後日談
窓の外を見れば満開の桜と私が、私たちが5年間を過ごした学院がある。
窓を開ければ、春風と共に桜の花びらが部屋に入ってくる。
ここの全てが、私にこう伝える。
全て、終わってしまったのだと。
ここにもうあの方はいない。
神は、この世にはいなかったのだ。
不意に、部屋の扉が開かれた。
「あっ!ここに居たんだね!!」
「…」
どうして、なのだろう。
私が振り返らないのにも気にした様子はなく、彼女は口を開いた。
「あのねっ!さっき、彼から婚約して欲しいって言われたの!
それでね、セレスちゃんには先に伝えておきたくて!」
「…どうして?」
窓枠に置いた手が白くなる程、力を込めた。
そうしないと、私は耐え切れそうになかった。
「え?やだなあ!だって私たち、親友でしょ!」
足元が崩れたような気分だった。
「…親友?」
嗚呼、嗚呼。そうだった。
カミサマから御告げがあったのだった。
「貴方は本当に、何も知らないのですね。」
馬鹿みたいだ。
カミサマなんていなければ、わたしは、わたしたちは、しあわせだったのに。
「…え?」
もう、もう…いいでしょう?
私はあの方の元へいきたいのです。
「ですから、貴方は本当に何も知らない、と申しました。
貴方はこの国のことを何もわかっていない。
この世界は、貴方の為だけに創られた、ただの箱庭だったというのに。」
「ま、待って!セレスちゃん、何を言ってるの…?」
「ほら、貴方は何も知らないでしょう?
カミサマが私たちに呪いをした事も。
貴方のせいで悪女に仕立て上げられたあの方の事も、私の事も、全部。」
カミサマがいたから、わたしたちはあの方をこんな子に殺されたのに。
どうして、どうして…この子はこんなに嬉しそうなの?
箱庭は終わりを告げ、カミサマの呪いは効力を失くした。
この世界の民は憤る。
あの方の親友であり、彼女の親友となったあの子は自ら役目を背負う。
あの方を守れなかった、自分たちの咎を背負って立つ。
さあ、後日談を始めましょう。