女装趣味のギャルゲーの主人公に捕まりました
息抜き投稿
思い出したのは1年前。桜の花びらが舞い散る桜並木の下で、だった。
まず、最初に言っておくと、私の幼馴染は女装趣味の変態です。
女装趣味で、顔はお目目ぱっちりで鼻が高くて可愛らしい。4分の1クォーターなので肌はお人形さんのように透明感溢れてるし、瞳の色も黒寄りの藍色。光の角度によって変わる瞳は見てて綺麗。髪はウィッグで隠してるときの方が多いけど、地毛は綺麗なクリーム色。身長は175センチと高め。
なのに女装趣味。しかもその女装が女子校に潜入できちゃうくらいのクオリティだから驚きです。
ここまで言ったらわかるかな。この世界、ギャルゲーの世界です。
普通転生するならよくある乙女ゲーの世界でしょ! と夢の中で突っ込んだけど、当たり前だけど誰もなにも言ってくれないので寂しかった。
1年前、唐突に思い出した私は気絶した。思いっきり気絶。最後に見えたのは倒れる私に焦った幼馴染だった。
目を覚ました次の日、女顔負けの幼馴染がはらはらと涙を流してた。そんな幼馴染に思ったことはただ一つ。
なんで、もうすでに女装趣味に目覚めてるの……?
私の通う学校は中高一貫校の女子校。幼馴染が高校に入学してきてから物語は始まる。
ギャルゲーの主人公だった幼馴染が女装をするのは仕方なく、だった。確か理事長でもある父親に女子校でイジメがあるらしいからそれを確認してくれ、って理由。
ミステリー風味のギャルゲー。ちなみにイジメの真犯人は攻略対象である幼馴染だったらしいよ。つまり私。
……そ、そそそんなことしてないからね!? 私は健全な女子高生だからね!?
ちなみに私攻略のエンドは複数に分岐する。
まず一つ目は「嫌々ながらイジメの首謀者になった私を抱き締め慰めエンド」
ちょっと頭の弱かった私の両親が娘にイジメをさせ、良家の子女たちを高校から追い出していたらしい。真犯人、っていうぐらいだから暗躍していた私はバレてないのでお咎めなし。そうして幼馴染が来るまで何度も何度も両親の依頼でそれを繰り返す。それを幼馴染が優しく慰め、私はちょっと病みながらも幼馴染愛してる、ってなるエンドです。一番平和。
二つ目は「おまえがそんなやつだったなんて……残念だよサヨナラエンド」
そのまま。バッドエンドみたいなものである。いや、やだ、ごめんなさいと縋る私を蹴り飛ばし、ゴミを見るような目で捨てるエンドとも言う。誰得だよ。ギャルゲーなんだから、もっと男に需要のある終わり方しろよ。
三つ目は「そんな悪いことをする子はお仕置き、だねエンド」
ハッピーエンドなのかわからないけど、このエンドは恐ろしい。なんと暗い部屋でお腹をぽっこり膨らませ、笑顔を見せる私の姿がスチルとして出るのだ。怖い。
四つ目が一番怖い。その名も「そんな酷いことをする君はちゃーんと彼らの家の人たちに躾けてもらおうねエンド」
つまりアレだ。躾けてもらおう(R18)(複数)です。
後半二つは追加パックでR18のお話もお楽しみ可能です。どっちにしろろくなことないっていうか唯一のハッピーエンドも微妙にハッピーエンドじゃないよね。
いや、でも、私本当にイジメとかしてないから! 健全な女子高生!
まあ、でも幼馴染超怖いってなったから避けるよね。攻略されないように避けるわ。全力で。
それがちょうど1年前の話。
現在、目の前には女顔負けの女装趣味な幼馴染。
「ねぇ、どうしてそんなにボクを避けるのかな」
「わ、わー、久しぶり、小町」
超絶笑顔だけど目が笑ってないやばい。
幼馴染の名前は結城小町。変ななーまえ、って子供の頃にからかったのは懐かしい思い出。
不思議なのはボクっ子ってところ。ゲームの中の主人公は一人称が俺だったんだよね。女装してるときはワタシ、だけど。
「うん。久しぶり、瑠衣ちゃん」
「ねー、本当にねー。元気だったー? 私は元気だったよー。あ、用事があるんだったまたあとぐえっ」
首襟を捕まれて首が締まった。ぐるちぃ。
フェードアウトは許されないらしい。
「なんで避けるのかな」
「さ、避けてないよー。あ、ほら、小町ってば婚約者できたらしいし、幼馴染として適切な距離感を、ね?」
にっこりと可愛らしく笑う(ただし目の奥は笑ってない)小町に負けないぞ、と気合いを入れて笑顔を貼り付ける。
小町は最近婚約者ができた。婚約者ができた、とは小町がそのルートに固定されたということである。
母親からそのことを聞かされてひとりぱーちーしたのはいい思い出。もちろん虚しかった。
それでも避けてたのは、私にはその婚約者もイジメる設定もあったからだ。イジメなんてしないけど怖いじゃん。巷で噂のゲーム補正恐ろしいじゃん。
もうこれは避け続けて、二人が結婚するときに幼馴染ポジとしておめでとーってするしかないなと思いました。
「うん、だからなんで避けるの?」
「え、だ、だから小町に婚約者ができたからだってば」
「だから、なんで? 婚約者が婚約者のことを避けてるのはおかしいでしょ?」
「……………………?」
こんやくしゃがこんやくしゃ。こんやくしゃのゲシュタルト崩壊が訪れそう。あ、こんにゃく食べたい。
はて、と首を傾げ笑みを崩す私に対して、小町はとても可愛らしい笑顔で首を傾げる。
私より身長高いくせにそんな可愛い仕草しよって。かわいい。
あー、そういえば小さい頃の小町は可愛かった。とても男だとは信じられない愛らしさだったなー。
どうでもいいことが頭の中を巡ってる。
その間たっぷり5分間。小町もよく付き合ってくれたと思う。どっか行っててくれてもよかったのよ、と思う。
「婚約者と、婚約者、って、誰が?」
やっと出てきたのはそんな言葉。
私の言葉に小町は正解、とでも言うように笑みを深める。
「ボク、結城小町と、真波瑠衣、がだよ」
「……………………え?」
にこにこと楽しそうな小町。私の身体を嫌な予感という悪寒が走る。
婚約者、って、いつ? 私そんなこと聞いてない。え、本当? 最近小町にくっついてた攻略対象でも正規ヒロインポジのあの子じゃないの? え? あのよくある小さい頃に結婚しようね、の約束をして再会したあの攻略対象対象じゃないの? えーっと私小町を避けはじめてから徹底してたよね? 声も顔も真正面から合わせたことないよね? あれ? というか聞いてないよね、やっぱり。だってだって、お母さんそんなこと言ってなかったし、あれ? いやいやそんなことよりも
「わ、わたし、イジメとか関わってないから!」
「うん? 知ってるよ」
「よかった!」
R18ルートは消えた! これもそれも私の日頃の行い! よかった! いや、よくない! なんで私が小町の婚約者なの!?
「あの、私、婚約者はてっきりあの榛名さんだと……」
「……は?」
「ひぃいっ!」
すごい低音で「は?」って言われた。今まで男は父親とぐらいしか交流のなかった私はビビった。幼馴染は男ではないです。男の娘です。そんな男の娘の低音ボイスにビビった。
小町は後ろに後ずさりした私の顎を掬い、腰を掴んで自分の胸元へ引き寄せる。え、なにこの密着度。怖い。
顔を上げると、そこには人形みたいな顔がにっこりと笑ってる。あら、怖い。とても怖い。
「ボクが婚約者になってあんなに喜んでたのに忘れたの?」
「え?喜んでなーー」
『やったーーー!!』
私を抱き締める女装趣味の男が取り出した黒いなにか。ポチッとスイッチを入れると、そこから出るのは私の声。
……え? 私の声?
「な、なにそれ」
「んー? 盗聴器で録音した瑠衣の声だよ。最初から聞かせてあげる」
と、とうちょうき? ……盗聴器!?
混乱する私を無視して小町は黒い録音機? をいじり始める。そこから流れ始める私の声とお母さんの声。ある日の会話。
『ただいまー』
『おかえり、瑠衣。お母さん、貴女に言わなくちゃいけないことがあるのよ』
『なぁに? あ、このお饅頭食べてもい?』
『いいわよ。それでね、お隣の小町くんのことなんだけど』
『……ああ、うん。小町、小町がどうしたの?』
『ええ、その小町くんなんだけど、婚約することになったから、今度一緒に小町くんの家にご挨さ、』
『えっ、うそ! 本当に!?』
『え、ええ、本当よ』
『やったーーー!! ありがとう! 嬉しい! 愛してる! お母さん大好きーーー!!』
「ね、すごぉく喜んでるでしょ?」
確かに機械越しの私は喜んでる。でも、それは断じて私と小町の婚約を喜んでるわけじゃない。
小町が、婚約した事実に喜んでただけ! まさかまさかなんのイベントもこなしてない私が主人公と婚約するなんて誰が思う? 普通に考えて正規ヒロインと婚約したって思うじゃん!
あれは私ルートから完璧に外れた、やったー! のやったー! だから。決して小町と婚約したぞー、やったー! じゃないから。
「え、ゃ、あの、ちょっとあの、」
「なぁに? なにか問題でもあるの?」
ぐぐっと密着する小町の身体を押し返そうとするけど、力が強過ぎて離れない。
あ、あれ? なんでこんな力強いの?
「も、問題大アリだよ!」
「なんで? どこが?」
「どこが、って……」
どこがだろう?
……いやいやあるはず。あるはずだよ。がんばれ、私。流されるな、私。
小町の身体を押し返しつつ、私は考える。
困ることその一。
「わ、私、イジメとかしてないからね!? お仕置きとかないからね!!?」
「うん? イジメに瑠衣が関わってないことは知ってるよ。それ関係でお仕置きはないかなぁ。……俺を避けてたからお仕置きはあるけど」
「え? 最後聞こえなかった」
「なんでもないよ。それで? イジメでお仕置きはしないけど、それでも問題あるの?」
うん、ある! たぶん!
困ることそのニ。
「ハーレム男の彼女とか嫌!」
「ハーレムとか作ってないよ。瑠衣が誰をボクのハーレムだと思ってるのか知らないけど。そもそもボク、女としてしか見られてないよ」
「ウソだ〜! だって榛名さんは知ってるよね?」
「ああ、あの女……チッ」
「え、舌打ち!? 舌打ちした!?」
なんかいま聞き捨てならない音が聞こえた!
だって、いまチッって! 舌打ちが!
ギョッとしながら私の腰の腕を退かそうとするけど、なかなか取れない。うぐぐ、なにこの力の強さ。可愛い顔しやがって!
思いっきり睨むと、小町はにこっと可愛らしく笑う。小町は笑うとえくぼが見えて可愛い。
可愛いけど、さっき舌打ち……
「なんでもないよ。舌打ちしてないよ。榛名はボクが男だって知ってるけど、ひとりだけじゃハーレムにならないでしょ?」
「私まで好きになったとしたら、それはもうハーレムでは?」
「は?」
「え?」
「瑠衣はボクのことが好きでしょ」
「はぁ?」
なんの勘違いしてるの、この女装趣味。
余計にハーレムになってんじゃねーか。余計にこの変態の天下になってんじゃねーか。
「私、女装趣味は無理!」
ちなみにこれ困ったことその三。
「……ハァ?」
「ぴっ!」
頭上からひっくい声が聞こえてビビる。
え、なんでそんな怒るの? 超怖いんですけど。ビビりまくりなんですけど。
「誰のために俺がこんな格好してたと思ってるの?」
「えっ、あの、一人称……」
いきなり豹変した目の前の小町にぷるぷると震える。
あ、あれー? こんな小町、私は知らないぞ。これはやばいと思って、いままで以上の力で腕の中から逃げ出そうとするけど、軽々と抑え込まれる。
ひぇっ、やばい。どうしよう。
あ、あとなんかお腹に硬いものが当たってるぅ……えっ、なにこれ。
「今時ボクなんて一人称使う男がいると思ってんの?」
「いや……あの、とりあえず、あの、お腹になんか、」
「うん、俺、男だから」
「みぎゃーっ!」
今ゾワッと鳥肌立ったー!
「いやーっ! 気持ち悪いぃぃい!」
「うっさい。犯すよ」
「……」
こわい。小町が変態だ。ウワァ。
犯すって……ドン引きです。
ど、どどどどうしよう。えーっとえーっと、えーっと。
「ふふふ、かわい」
「……うーっ」
「怒った顔も可愛いよ、瑠衣」
「なんでこんなことするの! 泣くよ!」
「瑠衣が俺を避けるのが悪い。あと泣いた顔は泣いた顔でゾクゾクするから泣いていいよ」
変態だ!
「俺が好きで女装なんてしてると思ってたの? 瑠衣はめでたい頭してるんだね。というか馬鹿なんだね」
「うぐっ、」
「瑠衣が言ったんだよ。小さい頃、俺が男の格好してるのは変だって。泣きながらさァ。だから、しょうがなく女装してたのに。ハァ? 今さら女装趣味が無理とかふざけてんの? 死ぬの? 俺と一緒に死ぬ?」
やべぇ、マジだ。目が据わってる。
えーっと、小さい頃にそんなこと言ったっけ? 全然覚えてない。物心ついたときには小町はすでに女装してた気がする。
「あ、あの、可愛いですヨ?」
「当たり前だよ。女に見えるように努力してるんだから」
「……やっぱホ」
「それ以上言ったら本気でベッドの上に連れてく」
口は災いの元だね。お口をチャック。
うん、でも、同性愛の人間じゃなかったんだね。てっきり同性が好きなのかと思ってたりした時期もあった。
中学の頃とかね、モテモテで男にも女にも言い寄られてたから。あげくの果てには男にストーカーされてたから。
中学の違う私は関わりたくないから私の家に来んなと思ってた。
そんなこと考えてる場合じゃなかった。考えなくちゃ。
私の貞操が危機なことについてと、どうしたら婚約を破棄できるか!
「わ、私、婚約とか無理」
「無理じゃないし、破棄なんてさせないよ。というか、破棄するなんて言うなら破棄できないようにするけど」
「……えっと?」
「まあ、具体的には瑠衣をベッドに縛り付けて、泣いても叫んでも子宮がお腹いっぱいになるまで子種注ぎ込んで子供孕ませて、変な考えが起きないように当分は部屋にいてもらうとか、いっそのこと一緒に死ぬのも一つの案だよね。その時は来世で一緒になるよ」
「無理じゃないです。破棄しないです」
「だよね」
想像したら普通に「そんな悪いことをする子はお仕置き、だねエンド」の私だった。
そんなエンドは望んじゃいない。
そんなことになったらなんのためのイジメ、ダメ絶対なのかわからない。そんなバッドエンドお断りですから!
そして心中エンドとかないから! 私は青春を謳歌するんだい!
「ああ、よかった。瑠衣、瑠衣。俺の瑠衣。もう俺のこと避けないよね」
「えっ、えぇっと、私、本当に小町の婚約者なの? 勘違いじゃなくて?」
「俺が親父に頼んだんだから間違いなんてあるわけないよ。瑠衣のこと手に入れるために女子校にまで潜入してさァ。瑠衣と同じ教室でじっくりと瑠衣のこと観察できたのは楽しかったけど。夏とか制服の下から下着透けてたよ。すっごい眼福だった」
変態だ。変態がいる。
あとぐりぐりと硬いのを腰に当てるのやめてください。感触が、感触がぁ。
あと私の腰に巻きついてる手が私の太ももなぞってるんだけど。今、貞操奪われる何秒前ですか。
「わかった。婚約者っていうのはわかった。とりあえず落ち着こう。席に座って話をしよう。本当。というか私の部屋から出てカフェに行こう、カフェ」
「えっ、なんで?」
「なんでって、未婚の男女が二人きりでこんな抱き合って部屋にいたらまずいでしょ」
しかも私の部屋で、っていうのが嫌な予感しかしないよね。
なんとかしてベッドから離れなければ。
それかお願いだからお母さんかお父さん帰ってきて。娘の貞操の危機だから二人で結婚記念日なんて祝ってる場合じゃないから。娘の処女膜開通記念日になっちゃうよ。
「大丈夫。今日は既成事実を作ろうと思ってきたから」
「こ、小町くん? 落ち着こ? 婚約者だよ? 既成事実はいらないよね? 大丈夫だよね?」
「でも婚約破棄とかされたら無理だし、今のうちに合法的に処女もらっとくのが一番いいかなって。今日安全日だし、中に出しても妊娠しないと思うよ。俺は瑠衣が妊娠してもいいけど」
にこっと笑う美少女に貞操の危機がビンビンします。
なんで私も把握してない安全日をこいつ知ってるんだ。怖い。
そういえばこいつなんで盗聴器なんて持ってたの? あれ、流されてたけどおかしくない?
……逃げねば。
「小町、お願い。無理、今日は無理」
「じゃあ、明日?」
どうしてそうなる。
「私、結婚までは処女まもるって決めてるから、むりです。本当やめて」
「えー、やだ」
「いやほんとかんべんして」
「……俺の頼み聞いてくれるならいいよ」
「聞くから、既成事実はやめてくださいお願いします」
「よかった」
そう言って小町が私の後頭部を撫でる。
よし、よし、いいぞ、私。よく考えよう。今の小町は爆弾。一歩間違えたら私の貞操が吹き飛ぶと思え!
というか、それにしてもえ、小町って私のこと好きなの? そんな素振りなかったけど。避けてるときになんか文句いうものでもないし。
なんでよりによって私なんだろ。攻略対象の榛名さんでいいと思います。可愛いし、料理上手だし。
ちなみに私の料理の腕は壊滅的です。分量通りに作ってもスミが出来上がる。ギャルゲーの私がそうだったのでゲーム補正と思われる。こんなところで補正は働かないでほしい。
「まず一つ目はもう俺を避けないこと」
「え、一つ目って何個あるの?」
「たくさん」
しまった。選択を間違えかも。
楽しそうな笑みを浮かべる小町を見て逃げ出したい衝動に駆られる。
だけど悲しいかな。小町は私の身体をガッチリホールド。逃げられない。
「二つ目、1日1回キスマークつけさせてもらうから」
「きすまーく」
「キスマーク。これからあの学校合併して、共同高校になるからマーキング」
「……聞いてない」
「うん、今言ったからね」
え? は? ん?
私の頭の中が疑問系で埋め尽くされる。
えーっと、この世界ギャルゲーの世界であってるよね? 女装男子小町が主人公のギャルゲーだよね? 舞台は女子校で、ちょっとイケナイ恋愛が売り文句だったよね?
なんで合併して共同になっちゃうの?
「い、いつから?」
「決まったの? 去年の秋かな。その頃に学校でのイジメ問題の真犯人もわかって、イジメ問題の原因が女子校っていう閉鎖空間自体にあるってわかったから、隣の男子校と合併することになったんだ」
「………………」
イジメ問題が解決してたのにも驚きだし、理由が父親に命令されて、とかじゃないのもびっくりだ。
な、なんかおかしい。なんか、じゃない。だいぶおかしい。
いやでもここはR18エンドから逃げられたことを喜ぶべき? あっ、だけどこいつがなんかR18思考だった! まだ逃げられてない!
「で、三つ目は俺が十八になったら籍をいれることね」
「せき……せき? 籍!?」
「うん、つまり瑠衣の名前は真波瑠衣じゃなくて、結城瑠衣になるってこと」
つまりそれって結婚では!?
「俺の誕生日に籍入れよう。で、十八の俺の誕生日には瑠衣の全部を頂戴ね。ああ、断ってもいいよ。その時は、ね?」
ぐりぐりとお腹に押し付けられるアレ。
つまり、つまりはそういうことですね?
断っても断らなくても私の貞操は奪われると。それが今か二年後ってだけじゃん。
考える。私は考える。
頷くしかないことはわかってる。というか、小町は大財閥の跡取り息子だし、女装しなければ普通に美青年だしいいこと尽くしの好物件なんだと思う。
だけどね、だけど、誰がこんなちょっと思考のずれた男と一緒になりたいと思いますか!
幼馴染としての情はある。小さい頃は「るいちゃん、るいちゃん〜」ってヒヨコみたいに私の後ろにくっついて歩いて、大きくなっても「瑠衣、瑠衣〜」って馬鹿の一つ覚えみたいにひっついてきた小町。
そんな小町があんなちょっと頭のおかしい思考回路をしてたと誰が思いますか! 怖いわ!
しかもいずれはハーレム作り上げる可能性が高いんだぞ。つまり愛人とのキャッツファイト。ごめんである。
なので、私の答えは一つ。
「わかった。小町の言う通りにするから、今は、無理」
「よかった。瑠衣、だーいすきだよ。俺の可愛い可愛い瑠衣」
タイムリミットの小町の十八の誕生日までに他の攻略対象に小町を押し付ける!
高校が共同になろうが関係ない。男でも女でもいい。小町を押し付けて、なおかつ私の未来の旦那さんも探す。
ハーレム男なんてクソ食らえであります!
真波 瑠衣 (まなみ るい) 難易度★★★
ゲーム時:主人公と幼馴染ポジのサポキャラであり隠し攻略対象。全攻略対象を攻略することで攻略できるようになる。それまではサポキャラであり、ラスボス。父親に命令され、苛烈なイジメを行なっていた。ツンデレ世話焼き幼馴染。ただし料理の腕は壊滅的。瑠衣を落とすにはまずはスミ料理を食べられることが第一条件。そのためには主人公のパラメーターの健康をマックスあげしなくちゃならない。
本編:ただの苦労人。スミ料理辛い。最近スミ料理を食べても無事な自分の胃が怖い。その時の流れと勢いで発言して、あとから厄介なことに巻き込まれるタイプ。前世ではギャルゲー乙女ゲーばっちこいの暇人ゲーマー。
結城 小町 (ゆうき こまち)
ゲーム時:主人公。イジメ問題を解決してくれと父親に頼まれ、女子校に女装して潜入。次々と女を落とす。女子校ではミステリアスな美女ポジ。最大で六人のハーレムが作れる。
本編:初恋拗らせた女装男子。うんと小さい頃に「男の子の小町となんて遊びたくない!」と瑠衣に言われて女装するようになった。本人は覚えてなかったことを、実はとても怒ってる。瑠衣が死ぬほど好き。瑠衣の家と部屋には盗聴器と監視カメラがついてる。瑠衣の私物部屋がある。その中でもレアな宝物は瑠衣の初潮が始まった時のパンツ。ストーカーで変態。瑠衣以外の女子はジャガイモに見える。頭の中は大抵R18。
榛名さん(はるなさん)難易度★☆☆
ゲーム時:小さい頃「将来結婚しようね」の約束をした正規ヒロイン。少し天然なところ以外は非の打ち所がない美少女。父親に虐待されてた過去がある。
本編:実は転生主。小町にもうアプローチ中。