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プロローグ
「弱い人間だから、弱い心を持っているから自殺なんて考えに至るのだ」
僕は、そうは思わない。強い人間でなければ、自殺などできないのだから――僕であれば、自らで自らを殺すなど、絶対にできない。
「ハハ……なんだそれは? 自殺者を崇めているのか?」
それとも自殺を薦めているのか――彼は言う。
自殺も立派な殺人だ。僕は、彼らに殺人を薦めるという、愚かな行為をする人間ではないと思っている――自覚している。
「自殺が殺人とは、中々いいことを言うじゃないか」
彼は笑った。
笑われてもいい。残念ながら、僕の考えも彼の考えも、この物語においては、無意味というほどに関係ないのだから。
無関係なのだから。
無関係で、無縁で、他人事なのだから。
自殺。
自殺なんてものは、他人事なのだから。