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泊地攻撃

~海上自衛隊・潜水艦「けんりゅう」~


「機雷戦用意」


 ふぅ、と少し息を吐いた後、艦長が静かに号令を発する。


「機雷戦用意」


 水雷長が復唱し、以下艦内に伝達される。


「機雷戦用意よし」


「以下事前計画の通り敷設」

「事前計画の通り敷設。了解」


「3番から6番、機雷、装填」

「3番から6番、機雷、装填」


「発射用意」

「用意」


「撃て」

「発射!」


 号令の後、シュボン。という音が続き、機雷が敷設される。


「3番、規定位置、ワイヤーカット」


 射出された後、有線誘導によって計画された位置まで自走した機雷は、ワイヤーカットにより艦から切り離されたされた後は完全に自律して行動する。


「4番5番6番も同じく」


「特異事象ナシ」


「再度3番から6番、機雷」

「3番から6番、機雷」


 さて、ここはライタル大陸の東岸沿岸。日本海沿岸に位置し、ライタル帝国海軍の南部方面艦隊の泊地があるコルファーの直近である。

 今やっているのは機雷戦……機雷を用いて行う戦闘である。

 機雷とは、海の地雷とも呼ばれ、近接した船を攻撃するものである。

 我が国は、第二次世界大戦後、米軍が大量に撒いた機雷によってかなりの苦労をした為、機雷戦は十八番とも呼ばれている。

 そもそも現在の海上自衛隊の紀元を辿ると旧帝国海軍の掃海部隊なのだから、当然と言えば当然なのだが、それは兎も角、機雷戦というのは敷設と撤去(つまり掃海や掃討だ)がセットになっている。

 両者はイタチごっこを続けており、掃海技術が日々進歩する一方で、機雷技術も進歩している。

 例えば、近年の機雷は、音紋解析によって攻撃対象を識別し、自身のソーナーによって命中箇所を選定、最も高い効果を得られる箇所を選定し、そこに攻撃を仕掛けるモノまである。

 今「けんりゅう」が使用しているのもそれと同じタイプの機雷で、それに加えてある程度の自走能力まで持っている。

 これにより、湾内に侵入しなくても湾内に機雷が仕掛けられるという寸法だ。


「敷設完了」


「了解、離脱する。二戦速。赤黒無し。取舵30。」


「とーりかーじ」


 今回の作戦は、ライタル帝国海軍南部方面艦隊の戦力がコルファーに存在する事を知った海上自衛隊は、事前偵察の結果から、機雷による湾口閉塞が有効であるとの結論を下した為に行われたものである。

 艦隊を撃滅すると言えば艦隊決戦だが、実はあまりやりたく無いものである。

 理由は簡単。殴り合いになるからだ。

 殴り合うという事は、彼に損害を与える一方で、我も損害を受けるという事である。

 艦艇も地上にある飛行機と同様、接岸して乗組員が上陸している場合、直ぐに最大能力を発揮する事は不可能だ。

 艦艇が飛行機と違う点は、完全に無力という訳では無い点だが、何はともあれ、出撃前に戦力を潰してしまうと後々艦隊決戦を行うとしても非常に楽である。

 その上、機雷の存在を知った場合、付近の海路は掃海するまで使えなくなる。

 つまり、機雷の作動後も暫くは閉塞作用が続くという意味である。

 これにより、湾から敵艦隊を出す事無く撃滅してしまおうというのが今回の作戦の意図であった。


 湾を閉塞して敵艦艇を拘束した後、やることと言えば決まっている。

 攻撃である。


 今回海上自衛隊は、「あかぎ」を主軸とする第一護衛艦隊群と、航空自衛隊からC-2Kの誘導弾発射母機版であるAC-2Kの協力を得て、対艦ミサイルを雨あられと降らせる予定であった。


「じゃあ、後は頼んだぞ、お空さん」


 艦長はこう呟き、ここぞという時の為に冷蔵庫に取っておいた缶コーヒーを飲み干した。



****



~護衛艦「あかぎ」・飛行甲板~


「TRIAINA 1, taxi to catapult number 1, then connect and report when ready」

「Taxi to catapult number 1, connect and report when ready, TRIAINA1」


 護衛艦「あかぎ」に搭載されたF-35CJが、管制官の指示の下一番カタパルトまで移動する。


 カタパルト・シャトルという機体を射出する為にカタパルトと機体を接続する為の器具の位置まで到達した後、マーシャラーの指示を受けてブレーキを入れる。

 その後後方にあるブラスト・デフレクターを立てて待機中の機体を高温の排気ガスから防護する。


 何やらボードに数字を書いたオペレーターがパイロットとやり取りをしている。

 このオペレーターはウェイトボード・オペレーター……つまりカタパルトの射出重量設定を確認する役割を担うオペレーターである。

 ここでミスが起きるとカタパルトによって十分な加速がなされず、海にポチャンである。


「TRIAINA 1, ready」


 その他の手順が終わり、ようやく射出準備が完了する。


「TRIAINA1, catapult number1 cleared for launch」

「Catapult number1 cleared for launch, TRIAINA1」


 エンジンの出力が上昇し、耳をつんざく様な爆音が発生する。


 カタパルト・オフィサーと呼ばれる責任者が、周囲の安全を確認し、発艦合図を射出担当者に送る。


 ソレを確認した担当がボタンを押し込み、大量の電力がカタパルト・レールに供給され、機体が一瞬のうちに加速し、そして……


「TRIAINA1, frequency change approved」

「Frequency change approved, TRIAINA1. good-day」


 万が一の事故対処の為に待機していたSH-60Lと、管制官、そして甲板作業員に見送られながら、F-35CJが日本海を駆ける。


「『オクトパス』へ、『トリアイナ1』、以後指揮下に入る」

「『トリアイナ1』、了解、進路300、高度5000でHPホールディングポイント

パパまで移動、待機せよ」


 その腹の中にJSM(統合打撃誘導弾)を抱え、出来る限り隠密に行動せんとするF-35CJの遥か上空を悠々と飛ぶ巨影があった。



****



~日本海上空~


 MC-2K。


 C-2Kが持っていた輸送能力の全てをミサイル攻撃に振り分けたその機体は、ステルス性なんぞクソ喰らえとばかりに大量の誘導弾を翼下に吊下し、本来なら物資を運ぶべき輸送室を全部潰して回転式のラックを収容したその機体の役割は、長距離火力による敵の圧倒である。


 精密火力による低空での継続的火力支援を目的としたAC-2Kとは異なり、MC-2Kは高高度から誘導弾を敵防空圏の外から大量に叩き込む事を主眼として配備されている。

 先程ステルス性なんぞクソ喰らえと書いたが、それもそのハズ、そもそもステルス性を必要としない機にステルス性を付ける程潤沢な予算を自衛隊は与えられていないのである。


 そんなMC-2Kから、大量の誘導弾が放たれる。


 それも一機だけでは無い。


 何十機という機体から二十発――もっと多いかもしれないが――程の誘導弾が放たれる。


 その誘導弾の名はAASGM-LR。


 その別名はスピア。


 その目標は――また次回。

現在『理想郷の警官』という作品も並行して執筆しています。

そちらも併せて宜しくお願い致します。

【こんな方にオススメ!】

・警察24時が好き

・行政警察活動が好き

・近未来ガジェットが好き

・管理社会に興味がある

・特殊部隊に興味がある

・管理社会を体制側から見てみたい

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