逆上がり
やってきた近所の公園は、懐かしかった。
「ここは、変わってないな」
「それに、君と遊ぶのも久しぶりなんだけどなー」
深月は含みのある言い方をする。
怒ってはないようだった。
「そ、そうだっけか?」
俺はとぼえる。
「学年が上になるにつれて、遊んでくれなくなったよねー。悲しいなぁ私は」
「ごめん!」
「いいよ。責めてるわけじゃない」
そう言うと、深月はクルクル回りながら、公園の中央に移動する。
その声と表情は笑顔だ。
「それでー、なにするー?」
「そうだなー」
俺は特に考えていたわけではなかっただけに、辺りを見回し、思いつく。
「先に逆上がりのやり方教えてもらっていいか?」
「逆上がり?」
「深月ちゃんは運動神経いいから出来るだろ?」
「出来るけど」と口篭る深月。
ちょっと、わざとらし過ぎたか。
さすがに、スカートでそんなことはしないよな。
と思っていたが、彼女は意外なことを口にする。
「光宙くん、出来なかったけ、逆上がり?」
そんなことを覚えているとは思わなかったため、焦る。
「いや、ほら、あれだよー」
「どれ?」
「み、深月ちゃんのが上手だからお手本を!」
と、苦しい言い訳かに思えたが、それを聞いた彼女は、頬を赤く染めて、両手で口元を覆い隠していた。
照れているのだ。
「そこまで言われたら、了承するしかないなー」
「お願いしまっす!」
背徳感に苛まれながら、俺達は鉄棒の方に移動する。
「じゃあ、行くよ?」
深月ちゃんが、両手を鉄棒に添えると、「ちゃんと見ててね」と呟き。
世界を回転する。
一瞬、彼女のヒラヒラが宙を舞い、待ち望んだ白の布地が露になる。
ぴっちりと肌に張り付いたそれは、先程の彼女の真剣な表情を思い出せば思い出すほど、興奮するものだった。
「ほへぇー、こんな感じだけど、どうだった?」
「すげえよかったよ」
それを聞いた深月ちゃんは、へへへ、と照れ笑いしていたのも、すごく興奮した。