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有害海獣駆除

投稿が大幅に遅れ申し訳ございません。

新環境にやっと体が適応し始めたので投稿を再開させていただきます。

尚、長い間書かなかったおかげで日本語が不自由ですが、生暖かい目で御覧ください。

~東ムサシ海・国際航行警報発報海域・ムサシ王国海軍・汎用艦「アデン」・戦闘指揮所~


「ソナーコンタクト、診断中……水中の物体、Gと推測される」


 頭から兎耳を二本生やしたソナー員が、砲雷長に向けて報告を上げる。


「了解、やっと見つけたぞこのクソクジラ……艦長、対潜戦闘発令します」


「了解、総員対潜戦闘用意」


「「対潜戦闘用意!」」


  円形のCICの各所で確認の復唱が上がり、艦が戦闘態勢に入る。


「データリンク確立中……確立完了、以後本艦は日本国海上自衛隊、『あさひ』『たかなみ』『てるづき』『あたご』『ひゅうが』『ひびき』のJ-CECに加入します」


「こちら日本国海上自衛隊『あさひ』、Gをこちらでも補足した、現在ヘリコプターによる詳細位置の確認を実施中」


「了解……」


 さて、現在彼らは有害獣駆除を行っているのだが、こうなった経緯を説明させていただく。


 保野総理とフォルイが会談してから三年が経ち、両国は技術・文化交流によってその関係を深めつつあった。

 当初の課題であったムサシ王国の軍備近代化も予想以上に早く進行し、気付けば日本で建造された「ふぶき」型護衛艦のムサシ王国向け一番艦が就役し、F-35AMがブンブン空を飛び、機動戦闘車が平原を疾走していた。

 とは言え、ムサシ王国はその軍備の教育や生産、維持等々のかなりの面で日本側に依存しており、他の国から日本の属国呼ばわりされることもあった。

 そんな外野からの声を受け流しつつ、最初にその近代化した戦力が向けられたのは、隣国ではなくクジラだった。


 地元民の呼び名は『グレートホエール』日本側の呼び名は『オオマッコウクジラ』軍事俗称『クソクジラ』と呼ばれる大型のマッコウクジラが、そのクジラである。


 そのクジラは国王の乗った船を転覆寸前に追いやり、三年前に国王を漂流させた。

 その事実を知った海上保安庁が南西海域に国際航行警報を発令し、海上交通路を閉鎖した結果、莫大な経済的損失が出てしまったのである。


 これにブチ切れた与党の支持団体である全経連(全日本経済連合会)が全力で政治的圧力を政府に与えた上、ムサシ王国側からの要請もあり、結果として今回ムサシ王国海軍と海上自衛隊の合同作戦を実施することと相成ったのである。


 その規模は政治が絡んだため非常に大きなものとなり、汎用護衛艦「あさひ」「たかなみ」「てるづき」、ミサイル護衛艦「あたご」、音響測定艦「ひびき」、ヘリコプター搭載型護衛艦「ひゅうが」と鹿児島航空基地から飛来したP-1が海上自衛隊から、導入したばかりのピカピカの汎用艦「アデン」がムサシ王国海軍から参加していた。


「こちら『ブルーホーク』現在座標114-334付近にGと思わしき海中物捕捉中」


「了解、『ひびき』より全ユニットへ、114-334、深度182のGと思わしき物体、Gである可能性が高い」


「了解、司令本部より『あさひ』、目標攻撃せよ」



****



~護衛艦「あさひ」・CIC~


「艦長、アスロック発射します」


 無線員の報告を受け、副長が艦長に確認を取る。


「了解、アスロック発射用意!」


 艦長の指令のもと、砲雷長がマイクに向かって叫ぶ。


「対潜戦闘、目標、CIC指示の目標、アスロック攻撃初め!」


「アスロック攻撃始め!」


 水測員が復唱し、アスロック発射ボタンに手を掛ける。


「用意……撃て!」


 号令のもと、ボタンを押し込み、アスロック発射信号を前甲板のVLSに送る。


 VLSとは『Vertical Launching System』の略で、読んで字の如く垂直に発射する装置である。

 何を垂直に発射するかは任務にもよるが、一般的にはESSMやSM-6やSM-3、SM-2等の艦対空誘導弾や、07VLA、22VLA等の対潜ミサイル等を発射する。


 今「あさひ」が発射せんとしているのは22VLAだが、隊内では単にアスロックと呼ばれる。


 さて、そんな22VLAが轟音とともに大量の煙と炎を巻き上げて上昇し、あたかも甲板から龍が立ち上るかのような光景を作った後、目標地点まで飛翔し、目標地点に到達するとパラシュートを開いて着水する。


「アスロック、着水」


「目標諸元変わらず」


 CIC内に緊張と沈黙が流れ、機械の冷却ファンの音だけが静かに響く。


 その静寂を、情報表示版の警報が破る。


「アスロック、命中」


「戦果判定中……」


~東ムサシ海・国際航行警報発令海域・ムサシ王国海軍・汎用艦「アデン」・戦闘指揮所~


「あ~」


 ソナー員であるエンパー一等海曹が、兎耳を一瞬緊張させると同時に思わず声を漏らした。


「どうした?」


「恐らくですが、目標未だ撃破に至っていないですね……」


 直後データリンクにより目標情報が更新される。


「先程のアスロック攻撃、目標に損害を与えるも撃破に至らず、繰り返す。目標に損害を与えるも撃破に至らず」


「良く分かったな」


 砲雷長が感心して声を漏らすと、エンパーは首を振りながら返した。


「そりゃ水中でアレだけ悲鳴上げればソナー員じゃなくても誰でも分かりますよ……」


「本艦にアスロック発射命令が下りました」


 直後、通信員が報告を上げる。


「了解、アスロック攻撃始め!」


「用意……撃て!」


 コンソールのボタンを押し込み、アスロックを発射させる。


「……えっ!?」


 暫くして、エンパーが声を漏らし、目を見開いてフリーズした直後、哨戒機から司令部へと信じられない映像が送られていた。


****


~「ひゅうが」・艦隊戦闘指揮所~


「目標、『アデン』より発射されたアスロックを捕食!」


 司令部に設置されている情報表示版では、大きなクジラがアスロックをあたかもミジンコを食べるかのごとく捕食している映像が哨戒機からリアルタイムで送られていた。


「えぇ……」


 多くの士官や幕僚が困惑と共に見守る中、グレートホエールは海中へと再びその姿を消し、そして……。


「……魚雷爆発音」


 ソレっきりもう現れることはなかった。



****



 さて、こうして海上交通路の脅威を排除した海上自衛隊、ムサシ王国海軍だが、ここで簡単にムサシ王国海軍の紹介をさせて頂く。

 元々、日本の転移前は沿岸海軍として沿岸警備に従事していたのだが、日本がムサシ王国に提案した『日武相互防衛圏構想』に基づき、海上自衛隊と日本国の支援の下外洋海軍としての道を歩み始めた。


 その一歩目として、日本の各術科学校で教育を受けた将兵が持ち帰って来たのが汎用艦「アデン」である。


 海上自衛隊のふぶき型護衛艦の姉妹艦であるが、軍人に獣人が一定割合居るムサシ王国海軍の事情を考慮し、様々な改良が行われ、十分な訓練さえ受けていれば『誰が』使用してもフルスペックに近い性能を発揮出来るようにされていた。


 そのために国内の様々な分野から専門家が集められ、獣人でも人間でも使用可能なコンソールや椅子、装具等々の設計が行われ、その後民間転用されたが、コレは又別の話である。


 話を戻すと、現在のムサシ王国海軍が保有する外洋戦闘可能な船舶は一隻だけだが、これから更に十七年掛けて四個衛艦隊群を編成、運用する計画であり、その一個艦隊は防空艦1、汎用艦3で構成され、これを二個組み合わせて一個艦隊群として運用する予定である。

 その主な任務は日本―ムサシ王国間の海上交通路の警備、及び西日本海沿岸の警備、そして西太平洋の警備であり、有事の際には海上自衛隊と共に防衛圏の維持を行うとされている。


 その気質は自国の伝統と自衛隊の旧軍から脈々と続く伝統を良く言えばブレンド……悪く言えばごちゃ混ぜにした物で、多様性を尊重しつつ規則でガチガチに縛り、軍艦マーチを歌詞を改変して公式行進曲として制定する等、訳のわからないことになってしまったが、ムサシ王国国民がそれで納得しているのだから良いのだろう。多分。

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