俺の日常にファンタジーが突き刺さってきた その15
■□■□異世3日目■□■□
■ぬるぬる
・異世界3日目 12:30
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”たびびと”がアクティベーションしたおかげ(?)で
”たびびと”に関する知識が、脳内にダバァっと流れ込んできた。
相変わらず”ぎんゆうしじん”と、”けものつかい”は詳細不明なんで
アクティベーションがキーと考えて間違いねぇんだろうな。
みんな気をつけろ!
JOBは生やすだけじゃだめだ!
アクティベーションしないと使えないぞ!
おし。これくらい情報開示しとけば大丈夫だろ。
「大丈夫」の部分を、より具体的に書くなら
コメントで俺を追い詰めるヤツは沸かねぇだろ。ってことな。
信じてるからなお前たち。
裏切ったらダメなんだからな。いいな (必死)
つー訳で。
折角なんで今回は”たびびと”について、掘り下げてみたいと思う。
流石に全部を紹介するのは無理なんで
まずは一番センセーショナルだったJOB特性について説明するぞ。
・【旅歩き】
一歩につき、最大で「スキルレベル×1メートル」の追加歩行が発生する。
うむ。意味分からん。
なので使ってみた。
それでは、早速だが【旅歩き】を使った時の俺の様子をご覧いただこうかと思う。
うっひょぉぉぉwwwwwww
何だコレェェェwwww
ぬるぬる動くじゃーんwwwww
我ながら浮かれすぎである。
そして、サッパリ意味不明。スマン。
気を取り直して【旅歩き】を説明するとだな。
歩く度に、ぬるぬる進むスキルだったぞ。
オイィィィ!説明になってねェェェ!!
ってツッコミは恐らく正しい。
でも、これ以外にどう説明しろってんだよ。
前代未聞のぬるぬる体験だったんだぞ。
圧倒的、新世界の幕開け感だったんだぞ。
マジで未知との遭遇だった。
それでも強いて他の言葉で表現するなら
”動く歩道の上を、歩くようなスキル”
って考えると分かり易いかもしれない。
要するに「歩幅以上に先に進む」スキルって事だぞ。
具体的にどの程度進むかっつーと
【旅歩き】のLvが1の状態で、1歩につき1メートルぬるぅぅぅぅっと進む。
そう。ぬるぅぅぅぅぅっと。
動く歩道の上を歩くときのフワフワ感とも、スケート靴で氷の上を滑るときのツルツル感とも違う。
なんとも言い表せない圧倒的なぬるぬる感。
1歩歩いては、ぬるーっ。
更に1歩歩いては、ぬるーっ。
てくてくてくてく。
ぬるぬるぬるぬるーっ。
中毒性が高すぎる。マジヤバい。
一瞬にして、虜にされたわ。
つー訳で。
なんだコレェェェwwwwwww
どういうことだよwwwwwwwww
キメェwwwwけどスゲェwwwwwww
とか調子に乗りまくって、ペットたちと公園を歩き回った結果。
”【旅歩き】のLvが2に上がりました"
”【旅歩き】のLvが3に上がりました"
……
”【旅歩き】のLvが10に上がりました"
"既定の歩数を満たしたため、たびびとのJOBLvが2に上がります”
正気に戻った時には、Lvが10まで上がってました (真顔)
つまり今の俺は、1歩につき最大10メートルの追加歩行を発生させることができます (真顔)
1分間の歩数が100歩として分速1km。スゲェ。
つまり時速60km。キメェ。
もうほぼ車じゃん。
普通に公道 (車道)歩けるわ。
正直、このレベルの機動力は求めてなかった……。
けど、世の中ってのはうまく出来てるものらしい。
蓋を開ければ、なんとまぁ。
この無駄に高い機動力が、ウチのペットたちにBAKAUKE。
ぬるぬる歩く俺に並走し
”オレもっと速く走れるぞ!もっともっとだぞ!”
はしゃぐウィリアムたん。
更なる速度UPを要求されてしまった。かわいい。
”オレも!俺ももっと速く走れるよ!”
大はしゃぎのエドガーたん。
こっちからも速度UPを要求された。かわいい。
”楽しいです!”
”楽しいです!”
”楽しいです!”
”楽しいです!”
”楽しいです!”
シバ達に至ってはご覧の有様だった。
みんなで思いっきり走り回れること自体が、嬉しくて仕方がないって感じだった。かわいい。
まぁ、全員ワンコ系だしな。
『走るの大好き!』ってのは、普通に納得だったけどな。
つー訳で。
今まで我慢させてた分、今後の散歩ではなるべく【旅歩き】を発動させようと決意した。
PS.
時速60kmで歩いていても、停止するときはスッと止まれる。
NO反動。NO衝撃。NO負荷。
普通に歩いてる時と全く同じ感覚。
マジのマジマジで、ピタァァァっと止まれる。
恐らくこれもスキルの補正 (?)とかなんだろうな。
そういや多属性の【ごほうび】 (※10メートルぴょんぴょん)も、脚部負担は一切ない(※尚、股負担)って話だったからな。
【旅歩き】にも、そういう不思議な力が働いてるんだろうなきっと。
スキルってホント、スゲェわ。
■生えてアクティベーションするという話
・異世界3日目 13:40
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さて、ぬるぬるで存分に現実逃避は出来たので
そろそろ厳しい現実に戻ろうと思う。
具体的に言うとだな。
この中山 (肉)をどげんかせんといかん。
ん?小山じゃないのかって?
そんな過去の話されても困るわ。
公園中を歩き回った。つったろ。
そら大量のイノシシともエンカウントするわ。
で、その度に、狼兄弟が瞬殺するじゃん?
で、その度に、小山 (肉)に肉が追加されるじゃん?
つまりはそういう事だ。
しかもだ。
最初の頃は、ドロップする度にブロック肉を小山に運んでたんだが
これが著しく散歩のテンポを害するんだよ。
で、お散歩大好きウィリアムたんがブチ切れですよ。
・イノシシをぶちころがす
↓
・仕留めたイノシシの首根っこに噛み付く
↓
・そのまま首の動きだけでイノシシを投擲する
↓
・お空へ旅立つイノシシさん
↓
・空中のイノシシに向かって【遠ひっかき】をブチ当てる
↓
・お空でブロック肉へと変わるイノシシさん
↓
・ブロック肉はそのまま落下
↓
・直下にあった小山に堆積する
というパワフル解決法を編み出してからは、更に小山の成長速度が増した。
そら、中山 (肉)にもなるわ。
つまり、ピンチを放置してたら大ピンチになった。ってことだな。
どうしてこうなった。
正直、放置して帰りたかった。
でもそういう訳にもいかねぇじゃん?
つー訳でだ。
ペット達と協力して、今回も補給兵のカバンに肉を詰め込むことにした。
もちろん俺も参加したぞ。
何たって敵は強大だ。
人手は多ければ多いほどいいはずだからな。
そう。例えシバ達から
”大丈夫ですから!”
”オレたちだけでできますから!”
と、必死の遠慮攻撃を食らおうとも、立ち止まる訳にはいかねぇんだわ。
もちろん狼兄弟の
”オレもっと速く走れるぞ!”
”オレもオレも!オレもだよ!”
というお散歩のおかわりを受けるわけにもいかない。
だから、服の裾を噛んで引っ張るのをやめなさいエドガー。
もうお散歩はおしまいだ。おしまい。
何より、中山を、大山にする訳にゃいかねーんだよ。
つー訳で。
おし、やったるで。
気合いを入れて肉を抱える。重い。早くもめげそう。ツラい。
でも、俺、ご主人様。
ここは、意地の張りどころ。
ハラハラした様子のシバ達に見守られながら、
どうにかこうにかカバンの中へ肉を収納する。
どんなもんじゃい。
俺だってやれば出来るんだよ。
でも次はもう少し小さいヤツを運ぼう。
妙な達成感を感じて、ホッと一息ついた。
まさにその瞬間。
事件が勃発したのであった。
”条件を満たしたため【ポーター】のJOBが覚醒しました。”
なんか4つ目生えてきたんですけど。
しかも【ポーター】て。
なんだよポーターって。意味分からん。
まぁいいや。
折角生えてくれた【ポーター】には悪いんだが、今お前にかかずらってる暇はねぇ。
どうせアクティベーションするまでは意味ないんだし、
後でゆっくり確認すっから、いったんスルーさせてもらうな!
あ、もちろん今すぐアクティベーションするってんなら話は別だぞ。ヘヘッ (フラグ)
そしたらちょっとくらいは相手してやんぜ。ヘヘッ(フラグ)
そんな超巨大なフラグをブチ建てつつ、この後もひたすら肉を運搬したった。
そらもうひたすらに。そしてがむしゃらに。
途中、シバ山が差し入れてくれたポーションで疲労を回復させつつ、みんなで20分くらい肉詰めを頑張った頃だったかな?
またしても事件が勃発した。
順調に小さくなっていく中山 (肉)
それをしみじみと眺めながら、額ににじんだ汗をぬぐう。
ほどよい疲労感を感じて、フーッと一息つく。
まさにその瞬間のことだった。
本日二度目のファンファーレが鳴り響いたのであった。
ぺけぺけぺっぺっぺーん。
マジかよ。
と思う間もなく、例の音声が頭の中に鳴り響く。
”これまでの運搬量が既定量を越えましたので、ポーターのJOBLvが1に上がりました”
どうやら『肉詰め=運搬作業の一部』と解釈されたらしい。
ほんの数十分でアクティベーションされてしまった。
がんばってよかった。
いや違う。多分そういう事じゃない。
”アクティベーションに伴い、JOB特性【まほうのかばん】が解放されます”
ま、まほうのかばんとは一体……。
相変わらずネーミングにパンチが効きすぎてる。
だがしかし。
そんなおふざけ系のネーミングとは裏腹に、【まほうのかばん】の性能はマジもんだったぞ。
・【まほうのかばん】
ほぼ無制限の容量を誇るかばん。
重量無効と時間停止のオプションが付いている。
スゲェ。
【まほうのかばん】スゲェ。
ちなみ、アクティベーションした時に脳内にダバァと流れ込んできた情報によると
収納したいもの指差して念じるだけでOKらしいぞ。
わーい。チョー便利。わーい。
だがしかし。
この場合、その便利さが問題だった。
こんなもん紹介してみろ。
補給兵2名のメンタルがガタガタになるわ。
だってアイツらのカバン、重量軽減もないし時間停止もないんだぞ。
だっつーのに、こんな完全上位互換のスキルなんて紹介しちゃったら、アイツらの立場がねぇじゃん。
シバ助とシバ太泣いちゃうじゃん。
そんなん可哀想すぎるわ。
もちろん【まほうのかばん】を使えば、肉詰め作業がチョースムーズに進むことは分かってる。
けど、シバ助たちを凹ませてまでやることねぇと思うんだよ。
つー訳で。
後ろ髪を引かれつつも【まほうのかばん】のお披露目は見送ることにした。
すると、まるで計ったかのようなタイミングで脳内にこんなアナウンスが流れた。
”ペットのスキルと同期することができるスキルが存在します。同期しますか?”
どうやら補給兵のカバンの接続先 (?)を、俺の【まほうのかばん】に変更することができるらしい。
つまり、実質シバ助とシバ太も【まほうのかばん】が使えるようになるってことだ。
当然、高速で「YES」を念タしたのは言う間でもない。
この後、5分とかからず中山の収納が完了した。
ホント、スキルってスゲェわ。