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俺の日常にファンタジーが突き刺さってきた その18


■飯くらいゆっくり食わせてくれよ (建前)

・異世界4日目 7:20

--------------------------------------------------------------------


本日の朝飯は、ハムエッグならぬ肉エッグだった。


肉エッグ、チョーうまい。

さすがイノシシ肉。マジでうまい。


でも落ち着いて食えねぇ。

なぜならば。


[ひっつき狼:俺の右半身を覆うエドガーたん (ベッタァァァァ)]


ご覧のあり様だからだ。


もー、飯食ってる時にベタベタすんなよなー。

チョー食いづれぇわ。


つれーわー。マジ参るわー。

利き腕が使えねーわー。うへへー。


うへへー。うへへー。

そのまましばらくうへへーを堪能したった。うへへー。


で、エドガーの様子がおかしい事に気が付いた。


まず、まったく俺の方を見ない。

ベッタァァァァっとひっつき狼してるくせに、まさかのガン無視。ノールック俺。切ない。


つーか、どこ見てんだ?


気になってエドガーの視線を辿ってみると、

どうやらテーブルの上を凝視してるっぽかった。


じーっと一点を見つめ続けるエドガー。

そのままピクリとも動かない。


何だこの状況。


「どうしたエドガー」


声をかけると、ようやくこっちを向いてくれた。

で、首をコテンと傾げると


「ガウガウ」


”ごはん食べ終わった?”

って聞かれたわ。


「まだ食い終わってねぇぞ」


アゴの下をわしゃわしゃしならが答えると「くぅーん」って切なそうに鳴かれてしまった。

お耳もペタンと寝ちまってる。


何だコイツ。

かわいすぎかよ。


「どうしたんだ?腹でも痛いのか?」

「ガウガウ」


首をプルプル振るエドガーたん。

どうやら違うらしい。


あ、またテーブルの方を向いた。

と思ったら、またこっち向いた。


そんで何かを訴えるように、改めて「きゅーん」って鳴かれちまったわ。


あきらかに様子がおかしい。


もー。なんだよもー。

どうしたんだよエドガー。


こーりゃ、のんきに飯食ってる場合じゃねぇな。

そう決意し、テーブルの上にはしを置く。


と、その瞬間。

エドガーの目がキラリと光り輝いたのだった。


「ガウガウ」

”残り食べていい?”


お、俺の食い残し狙ってたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


「ガウガウ」

”今後はオレの番”


キッチリ根に持ってたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


昨晩ウィリアムに肉をぶんどられたのが、よっぽど悔しかったんだな……。

並々ならぬ決意を感じたわ。


そんなことをしみじみ噛み締めてると

鼻先で肉エッグの皿をツンツンしだした。


「ガウガウ」

”コレ、ちょーだい!”


そしてこのアピールである。


「ガウガウゥ」

”ちょーだい、ちょーだい!”


上目づかいのアピールなのである。


実にあざとい。

でもかわいい。


つーか、「ガウガウ」の合間に「きゅーん」って甘えるテクとか、どこで覚えてきたんだよオマエ。


ってか、そもそもの話なんだが

そんな小手先のオネダリが俺に通じると思ってんのか?


もちろん通じるに決まってるだろ (真顔)

ナイス判断だわエドガー。


約2秒で陥落した。


もー。しょうがねーヤツだなーエドガーはー。でへへー。


デレデレしながら、肉エッグの皿を持つ。

我ながらキモイとは思う。


とかやってたら、不穏な気配を察知した。


なんぞ……?


ソーッと横目で確認してみると

お耳をピーンと立てて、こっちをガン見中のウィリアムが居た。


まぁ、嫌な予感がしたよね。


んで、すぐに悟ったね。

あ、これは目を合わせちゃいけないパティーンのヤツだって。


でも、合っちゃうんだよなコレが。

横目で見てることに秒で感ずかれたわ。チクショーが。


で、まぁ。

そんなこんなで。


「ガウガウッ!!」

”オレも食いたい!”


思った通りの展開になった訳だ。チクショー。


お尻をフリフリさせ、今にも飛び掛かって来そうなウィリアム。

視線はガッチリと肉エッグに固定されてる。食う気マンマンである。


この展開にギョッとしたのはエドガーだ。

シュバッ!とウィリアムの方を振り向いたかと思うと、怒涛の勢いで威嚇し始めた。


「ガウガウッッ!!!!」

”ダメ!兄ちゃんコッチ来ちゃダメ!!”


「ガウガウッ!」

”オレも食いたい!”


「ガウガウッッ!!!!」

”ダメーッ!今度はオレなのッ!”


「ガウガウッ!」

”オレも食いたい!”


THE・平行線。

埒開かず。


でもまぁ、今回はエドガーの肩を持つんだけどな。

つー訳で、サクッと介入したった。


「エドガー、食っていいぞ」


告げた瞬間、皿の上から肉エッグが消えた。

残像すら見えんかったんだが。エドガーたんしゅごい。


で、その光景を目の当たりにしたウィリアムがピッキーンと固まった。


「ガ……ッ!」


相当ショックだったらしい。

口を半開きにしたまま、ワナワナと震え始めた。


[衝撃映像: わなわな震えるイケメン狼 (ショック状態)]


10秒くらいワナワナし続けてたぞ。


で、とうとう堪え切れなくなったのか

最終的には口をパッカーンと全開にして”あーーーーーーッッ!!”って絶叫してたぞ。


悲壮感MAXだ。

でもさ。お前昨日食ったじゃん。


対するエドガーは、チョーご機嫌だった。


「ガウガウガウッ!」

”ありがと!ご主人様!”


しっぽをヴァッサヴァッサ振り乱しながら、床の上でグネグネうごめいてたぞ。


[軟体狼写真:フローリングの上でくねくねダンスするエドガーたん (ぐーねぐーね)]


よかったなエドガー。

そしてドンマイ、ウィリアム。


ちなみに、シバ達はこんな様子だった。


”次はオレたちかな?”

”順番かな?”

”オレたちだったらいいな!”

”オレたちだったらいいな!!”

”オレたちだったらいいな!!!”


[シバファイブ写真: わくわくもふも密談中 (おしくらまんじゅう状態)]


ゴリゴリに期待されまくってたわ。

うん。まぁ、昼飯まで待っててくれな?


……。


こ、恒例行事にはなんねぇよな……?





■ウィリアムたんが強すぎる (メンタル的な意味で)

・異世界4日目 9:40

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朝飯を食った。

食器を洗った。

その後、ソファの上でまったりした。


時間にして30分は経過しただろう。

にもかかわらず。


ウィリアムが口が、いまだにパッカーンと開きっぱなしなのはどういう事なんだろうな。


[絶望系狼写真:口を全開にしたまま戦慄くイケメンさん (ガーンッ!)]


そんなにショックだったのか……?

でもさ。お前昨日食ったじゃん。


「順番だぞ。順番」


ちょっと強めに(たしな)めてみたところ


「きゅーん……」


めっちゃ切ない声で鳴かれちゃったわ。


なんだコイツ。

世界一かわいい狼かよ。


ヤベェ。全力で甘やかしたくなってきた。

ひっくり返して、全力で腹毛をわしゃわしゃしてやりてぇわ。


だがしかし。

ここで甘やかしてしまうと、ウィリアムの将来に悪影響を及ぼす予感がした。


さっきの肉エッグ争奪戦でも思ったんだが

ウィリアムはそろそろ『我慢』や『忍耐』ってもんを覚えるべきだと思うんだ。


ウィリアムのみだった初日と違って、今は他のペットも居るんだからな。


円滑な集団生活のためには

ゆずり合いや、思いやりの精神が絶対に必要だと思うんだよ。


要するに

いつまでも『オレが!オレが!』のジャイアンムーブじゃ困るって話なんだぞ。


そういう事だぞ、ウィリアム。


つー訳で。

いい機会なんで、ウィリアムに言い聞かせてみた。


「ウィリアムは、昨日食っただろ?」

「がう……」


「みんな欲しがってるんだから、ウィリアムだけ特別扱いするのはダメだろ?」

「がう……」


「次からはちゃんと順番守れるよな?」

「………」


最後だけ返事しねぇ。

あざとい。この狼、実にあざとい。


「約束できるだろ?」


更に念押しすると、スッと視線を逸られた。

すっとぼける気マンマンじゃねぇかよ、コノヤロー。


だがしかし。

今日の俺は、無視されたって諦めないストロングな俺なのだ。


お前が「がう」って同意するまで、とことん付き合う所存なり。


さぁ、覚悟はいいかウィリアム!


とか、盛り上がってみたものの

30分間無視され続けたところで、俺の心がへし折れた。


ふぇぇぇぇぇぇ……。

ウィリアムたん強しゅぎるよぉぉぉぉ……。


[あざと狼写真①: しれーっと無視中のウィリアム (視線は右上)]

[あざと狼写真②: しれーっと無視中のウィリアム (視線は右下)]

[あざと狼写真③: しれーっと無視中のウィリアム (視線は右)]


ふぇぇぇぇぇぇぇ……。

メンタル強しゅぎるよぉぉぉぉ……。


で、まぁ。

結局どうなったかっつーと。


「散歩連れてってやるから、機嫌直してくれよウィリアム……」

「ガウガウッ!!!」


こうなった訳で。

この後、むちゃくちゃ散歩した。


チクショー……。

チクショー…………。





■散歩帰りに待ち受けるもの (白目)

・異世界4日目 11:50

--------------------------------------------------------------------


玄関のドアを開けると

そこには、仁王立ちで待ち構える1匹の鬼が居た。


うひゃ。


思わず後ずさったわ。


「あら、おかえり」

「玄関で何してんだよ」


一列に並んでトコトコ家の中に入っていくペットたちを眺めつつBBAにそう尋ねると、間髪入れず返事が戻ってきた。


「帰って早々悪いんだけど、ちょっとお使いに行ってきてくれない?」


ちょっと意味がわかりませんね。


はぁ?お使いぃ?

営業中の店があるとでも思ってんのか?


頭大丈夫かコイツ。

とうとう脳みそまで槍に侵されやがったか?


と、思ったものの

ストレートに「ボケたか?」なんて言おうものなら、真っ赤に染まった槍に貫かれるが必定。


君子危うきに近寄らず。


つー訳で。

できる限りマイルドに指摘してやることにした。


「店、閉まってるんじゃね?」

「当たり前でしょ」


まぁ、殺意沸いたよね。


お・ま・え・が

お使いに行けって言ったんじゃねぇか!ゴルァァァァ!!!


と思ったものの、感情のままに掴みかかる訳にはいかない。

んなことしたら大変な事になるからな。


「大変な事」をもうちょい具体的にいうと、槍が飛んでくる。

それだけは、何としても避けたい所存。


つー訳で。

今回も、できる限りマイルドに指摘し直してやることにした。


「じゃあ、お使いなんていけねーじゃん」

「お願いしたいのは、買い物じゃないわよ」


だったら、それ先に言っといてくれねぇッスかね。

”お使い”つったら、普通は買い物の事だと思うだろうがクソが。


「じゃあ、何やらせたいんだよ」


逆にこちらから問いただすと

これまた間髪入れずにBBAからの返事が戻ってきた。


「七草がゆ作りたいから、七草摘んできてほしいのよ」


まさかの「野草摘み」

マジで予想外だった。


「お使い=野草積み」という謎の方程式。


少なくとも現代日本において「お使い」の中に「野草摘み」の意味は含まれてねぇわ。

分かる訳ねぇだろ。


まぁいい。要件は分かった。


文句を言っても槍が飛んでくるだけだし

ここは大人しく言うことを聞いて、パッパと摘んできてやろうじゃねぇか。


と、でも言うと思ったのかよバーカッ!!!!

流石に、抗議せざるを得なかった。


「いや、どこに生えてんだよ、んなもん」

「その辺りを探せば、きっと生えてるわよ」


生えてねーよバーカ!!

生えてねーから、毎年スーパーでパック入りのヤツ買ってきてるんだろうがバーカ!!


「生えてるとこ見た事ねぇんだけど……」


ありったけの不満を込めて答えると

さすがに思うところがあったのか、アゴに手を添えたBBAがこんな事を言ってきた。


「七草って元々は野草だったのよ」


そうだよ。その通りだよ。

よく分かってんじゃねぇか。


恐らく

「だからその辺に生えてる」

って言いたいんだろうが、そうは問屋が卸さねぇぞ。


元野草ってことは、現野菜ってことなんだよ。

つまり、その辺には生えてねぇんだよ。


「流石に無理あるだろ」

「まぁ、そうよね」


み、認めおったぞコイツ……。


だがしかし。

認めたからといって諦めた訳じゃないらしい。


BBAが更に喰らい付いてきた。


「でも探すだけ探してきてくれない?探して見つからないなら諦めるから」

「いや、生えてねぇって。探すだけ無駄だって」


そもそも何でそこまで七草にこだわるんだよ。

アレそんなに美味くねぇじゃん。


「こういう縁起物の行事は、パパが大事にしてたのよ」

「ん……?」

「だからできる限り、やってあげたいじゃない」


あー……。

そういえばそうだっけか?


んー……。

なるほどな。


クソが。今日チョー寒いんだぞ。


「おーい!もう1回散歩行くぞー!」


リビングに向かって叫ぶと、秒でペットが大集合した。

緩んだマフラーをしっかりと巻き直し、ドアノブに手をかけた。


あ、一応これだけは伝えとかねぇとな。


「多分、生えてねぇから期待はすんなよ」

「わかってるわよ。暗くなる前には帰ってきなさいよ」


……ん?

まだ昼前なんだが……?


とりあえず

「見つかるまで帰って来るな」

ってプレッシャーをかけられてることだけは理解できた。


風邪ひいたら絶対うつしてやるから覚えとけよコンチクショーが。



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