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「『下』の世界の入り口」


第3話「『下』の世界の入り口」

…長い時間が経っていたかもしれない…。何故ならルシフェルが目覚めるとそこは天界では見たこともない景色が広がっていたからだ。暗く、あるのはゴツゴツとした岩ばかりで、岩からは火を噴いていた。そしてひと気もなく…いるのはルシフェルただ1人だった。

『…一体…ここは……どこだ?』

ルシフェルは呆然となっていた。さっきまで自分はガブリエルや他の天使が見守る中、広場でミカエルと剣の稽古をし始めようとしていた…その広場や人々の姿は…そして光はどこにもない。

チリーン…チリーン…

突如背後から聞こえてきた鈴の音にルシフェルは直様後ろを向いた。後ろにいた者を見た時、ルシフェルは驚きを隠せなかった。頭には幾重にも伸びる角を生やし、布で隠された顔からは表情が分からない。またルシフェルが今まで見たことがない奇怪な格好…そして大きな鏡を持っていた。よく見れば鏡を持つ真っ白な肌の手の甲には鱗が見えた。その奇怪な格好をした男にルシフェルは一時言葉が出なかったが、直ぐに目を細め、口を開けた。

「お前は一体何者だ?まさかあの時の『声』の主はお前なのか?」

ルシフェルの質問に答えは無かった。男はただ静かにルシフェルを布から僅かに見える黒い瞳で見つめているだけだった。その黒い瞳には光は無く、ルシフェルは一瞬身震いしてしまった。するとまたルシフェルの耳にあの『声』が聞こえてきた。あの時…天界で突如自分を苦しめたあの『声』だ。

ーーお目覚めですかナ?ルシフェル殿…いや天使長ルシフェル殿!ーー

「…ッ!どこから話しかけている…あの者はお前の差し金か…⁉︎」

すると『声』は不気味に笑い出した。

ーーハハッ!私の姿ガ見エないですト?ほら、あノ子の持ツ鏡をよク見て下サいナ…ーー

馬鹿にしている様な声にルシフェルは目を細めながらも、『声』の言う通り、鏡を覗いた。

鏡を覗いた瞬間ルシフェルは青い宝石の様な眼を見開いた。何故なら映っていたのは彼自身では無かったからだ。

ーーふフふふ…改めまして…始めまして、天使長ルシフェル殿?ーー

そこに映っていたのは、鏡を持つ男と同じ様に奇怪な服を着た…この世の者とは思えぬ程に肌が真っ白な男だった。頭から生える角は長く鋭く、男の怖ろしさを増幅させていた。ルシフェルは自分の身体が微かに震えているのを感じながらも鏡の中の男に対し口を開けた。

「お、お前は一体何者なんだ…ここは一体何処なんだ?そして…どうして僕の名を知る…そしてどうして僕をここに連れて来たんだ…!」

すると男は血の様に紅い目を細め、含み笑いをした。

ーーふふフふふ…まあそう声を上げなクても良いではナいですか?天使長たるもの【主】の部下…冷静でいなイといけないでハ無いですか?ーー

小馬鹿にした様に笑う男に対し、ルシフェルは睨んだ。するとその様子を見た男はやれやれといった顔をした。

ーー面白くないお方だ…頭のお堅い貴方に分かりやすくお伝え致しましょう…ここは貴方の住む天界の『下』にある世界なのです…私は『魔界』と呼んデいますガね…ーー

「魔界…?」

ルシフェルの言葉に男は頷いた。

ーーそうです…魔界です……こんな世界があルだなんテ知らなかっタでしょう?ーー

ルシフェルは頷いた。【主】にミカエルと創造されてから、ルシフェルは色んな事を【主】から教わった。天界がどんなに素晴らしい場所か、自分たち天使には各自役割があり、それと共に生きていく事……だが考えてみれば、【主】は自分たちの足元に何があるかなど一度も言ったことは無かった。言われなかった為、ルシフェルは疑問には思いもしなかったが、言われてみればそうだった。すると、それを見透かした様に鏡の中の男は話を続けた。

ーー絶対の存在である【主】がこの『魔界』を知らない訳がない…右腕たる貴方、それだけでなく数多くの天使ニさえ隠スもの……私はソれを貴方に見てもらイたいのです…それが私ノ目的ですーー

男の声が自分の耳に入ってくるたび、ルシフェルは自分の心臓がどんどんと高鳴っているのを感じた。

『私は【主】に尽くし仕える身…なのに、【主】が私だけではなくミカエルにさえ隠すこの場所…一体何があるというんだ…』

ルシフェルは自分の身体が微かに震えているのを感じ、そんな自分に驚いた…未だ見たことがないものに対し恐れているのか、それとも……。そんなルシフェルを見て男は笑みを見せた。その笑みは先ほどの笑みではなく、もっと暗く歪んだ笑みだった。その笑みに気づかぬまま、ルシフェルは口を開けた。

「見せてくれ……この魔界というものがどういうものか…【主】がどうして私に隠している真実を知りたい…」

冷や汗をかきながらルシフェルがそう告げると、男は口を開けた。

ーー了解しました…貴方に真実を教えて差し上げます…天使長ルシフェル殿ーー

男は今まで閉じていた眼を開いてそう言った……その目は血の様に赤い鮮血の赤色だった…。






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