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わたしを嫌いな角砂糖  作者: 赤の他人
8/8

ある日のこと

あぁ、死にたいなぁ。


その言葉ばかり頭に浮かんでくる。ぼくは呪われてしまったのか。ぼくは、今だけぼくじゃない誰かなのかな。


ぼくはひとりだらだらと青空の下を歩いていた。

周りを見ればせかせかと歩く大人の人。人、人。 みんな何を思って歩いてるんだろう。そんなに急ぐ理由ってなに?そんなかしこまって電話する意味はなに?

ていうか、2人並んで歩くひと多すぎな。



「ああー。講義が午前で終わっても予定なんかないし。しにたいなぁーー。」


クラスメイトと仲が悪いわけではないけど、女子が5人と奇数だからかだいたいぼくがはみ出る。今日も何人かはスタバだのレストランだのとぴょんぴょんしてるんだろう。いいなぁ。ぼくはどうして。



「しにたい」

お金が無いからどこにもいけないし、ネットで遊べる人を探すなんて都会民みたいなことぼくにはできない。お財布に1000円しかないのにぶんどられてぼくは山に捨てられそう。



山。樹海かな?


ピチチチチチ ピヨピヨピヨ。樹海とはいえ、死体がごろごろしてるわけではなくて寧ろ自然が広がっていた。カラスがカアと鳴いてるイメージだったけど、普通にかわいい小鳥の鳴き声がする。これじゃ迷い込んでも寂しくなさそう。寧ろ、帰りたくなっちゃうなあ。。


ああ、入り組んでる。道が道じゃない。くまとか出たらどうしよう。逃げられないよ。。

声を出そうかな。


「あーーーーーしにたいなぁーーーーー!」


えっ。

さすがに自分でも引いた。声を出そうとしてここでも悪魔の声がでちゃったよ。さすがになあ、やばいよなあ。


ドサッ

背後から鈍い音がした。だいぶやばそうな空気。きっと死体だ そうに違いない。野生の勘!

走りたいけど足が全然動かない。震えてどうしようもない。ああー誰だよ山に入ろうなんて言った奴。


ガサガサッ

「ひぃぃっ!!!」

さすがにこれには声がでた。ぜっったいに何かいる、くまさんか?鹿さんですか?え もしかして動く屍?!

どーーーしよーーーますます振り向けないし 動けない!!!

そういえば 鳥の声が止んだし……なんなら天気も悪くなってない?急に暗くなったよね…


でもさ、もしなんらかの動物だったとしたらよ、もうぼく襲われてるよね?さすがにもう死んでるよね?

あれ?大丈夫そ??振り返ってもいいですかー……



『あれっ かおる?何でこんなとこに』


………え?

めっっちゃふつーに声聞こえたけど… 誰?

ってか 『かおる』って誰だ ぼくは××なんだけど………人違いかな? いやもしかしてひとりごと説!


『あれっ かおる?何でこんなとこに』


………っっっ!?

ちょっとまて、さっきと同じ言葉じゃないか?

ぼくの頭はいかれちゃったかなあ…幻聴なのかなあ、薬物乱用は記憶にないよーー



『あれっ かおる?何で………

「ええっとすみません!かおるサン?じゃなくって ぼくは通りすがりの者で!」

さすがに3回目は怖くて聞きたくなかった。声の主が何者なのかわからないけれど…… たぶん………だよね。


『………ああ、やっぱりかおるは来てくれなかったかぁ。まあ、そうだよね だって…ね』


『かおるはさ、子どもの頃から一緒にいたから… なんでも分かってると思ってたのに………』


「ケンカ、しちゃったんだよね」


はっ??自分でもびっくりした。なに受け答えしちゃってるの?しかも、、なんだかそれをわかってるように……

知るわけないのに かおるなんて名前、ぼくは……


『そうなの。ケンカしちゃった。ほんとにくだらないことだったんだ 今思えばね。でもそのときはほんとに嫌だった。どうしてあの子と約束なんか……』


「△△、最近特にドタキャン多くなったよね」


もう、ぼくは多分ここから出られないんだ。△△が来るまで……来てもぼくは、もう…



『あーあ。かおる、さよなら。最後に来てくれてうれしかった さよなら。』


だから ぼくは かおるじゃない

言いながら振り返ってしまった。

その先には木の幹からぶら下がる人間の姿があった。黒い髪をなびかせ、黒いジャンパースカートから生える白い両腕両足は明らかに生きた人間の色じゃなかった。

ドサッ ガサガサッ と履いていた靴と持っていたトートバッグを落とし中身が散らばった。


「………あはは。まじか、やっとかぁ よかったね 死ねたね よかったじゃん……」

声が震えた。まぶたが重くなってきた。

さっきまで止んでいた鳥の声が急に聞こえてきた。しかも甲高くてうるさい。天気も良くなってて、日差しが刺さる。干からびそう。


腕がだらんと力が抜けたのを感じた。目も見えにくくなってきた。ぼやけた景色の向こうに、ゆらりと動くものがあった。


「あーあ 死にたいなあ」

ゆらゆら動くものは言っていた。

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