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わたしを嫌いな角砂糖  作者: 赤の他人
2/8

赤黒い記憶

カリカリカリ ポキッ

カチカチカチ

カリカリカリ ポキッ


「んもう、なんですぐ折れるのよ」

わたしの筆圧が高いのか、0.3ミリのシャープ芯は何回も折れる。

普通に書いているはずなんだけど。


カチカチカチ

カリカリカリ ポキッ


「あぁもう!」

腹が立ったわたしはシャープペンを床に叩きつけた。 カシャンと小さな音がした。


そのとき、一瞬だけ背筋がゾワッとした。なにかが、なにか、生きている?いや、もしかしたらもう死んでいるかも?なにかがわたしの背中をじっと見ている ような気がした。


ふぅ、と息をついて床に転がったシャープペンを拾った。


椅子に座り直すとわたしはおもむろにシャープペンを解体した。

ミニ消しゴムカバーを外して、中の消しゴムを抜いて、逆さまにしてシャープ芯を出した。

それと一緒にくるくると巻かれた白い紙が出てきた。

わたしはそれを無言で開いた。


『あなたがすきです。わたしのお気に入りのシャープペンなので使ってください。ずっと、永遠に持っていて おねがい。愛してます。ずっと。』


元々白かった紙はくしゃくしゃになり、少し黒ずんでいた。黒のボールペンで書かれたその文字は大分掠れていた。


わたしは何かに取り憑かれたようにその文字を何回も何回も読んだ。


読みながらわたしは泣いていた。


ぽたぽたと鮮やかな___鮮やかな赤色の__


紙に滲んでいった。

何度目だろう。こうやって紙を汚すのは。あの日を含めて何度目だろう。


背中に柔らかな、でもじっとりとした視線を感じながら わたしは泣き続けた。


ぽたぽたと鮮やかな赤色の涙はいつしかわたしを飲み込んでいた。


そのとき、視線は後ろからではなく、部品と化したシャープペンから感じた。

気のせいなくらい小さな細い声が聞こえたような気がした。


「愛してます。ずっと、ずっと、永遠に。」

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