表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/51

近代化の苦しみ

 祝☆ネット小説大賞一次突破……とはいかず、ものの見事に落ちました。

 はい、私の力不足です。今後精進してもっと面白い作品になるように頑張ります。

 ですのでこれからもこの作品と筆者を見捨てず、宜しくおねがいします。

 (これからが面白いのになぁ……無念)

 戦場音が響く中、僕ら第四中隊の面々は匍匐で突撃発揮位置まで移動していた。


「砲弾落下!」


「砲弾落下!」


 砲弾の空間飛翔音が響き、僕らは訓練通り声を上げる。


「その場に伏せぇ!」


 班長の声が響く中、僕らはじっと泥の中に伏せる。


 爆音が過ぎ去った後、また前進が指示され、倒れた味方の横を通り抜けながら何とか突撃発揮位置まで辿り着く。


「抜刀!」


 次の指示で抱えた銃に銃剣を取り付け、その後腰から短剣を取り出して銃と一緒に体の横から前に持っていく。


「突撃ニィ……前!」


 一気に体を起こし、敵陣地に向けて突進する。


 すると、味方の砲兵が制圧したはずの敵陣地から機銃掃射を受け、仲間が次々と倒れていく。


「ワアァァァァァァアア!!」


 無我夢中になって突撃するが、ピピー、ピピー、と電子音が響いた。


レフォル一等陸兵

シボウ

ドウタイ トウブ ミギウデ 他

HMG


「クソっ」


 そう呟き、地面に倒れ込む。


 暫くして状況終了の声が響き、倒れていた味方がよっこらしょと立ち上がった。


 ここ、ムサシ王国陸軍のスヴァーログ演習場で、自衛隊部隊を対抗部隊(赤部隊)とした大規模な演習が行われていた。


「やっぱり強いね~自衛隊」


 同僚のテルロンがグビグビと缶コーヒーを飲みながらボヤいた。


「そりゃあ、向こうとウチじゃ装備の馴染みも違うし、場数も違うからなぁ……」


 国王陛下と保野閣下との合意以降、我々ムサシ王国軍は近代化(という名前の未来化)にかれこれ四年程取り組んでいる。

 昨日まで藁人形相手に槍を構えていたのに、翌日身体測定が行われて訓練が体力錬成のみになり、一ヶ月後に漫画に出てくる様な装具と、自衛隊が抱えているものよりも新しい、ピカピカの小銃を与えられ、半年間基本訓練した後、カレコレ二年ほど掛けて、ようやく自衛隊と肩を並べて戦えるようになった。

 最終過程を卒業したときの陸上自衛隊の教官の顔は忘れられない。

 そんな近代化は陸海空軍にかけて行われ、海ではガスタービン推進の汎用艦が駆け回りディーゼル駆動の従来型軍艦を駆逐し、空にはF-35AMとE-2Mが飛び回り、ワイバーンはイベントに引っ張り蛸となっていた。


「よ~し、ここをキャンプ地とする!」


 中隊長の指示の元、今日の寝床である天幕テントが組み立てられる。


 明日は今日の反省と休息に費やし、明後日から状況が再開される。


 空気で膨らませたフカフカのクッションの上に寝袋を敷き、その中で眠りにつく。


「あぁ……眠い」


 隣でテルロンが寝言を言っているが、気にせずに眠りにつく。


 暫く微睡んでいると、班長の罵声が浴びせられた。


「レフォル!朝だ!さっさと起きろ!」


 目をつぶって開けると朝になっていた。そんな状況である。


「よ~し、全員揃ったな、かけあーし、前!」


 中隊長を先頭に、小隊ごとの塊で隊列を整え、声を合わせる。


「いっちに、そーれ、いっちに、そーれ、いーちにー、いちに、そーれ、いーちにー、いちに、そーれ」


 中隊全員で中央管理棟まで駆け足で移動する。


「折角車あるんだから使えばいいのに……」


 管理棟横の大きな体育館に入り、各自指示された席に着く。


「では、これより先の訓練のAARアフター・アクション・レビューを開始する」


「せめて日本語でお願いしたいなぁ……」


 ムサシ王国軍を近代化するに当たって、言葉の壁が二つあった。


 ムサシ語→日本語と、日本語→英語の問題である。

 自衛隊は転移前と転移後とで、無線規則の大筋を変更していなかったが故に、やっとの思いで日本語を習得したと思ったら英語も習得しなければいけないという可哀想な事態が特に空軍を中心として発生したのであるが、ソレはまた別の話。


「先ず、我々は特科の支援の下、第一小隊が障害物を除去し、残りのニ、三、四、五の小隊で突撃を敢行した」


 前方に設置されたスクリーンに、状況が表示される。


「しかし、知っての通り突撃は失敗した。何故か?」


 スクリーンには、敵陣地から伸びた命中弾を示す赤い線が兵士たちに突き刺さり、次々と死亡、又は重症の戦闘不能状態となっていた。


「理由は簡単、分隊支援火器を活用していないからである」


「あっ……」


 教範には「野戦突撃に際しては、原則、特科支援及び分隊支援火器等によって十分に火力制圧した後に敢行するものとし、特科支援終了後も分隊支援火器及び小銃等によって制圧を可能な限り持続させること」とある。

 しかし、今回我々はそれを完全に忘れていた。


「対抗部隊役の自衛隊曰く、『本当に二年間訓練したのか』『まさか火力制圧もしないとは思わなかった』『塹壕から出て立射位を取ったが、まさか無傷とは驚いた』『MINIMI手(分隊支援火器手)が可哀想』等々の有り難いお言葉を賜った」


 中隊長が額に青筋を浮かべる。


「何か質問は?」


 当然だが誰も手を挙げない。


「よ~し、中隊全員、コレより演習場内を駆け足で5回周回せよ!」


 中隊の全員が青ざめるが、中隊長は軽装甲機動車に乗ってメガホンを持ち、我々の後ろに立った。


「かけあーし前!」


「……い、いっちに!そーれ」


「一寸でも遅れたら轢き殺すぞぉ!」


「ひぃぃぃぃ!」


 駆け足は日没まで続いた。


「これで明日訓練かよぉ……」


 ヘトヘトになって寝袋に潜ると、また目を閉じたら朝になっていた。


 また昨日のように朝の点呼等々を済ませ、演習場まで移動していると、何やらピュゥゥゥゥゥゥウゥゥゥゥと空気を切り裂くような音が聞こえてきた。


「ほ、ほほほ砲弾落下!」


「え!?」


「さっさと伏せろ!」


 多くの同僚が立ち尽くす中、僕は大慌てで地面に伏せた。


 ピピー、ピピーと死亡を示す電子音が鳴り響き、中隊の半分以上が戦闘不能となる。


「何で!?何で!?」


 パニックに陥り、状況の把握が出来ない中、右手の林から分隊支援火器の掃射を受け、一人、また一人と消耗していく。


「あ、ああああぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!」


 我々第四中隊は、敵陣地に向けての攻撃前進中、敵の奇襲を受け壊滅した。



****



~ムサシ王国陸軍・スヴァーログ演習場・対抗部隊・赤第二中隊・第一小隊~


「やっぱり彼奴等、一発も撃ち返して来ませんね……」


 第二班班長の狩野三等陸曹が呟く。


「やっぱり奇襲に対応するのは未だ無理か……」


 そう呟きつつ、ポリポリと頭を掻くのは、アデン川会戦に於いて第十二連隊第三中隊第一小隊の防衛陣地で第二班の班長をしていた山内三等陸尉である。


「可哀想だから、あんまり虐めたくは無いんだけどなぁ……」


 彼はあの会戦の後捕虜収容所の管理に携わり、以前とは入学規定が変更になった幹部課程を経て、晴れて三等陸尉となっていた。


「状況終了、状況終了~!」


 無線から中隊付き無線手の声が聞こえる。


「え?なんで?」


 思わず素で聞き返してしまった。


「青部隊が赤部隊に殲滅された」


「ああ~」


 少しやりすぎたかと反省しつつ、部下に撤収作業に取り掛かる様に指示を下し、自身はムサシ王国軍の様子を双眼鏡で眺める。


「お、彼奴等悔しそうだなぁ……頑張れ頑張れ」


 ムサシ王国軍の近代化は、未だ始まったばかりである。

 ここまでのご拝読、ありがとうございます。

 ご意見、ご指摘、ご質問、ご感想、何でも結構ですので是非感想をお書きください!

 感想を頂くととても励みになりますので、皆様宜しくお願いします。

 設定集もありますので、宜しければそちらも御覧ください。

 ……最近レビューも欲しくなってきました(小声)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ