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楽しい外交交渉

~ヘリ搭載型護衛艦・「かが」~


「『ミサゴ』より『かが』へ、着艦許可を求む」


「『かが』より『ミサゴ』へ、着艦を許可す」


 二時間前に百里を離陸したCV-22Jが広い甲板の上に難なく着艦し、中から外交官御一行が降りてくる。


「ようこそ『かが』へ、外務省の皆さま」


 『かが』艦長の千歳一等海佐が外務省御一行を迎える。


「どうも」


 二十以上の予防接種を全身に注射された太田や、補佐官が艦長の案内の元、「かが」艦内へと入って来る。


「しかし……広い艦ですねえ……」


「ヘリコプターを運用していますので」


 通常の船よりは確実に長い廊下を歩き、「会議室」と書かれた特設の外交会議スペースに案内された。


「ここです」


 殺風景な廊下とは打って変わり、豪華とは言えないが繊細な装飾品が置かれ、その殆どが床や壁に固定されていた。


「えらい豪華な部屋ですね……」


「本省から職員と一緒に調度品も持って来て貰っていますので……」


「成程」


 因みにこの調度品もCV-22Jによって運搬されている。

 VLSを捨ててまで獲得したCV-22Jの運用能力がここで発揮されたのである。


「では、後三時間ほどお待ちください」


 海上自衛官たちが退室し、会議室内が外務省の職員しか居なくなった。


「えーと……」


 全員が着席し、一心不乱に書類を読んでいる。

 まさしく日本は書類で動いているのであった……。





****





~ムサシ王国・王城~


「良かった……」


 無線機の接続が切れず、やっとのこさこの日を迎えられた事に安堵するこの男は、後に「労働王」と呼ばれるフォルイ・ホーヴァンである。

 暫くすると、陸上自衛隊所属のCV-22Jが水平飛行態勢で飛来してくるのが見えた。


「あれだ」


 あっという間に上空にやってきて、ローターが回転し垂直離着陸態勢が整えられる。

 王城の芝生を焦がしながら着陸したその「空の巨舟」から機上整備員が降りてくる。


「フォルイ国王陛下御一行ですか?」


「はい、そうです」


 巨大なローターとエンジンが発生させる轟音下において、大声で意思疎通を図る。


「無線機は……アレですね、どうぞこちらへ」


 安全保障や農林水産、鉱物資源の担当者とフォルイ、そして勿論秘書官キャリローも共に機内へ入る。


「ではシートベルトを締めてください。離陸します」


 シートベルトを確認した機上整備員が操縦席に指示を送り、CV-22Jは離陸した。


「「「すごい……」」」


 各担当者が感嘆の声を上げる。


「これは……所謂オスプレイか……」


 自分が死んだ位の時に大論争を巻き起こしていたVTOL機であるオスプレイは、非常に独特な飛行機である。垂直運動時は直上、水平飛行時は水平と、翼とローターが一緒になって回転し、態勢を切り替えることができる。要するに「滑走路なしで、長い距離を飛べて、尚且つ高速で、大量の物資を運べる」そんな夢の飛行機なのだ。

 しかし、試験段階で事故が多発し、信頼性に欠けるとして大論争を引き起こしていたが、このCV-22Jは、飛行制御装置のソースの書き換えや、一部の独自改良を加え、極めて信頼性の高い機体となっていた。


 そうこうしている内に、巨大な黒い甲板を持った護衛艦「かが」が見えてきた。


「「「おぉ……」」」


 また各担当者が感嘆の声を上げた。


「『ミサゴ14』より『かが』へ、貴艦を目視で確認、着艦許可を求む」


「『かが』より『ミサゴ14』へ、貴機の接近を確認、着艦を許可す。三番に着艦せよ」


「『ミサゴ14』より『かが』へ、了解した。誘導信号を確認、これより着艦す」

 CV-22Jが「かが」に着艦し、中から興奮気味のフォルイ一行が降りてくる。


~ヘリ搭載型護衛艦・「かが」~


「ようこそ『かが』へ、ムサシ王国の皆さま」


 先程と同じく、艦長の千歳一等海佐が訪問者を出迎える。


「ムサシ王国第十三代国王のフォルイです」


「護衛艦『かが』艦長の千歳一等海佐です。お待ちしておりました」


 お互いに握手を交わすと、会議室に案内された。


 会議室に入ると、日本の外交官が待ち構えていた。


「日本国外務省、外務局の太田です」


「ムサシ王国第十三代国王のフォルイです」


 テーブルに座り、社交辞令の挨拶が済むと、早速本題に突入した。


「我が日本国は先ず貴国から国家としての承認を頂きたいと考えております」


 何が飛んでくるかと身構えていたフォルイ達は、思わずズッコケそうになった。


「は、はぁ…」


 この世界には国家の承認も糞も無い事を平和ボケ連中(日本国)に教えなければならないのか……。

 そんなことを考える一行だが、取り敢えず次に移る。


「わ、分かりました」


 その途端、日本側から安堵のため息が聞こえてきた。

 後ろに座ったキャリローが囁いてくる。


「この人たち……チョロいですね……」


「そんな事言うな……」


 太田が興奮気味で続ける。


「その他には、食料及び資源の輸入、この世界の情報提供、等を要求いたします」


 意外と少ない要求をメモすると、フォルイが口を開く。


「では、我がムサシ王国は貴国との安全保障条約の締結を要求いたします」


「……それは……国家の承認を主目的としたものですか?」


「いいえ、同盟です」


「もし呑まなかった場合は?」


「貴国の要求を全て却下します」


 日本側がざわつく。


「……他には?」


「インフラの輸出、工業製品の輸出、技術供与、以上を要求します」


「どうしても同盟を結ばないとダメですか?」


「はい」


 これは紛争に巻き込まれるパターンだと日本側の全員が理解していたが、最早どうしようも無かった。


「まぁ、日本語が通じるのは我が国だけですがね」


「……あなた方は恩を仇で返すのか」


 思わず感情的になった太田が口を滑らせる。


「……そういう事になります」


「……こちらとしても貴国とは友好関係を結びたい……いいでしょう、結びましょう、同盟」


 今度はムサシ王国側がざわついた。


「やっぱりチョロかった……」


 キャリローが現地語(ムサシ語)で呟いたが、日本側の人間には全く理解できなかった。

 今後この同盟が日本の命綱となり、日本を資源危機から救ったとして太田が異例の昇進を受けるのはこの後の煩雑な手続きを経て、七月に突入してからである。




****




~首相官邸~


 やっとのこさこの世界で「国家」として認められた旨の会見を終え、同時に危機管理センターの危機管理官に休暇を与える書類に判を押すと、保野総理は呟いた。


「ムサシ王国……食料、資源は有難いが何者なんだ、彼等は……」


 日本語が話せるだけでなく、必要な鉱物資源を言わなくても大体用意していた彼等に当時の官邸は驚きと感謝の念を抱いていたが、保野総理は畏怖の念を抱いていた。


~ムサシ王国~


 やっとのこさライタル帝国に対抗できる同盟国がやってきたと思ったら本体はインフラだった件について。一言で表現するとそんな状況である。


 先ずやって来たのが資源会社、次にインフラ関連企業、最後に国家機関だった。


 で、資源と引き換えに王都と各都市間の道路をアスファルト舗装してくれと要求した結果、二週間でそれを成し遂げたのである。


「……なんなんだ……彼等は……」


 日本に畏怖を感じ始めたフォルイであったが、今後その意識が首脳部に刷り込まれることになるとはまだ知らない……。

今後多分更新遅れます。

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