディ、アンタの揺らぎで伝声出来たんだけど…」
「ぴゅう…石無しでこの距離は流石に無理ぴゅう…」
「こちらの位置を知らせるのはどうだっポ!」
ファイアストンが閃いたように言った。
「位置を知らせる?」
「そうだっポ!そうだっポ!火石をボクが思いっきり光らせる!それを放つっポ!」
「そんなことしたらこの場所が丸わかりだッピュ!」
「いいえ!発光のタイミングを遅らせれば、誤魔化せるはずよ!」
「神魔弓士は位置取りが命だっピュウ!仮に白いのを仕留めたところで他の蟲達が止まらなかったらどうするッピュ!」
「石無しでアレを撃ったらご主人サマはしばらく動けないッポ…」
「危険だっピュ!」
「危険は承知してる!でも!どうやったか知らないけど!アイツらが!」
「あそこまでやったの!」
「やってんの!」
「これで何もしないで逃げたら!」
「神魔弓士の名が廃るわ!」
「ッポ!?」
「ピュ!?」
「いい?発光でこちらの位置をアイツに知らせるわ!」
「その上でアイツが気付けなかったり」
「よしんば気が付いても、こちらに白い奴を向けられなかったりしたら…」
「その時は…」
「その時はポ?」
「その時はピュ?」
「即座にここを撤収して退却よ…」
「いい?」
「アイツがきづいたとして、ここももうすぐ危険だっピュ!」
「きづいても間に合わない場合はどうするっポ!」
「その場合…」
「アイツに運が無かった…そんだけよ!」
「兎に角、やれるだけの事はやる!」
「ファイアン!準備はいい?」
「ッポ!」
少女は素早く腰の矢筒から最後の一本、火石の矢尻がはまった矢を取り出しコの字を弓に展開させ即座に引き絞る。
「点火星!」
「ッポー!」
放たれた矢は無音、無光で時計塔目掛け飛翔していく。
「まだよ!まだ光らせちゃ駄目!」
「ッポ!」
「高度!高度を下げて!もっともっと下げて!」
「ッポ!」
「高すぎるとアイツは気付けない!」
「ッポ!」
「低すぎると目がくらんで方向が分からないわ!」
「時計塔!時計塔の高さに合わせるッピュ!」
「ッポ!」
「速度を!速度を落として!出来るだけゆっくり!ゆっくり飛ばせて!」
「ッポ!」
少女は次々と効果を最大にすべく指示を出した!
矢が時計塔手前に迫る!
「今よ!発光!」
「ッポウ!」
パアアアア!
矢尻の火石がまばゆいばかりの輝きを降り注ぐかのように発し、その姿は彗星から滝のような光のつららが零れ落ちる様にすら見えた。
あちこちで火災が発生し炎が周辺をかなりの明るさに照らしているガリンの街であったが、少女達の放った彗星はその輝きと長い尾のお陰で誰の眼にも、どの方向から飛んできているのかが明らかに分かる照明弾であった!
逆転の一手を賭けて、希望の彗星が真っ直ぐな軌道でイズサンの頭上を通過しつつあった。
「あの間抜け!お願い!気付いて!」
「ポウ!」
「ピュウ!」
第六話 その15 彗星 点火星




