第五話 その26 好機!危機!?
第五話 その26 好機!危機!?
「ぬかせ!わしはおまえと違って週末サバゲーマーだお!このくらいの距離!屁も出ないわ!」
「便秘になってどうする…」
ダイオウにこちらの企みを悟られてはならない!
幸いこの巨体と周りのグソクを操る事で精一杯なのか?先程から繰り返している突進にそれほどの戦略性が感じられなかった。
しかし、いきなりの方向転換だと怪しまれるか?
俺は慎重に奴に悟られないようフェイントを入れたり、深く側面に回り込んだ場合には剣での攻撃を入れて牽制した。
右へ右へ!
円を描く様に!
闘牛士のごとく!
俺が蝶の様に舞い!
ちゅん助が蜂の様に刺す!
フロート!ライクアバタフライ!
スティング!ライクアビー!
(必ず!必ず仕留めてやる!)
俺は自分を鼓舞し躱し!突き!徐々にダイオウを誘導していく!
躱し方はギリギリ!
小回りしていたRを徐々に大きく取っていった!
行ける!?
この軌道なら!次の旋回で地雷源に誘導できるかッ?
「うおおおおおおおおお!」
「!」
「な、なにをやっとるか!バカモーン!!!」
(こ、このタイミングでっ!?)
「こ!この間抜け!」
あの少女の口癖がうつってしまった!
俺は頭を抱えた、ここまでの釣りは完璧だった!俺に目標を定めたグソクは何度も俺に突進を繰り返しており今の旋回の軌道なら確実に直上に送り込めたはずなのに!
な!の!に!
こちらの作戦を理解していないであろう若い隊員が、焦れたのか深く突っ込んでダイオウの軌道を変えてしまったのだった!
ガレッタは隊員を叱責したが、このタイミングは痛すぎる!
「ふざけんなッ!」
俺は思わず大声を出してしまった。
「申し訳ありません!勇者様!」
「テメエもちったあ!抑えとけや!このヤロウ!クソがッ!」
「面目ない…」
ガレッタが謝罪をするが思わず毒付いてしまった!
自分で言うのもなんだが、それでも誓って言うが俺は紳士な方だ。他人を罵ったり悪口を言ったりする事はしない方だと思っている。
だが!この状況!チャンスはたった一回!命が掛かっているのだ!
命と言っても俺だけじゃない!ちゅん助!ガレッタ!邪魔こいた隊員!(←コイツは死ねや!)のみならず残された街の人全ての命運が掛かっている!そういっても過言じゃない状況!こっちも必死!命がけでやってるのだ!
失敗しました!スミマセン……で済むか!ボケエ!
あの子が防衛隊は無能だって罵るわけだ!
温厚な、紳士なる俺がここまで切れる!この怒りがお分かりだろうか???
「い、イズサーン…!」
ちゅん助の不安そうな呼びかけが側溝の中で響いた。
「ちゅ!ちゅん助~!もう少し耐えてくれ!」
「お、おう!頼むお!早くしてクレメンス!わしは我慢弱い男だお!」
「わ、分かってるって!」
戦況は膠着状態!
誘導はまたやり直しとなった。膠着状態という事は戦力差で圧倒的に劣る俺達が追い込まれているという事だった。膠着させるだけでも、こちらはどんどん消耗していくのだ。
ちゅん助に言われるまでもない!急がねば!かなり奴の懐に深く入る事になるが、時間的余裕はもうなくなりつつあるのだ!相当のリスクは仕方ない!
「ハアッ!」
ザシュ!
バラバラ!
俺は躱す間合いを最小限に縮めるとすれ違いざまに奴の脚部に攻撃を叩き込んだ!
思った通り外殻部より弱い!一撃で数匹のグソクが剥がれ落ちた!
(これなら!これならいけるんじゃないか!?)
「隊長!隊員に徹底させてくれ!」
「攻撃は、攻撃は脚部に集中しろと!」
「分かりました!」
「出来るだけ灰の奴等の補充は防いでくれ!」
今度は上手くやってくれよ!
俺は祈りながらガレッタの檄が飛ぶのを聞いた。
神経を張りつめながら攻撃を躱し、脚部に攻撃、捕まったら捕食死、転べば圧死。かすっただけでも相手は戦車なのだ、ふっ飛ばされたらただでは済まないだろう。
単純作業に見えても綱渡りの綱の上での単純作業は神経がすり減っていく。いや、単純作業であるだけにほんの少しの変化、見込み違いが即命取りなのだ!
気が付けば冷や汗が大量に噴き出しており、その事実に意識が行くと途方もない徒労感に襲われる。
ガレッタ達も必死に攻撃を加えているが命がけの単純作業、その罠にはまってしくじり圧死する者、捕らえられて餌になる者が後を絶たなかった。
最初の数人の犠牲者にはショックを受けたが短期間にこうも続くと、もはや感覚が麻痺してくる…その感覚が僅かに残っている、残させているものがあるとすれば
「次は俺かもしれない!」
そこから来る恐怖感だった…
何回躱して何回攻撃を試みを繰り返しただろうか?
いったいどれ程の時間が?
数分だったかもしれないし一時間以上経っているのかもしれない、もはや時間の感覚すらない!
「!」
(今の突進!鈍ってた!?)
今の攻撃速度は今までより明らかに体感できるほど鈍っていた!
好機!
ついにチャンスが来たのだ!いいや!怪我の功名!一回目の誘導より明らかに奴の走行速度が鈍っているのだ!
ちゅん助と爆破のタイミングを合わせるのには絶対に今回の方が合わせやすいはずだ!
(行ける!)
俺の思考に光明が差したその時だった!
「ひええええええ~!!!」
「イズサーン!」
「側溝内でガサガサ足音がしだしたお~~!!!!」
悲痛なちゅん助の叫び声が木霊した!
マズイ!マズイ!マズいだろ!
せっかくの反転攻勢の機に、よりによって作戦の肝となるちゅん助の身に危機が迫っているのだ!
ちゅん助がいくら素早いと言っても側溝内では逃げ場がない!
ましてや蓋で片側塞いでいるのだ、絶界を使えない状態の彼にとっては実質逃げ先は上方から這い出るしかない!
そうなったら
それは即、この作戦の失敗を意味していた…
「ぎゃああああ!きたああああああああああああ!」
第五話
その26 好機!危機!?
終わり




