太郎&花子
「さて、散々不真面目に議論しているこの会話形式だけど」
「不真面目はともかく、そもそも議論になっていたかなあ……」
「なっていたのよ。そんなことより、分かりやすさ的に一つ欠けている部分があったわ」
「欠けている部分? 知性?」
「違います。それは……名前よ!」
「名前?」
「そう。わざわざ会話文だけでつなげて展開しているのに、私とあなたの名前がない! これは分かりづらい!」
「まあ、言われてみればそうだけど……今さらでは?」
「うん、今さらよ。ノリと勢いで作ってただけだから、大して気にしてなかったけど。さすがに何回も繰り返してたら他のショートショートとは区別したくなったわ」
「なるほど。じゃあとっととつけてくれ。あと前に作った部分にもつけたら?」
「以前に作ったやつにつけると、ここの会話が意味不明になるからしません」
「面倒くさいんだな……?」
「チガウワヨー。というわけで名前。あなたは太郎で、私は花子で」
「いつの時代のセンスだ!?」
花子「もう決まったのでよろしく」
太郎「ひどい!? というか、これはもう小説と言ってはいけないのでは?」
花子「平気平気。TRPGのリプレイみたいなものよ」
太郎「その例えは伝わる人にしか伝わらないぞ。まあ区別がつくようになったのはいいことだけど」
花子「ちなみに人気の子供の名前は、蓮くんや翔くん、凛ちゃんや楓ちゃんなどらしいわね」
太郎「何故そっちでつけてくれなかった……」
花子「かぶったら可哀想でしょ。こんなギャグみたいな話し合いしているんだから、今時つけない名前でいいじゃない」
太郎「太郎くんにはかぶってもいいのか?」
花子「日本一の太郎とか足柄山の太郎とか精鋭ぞろいの伝統的な名前に何の文句が?」
太郎「反撃しづらい権勢を持ってくるのはやめてくれ」
花子「人気の名前は結構古風というか、和風だけど音律も含めて格好いいものが多いわね。字義に関しても言うまでも無し」
太郎「一時期キラキラネームというのがあったなあ」
花子「話題になっていたわね。あれは結局のところ子供がどう思うかだけど、名前の意味を聞く日って絶対来るから、しっかり答えられるようにしておいた方がいいわね。でないと子供の信頼度がゼロになる」
太郎「まあ、子供からしたら真剣に聞いているだろうからなあ」
花子「なお我々二人がこの名前になった理由は特にありません」
太郎「最低か!?」