エピローグ
どうして君は 小さな手で
傷を背負おうとするのだろう
19××年○月○○日。
寒風が吹く上泉の街の病院で男の子が産声をあげた。
父の名は丹下以蔵、母は菊子である。
誰かの為だけじゃない 見失わないで
どうして僕は 迷いながら
逃げ出すこと出来ないのだろう
望むのは光射す日を 日を…
「やったぞ!男の子だ!武門の誉れだ!」
との以蔵の言葉に菊子は
「まだ丹下流を継ぐとは決まってませんよ」
と釘を刺した。
FIND THE WAY
輝く宇宙に 手は届かなくても
響く愛だけ頼りに
進んだ道の先 光が見つかるから
YOULL FIND THE WAY
菊子に釘を刺された以蔵はバツが悪そうに頭を掻いた。
「ところであなた、名前をどうします?」
「“らんぞう”にする」
「またどうして?」
「暫く前から夢枕に大男が立つようになってな、『俺は“らんぞう”と言う、今度貴方の息子として産まれる事となったので宜しく頼む』と言うんだ。だからこの子は“らんぞう”だ」
「字はどう書きます?」
「“ぞう”は俺の蔵を使えば良いが、“らん”はなあ」
との以蔵の言葉に菊子は病室に飾られた蘭の花を見て
「“蘭蔵”でいかがです?きっと優しく、そして強い男に育ちますよ」
と言った。
そんな両親の言葉が分かるのか、蘭蔵は泣くのをやめ、ニコニコと微笑んだのである。
君は言った 永い夢をみた
とても哀しい夢だったと
それでもその姿は 少しも曇らない
僕は言った 泣いていいんだと
ずっと傍にいてあげるよ
欲しいのは 抱き上げる手を 手を…
更に半年後、某県某市にて女の子が誕生する。
FIND THE WAY
言葉なくても 飛ぶ翼はなくても
乱す風に負けぬ様に
今誰より早く 痛みに気付けたなら…
「ねえあなた、この子の名前“瑠菜”にしない?」
「何故だ?」
「この子ったらね、私のお腹にいる時から、しきりに『アタシは瑠菜って言うの、今度約束を守る為に産まれる事にしたんだ』ってそれは嬉しそうに話すのよ、だから瑠菜で無きゃ可哀想よ」
と言う両親の会話を聞きながら、瑠菜は安らかな寝息を立てていた。
答えを出すこと きっとすべてじゃない
焦らなくて いいんだよ あなたも…
五年後・・・
「蘭蔵、今日から新しい門下生が入るぞ」
「アタシは瑠菜、よろしく」
「俺蘭蔵、よろしく」
FIND THE WAY
輝く宇宙に 手は届かなくても
響く愛だけ頼りに
進んだ道の先 光が見つかるから
FIND THE WAY
言葉なくても 飛ぶ翼はなくても
乱す風に負けぬ様に
進んだ道の先 確かな光を見た… YOULL FIND THE WAY
「大丈夫、すぐ戻るから・・・約束する」
四百年の後に約束は果たされた。
「天草の約束」了