ばいばい また明日
「いつか、流れ星に乗りたい」
友達のリカが言った。
「流れ星?いいね。でもなんか、暑そうじゃない?」
わたしは思ったことを問うた。そうしたらリカは「いいよ 暑くても。寒くても。乗れたらうれしいもんね」
リカは屈託のない笑顔で言っていた。
「ふーん。じゃあ、乗ってみていい感じだったらわたしも連れてってよ」わたしが言うと、「うん。いい感じだったらね 覚えとく。」リカはそう言うとばいばいまた明日と去っていった。
__次の日の朝、救急車とパトカーのサイレンが混ざりあった不協和音と化した音が聞こえて目が覚めた。同時にお母さんがなにかを叫びながら階段を降りる音もした。
「なんだろう。すごく嫌な予感がする」
わたしは寝ぼけながらカーテンを開け、半分しか開いていない目を凝らしながら窓の外をみた。
「あ、?」
燃えていた。目の前の大きな家___友達の__リカの家が真っ赤な、オレンジの炎を吐いていた。ごおごおパチパチとリカの家が鳴いていた。
わたしは声が出なかった。
空いた口が塞がらない状態だった。下の階でお母さんがわたしを呼んでいるようだったけど、全く耳に入ってこなかった。
「あっ」
燃えるリカの家からひゅっとなにかが光った。そしてそれは空の彼方へ消えていった。
わたしはふと昨日のリカとの会話を思い出していた。
わたしは不思議と笑っていた。無意識に呟いていた。
「リカ、暑くない?いい感じだったらわたしも連れてってね。」
そのときやっとお母さんが早く降りてきて、逃げなさいと叫んでいるのが聞こえてきた。