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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界知識を手に入れた吸血鬼は満月に笑う

作者: 中文字

 異世界憑依系という物語がある。

 それは異なる世界に居た生命体が死して、記憶をそのままに異世界に渡り、そこの生命体に憑依し生活し始めるお話である。

 そんな御伽噺の類でしか存在し得ない状況に、とある死んだ男性がなっていた。

 彼が憑依した相手は、森の中に呆然と立っていた一人の少女に見える存在。


(こ、これは。金髪美少女! 異世界憑依でもラッキーなのに、これは思わぬ大収穫ですぞお――)

「ぬか喜びさせちゃって悪いけど、その知識以外は不必要よ。消えなさい」

(え、ちょ。これで終わりって、嘘。俺、オワター!?)


 脳内に響いた声を忌々しそうに顔を歪め、腰まで伸びた金髪の白磁のような肌を持つ全裸の美少女がそう呟くと、男性の意識が薄れていきそして消え去った。

 残ったのは、彼が前世で見たり聞いたり体験したりして蓄積された、異世界の知識のみだった。


「ふふっ。生まれ出でたばかりだとしても。吸血鬼である私に、ただの一般人のゴーストが憑依出来るわけ無いじゃないの」


 くすくすくすと笑いつつ、知識の定着を待つ少女。

 やがて全ての知識が悪影響無く受け入れた少女は、男の知識を閲覧しながら面白そうに口の端を上げて微笑む。


「へぇ、随分と面白い知識ね。様々な本を読み漁り、お芝居や紙芝居なんかもよく見ているのだから、学者だったのかしら。吸血鬼の伝承なんかもあるわね」


 男の知識には膨大な本の情報と、紙芝居の様でありながら一秒間で次々と絵が変わる映像記憶があった。

 その中から少女は、自身の名前に相応しい、偉大なる吸血鬼の名前を貰い受けつつ選ぶ。


「そうね名前を『エヴァンセラス・D・ブリュンスカー』にしましょう。一部男性の名前だけれど、この知識では最強の吸血鬼らしいし、イニシャルだけだから違和感無いわよね」


 自分をエヴァンセラスと設定した瞬間、彼女の脳内で彼女がこの世界に生まれ出でた命題が告げられた。


「ふ〜〜ん。私の役割って、人間相手の発破役。つまりは神が愛する人間の、生物としての位階を上げる踏み台なわけね。

 常日頃は人間を虐待し殺し狩り続け、力を蓄えた人間に殺される、悪役。この知識だと、そういうのって魔王って言うのだけれど、それで合っているのかしらね?

 それにしても、この世界の神様はツンデレって言う存在なのかしら。人間の事を愛しているのか憎んでいるのか、良く分からないわ」


 男の知識に似たような物語があり、それを参考にエヴァンセラスは今後どうするかを考える。

 そしてこの男の知識が一番大事だとされる部分を読んで、いたずらっ子のような笑みを浮べる。


「なるほどね〜。異世界に渡り女性になったら、先ずは体の機能を確かめる、なんてねえ。ただのエロオヤジじゃないの。でもちょっと面白そうね」


 真夜中、月が出ている下で面白そうに笑いつつ。少女は木の根に全裸のまま座り、自分の小股に指先を舐めた手指を差し込んだ。

 作り物めいた――いや、名工ですら作り上げる事が出来ない美を備えたその少女の、夜天の月と星に照らされた淫靡な一人演奏が開幕する。





 背を海老反らせ、エヴァンセラスは体を振るわせる。


「くうぅぅ〜〜〜……はぁ、はぁ。これはハマって仕舞う人間の気持ちが、良く分かるわね」


 気だるげでありながら、木の根に座り全身に薄っすらと汗をかいたその姿は、少女の見た目も相まって背徳的なまでに艶かしい。

 指に纏わり着く汁気を、真っ赤な舌で舐め取る様は、高級娼婦ですら裸足で逃げ出そうとするほどの淫靡さが伴われている。


「このふわふわする気分をもう少し味わいたかったのだけど、無粋な輩は何処にでも居るのね……」


 ざざっと付近の茂みが揺れると、そこには森の葉に隠れるためか、濃淡のある緑色で斑に染まった肌を持つ、醜い見た目の人型の生き物が居た。

 それはエヴァンセラスの周囲一帯から現れ、一定距離を保って彼女を包囲する。

 その包囲の輪が二重三重とあることから、数十匹という単位で居るように見える。


「ええっと、ゴブリンとか言う生き物かしら。幾つか絵姿があるから、合っているか分からないけれど」


 知識から情報を引っ張り上げると、どうやらゴブリンという最下級の魔物であるらしい。

 知能は低く、簡単な道具を使えたり使えなかったり、独自の言語を持っているように見えて持ってなかったり。

 様々な物語の知識に出てくるものの、能力が一定しない。

 だが大多数のお話で共通する部分がある。


「まあそれは、一目見ただけで分かるわね」


 そうゴブリンの女性体に対する好色性。

 エヴァンセラスを見る全てのゴブリンたちの木の皮の腰ミノの一部が、内側から盛り上がっているのが見て分かる。

 つまりはエヴァンセラスを、性的な相手として見ている事に他ならない。


「これって包囲したわけではなく。もしかしたら抜け駆けが出ないように、お互いに監視しているのかも?」

「ギギギ!」

「ギギャギッ!」


 試しにエヴァンセラスが小股を軽く開いて見せると、前に出ようとしたゴブリンが横のゴブリンに押し留められ、そして周りが非難するかのように殴りつける。

 そして喧嘩が始まったのを、エヴァンセラスは滑稽なものを見る目つきをしながら、くすくすと笑いはじめる。


「あはっ。本当にお馬鹿ね。協力して向かってくれば、指の一本は触れられたかもしれないのに」


 ぱちり、とエヴァンセラスが指を鳴らす。

 すると何故だかゴブリンは一瞬震え、そしてその動きが一切止まってしまう。

 それを見ていたエヴァンセラスは実に悪い笑みを浮べて、ゴブリンたちの様子を観察し始める。

 やがて一陣の風がこの場に居るものの間に流れて去ると、ゴブリンたちの一部がおずおずと自分の下へと視線を移す。

 目に入ったのは、自分たちの股間へと伸びる、それぞれ『二本』の黒い針の様な物。

 そして知る。それが自分たちの何処に刺さっているのか。


「ふ〜ん、男の二つの玉に針を刺しても、あまり叫んだりしないのね。この知識だと、強打しただけで悲鳴を上げるそうなんだけど?」


 不思議そうに首を捻り、エヴァンセラスがもう一度指を鳴らす。

 今度は全てのゴブリンたちの股間から毬栗が出現したかのように、その腰ミノの内側から無数の黒い棘が外へと突き出ていた。

 その棘一本一本に、何かの血肉が纏わり付いているのが見える。

 そして始まる、ゴブリンたちの悲痛な悲鳴による合唱が。

 あるゴブリンは股間から大量の青い血液を出しながら、あるいは痛みから口から泡を吹きながら、あるいは地面に倒れこみ股間を押さえながら。

 聞く物が肝を潰して魂消てしまうような多種多様な悲鳴が、森の中に木霊する。


「うふふふふっ。そうよ、その調子で叫びなさいな。リクエストがあるなら、手足を『影針』で突き刺し貫いてもいいわよ」


 エヴァンセラスは木の根に座りながら、無垢な少女の様な笑みを浮べつつ、無力化した多数のゴブリンをさらに痛めつける。

 黒い針が全身を貫き、悲鳴が上がる。黒い鋏が皮膚下に入り布のように切り裂き、悲鳴が上がる。黒い鋸がガリガリと手足の骨を削り、悲鳴が上がる。黒い剃刀が耳や鼻や残っている一物を寸刻みにし、悲鳴が上がる。黒い小槌が腹を滅多打ちにし、悲鳴が上がる。黒い鑢が足先から卸しだし、悲鳴が上がる。黒いヤットコが指を捻り折り、悲鳴が上がる。黒い万力が手と足の平をゆっくり潰し、悲鳴が上がる。黒い匙が目を抉り出し、悲鳴が上がる。

 悲鳴を上げる口を楽器見立てるならば、エヴァンセラスはそれ操る指揮者。指を振って影で出来た黒いモノに、指令を与えて悲鳴を上げさせる。

 多種多様な黒い物がゴブリンたちを弄り続け。しかし殺さないように手加減しながら、ゴブリンが気絶して悲鳴を上げなくなるまでそれは続いた。


「はふぅ〜……性的刺激に勝るとも劣らない、いい演目だったわ」


 周りにいるゴブリンたちは、指目耳鼻手足の全てが欠損し、悲鳴を上げすぎて口から血の泡を吹いている。

 中には赤ん坊が食事中に遊びだしたかのような酷い光景が、その腹に再現されている固体もいる。

 そんな風に自分の嗜虐性が満足するまで、ゴブリンたちを甚振り尽くしたエヴァンセラスは、ほぅっと溜め息をつきながら感想を呟いた。

 そしてまだこのゴブリンたちで何か出来ないかを、知識の中から引っ張り上げる。


「生け贄を代償として、上位存在を召喚するのね。召喚に必要な札は無いけれど、これだけ生け贄が居れば一匹くらいは召喚できるでしょう」


 ついでに召喚の際に乙女の血が使われるなどと言う部分も引っ張り出し、エヴァンセラスは自分の手首を長い牙で噛み切って、血を地面へと滴り落とす。


「こういう時に呪文が必要よね。そうねぇ……偉大なる王に使える三体の獣の一体。影に潜み、形を変え、主に付き従う獣。その黒い狼の一族よ。この私の事を主として認めるならば、この血とこの場の肉を生け贄に現れ出でよ!」


 半分は興味本位で半分は期待で呪文をエヴァンセラスが唱える。

 すると彼女の足元に、影で線を描いたような真っ黒な魔法陣が浮かび上がり。それはどんどんと広がっていく。

 魔法陣の縁にゴブリンたちの体が触れた瞬間、獣が大きな顎で噛み付いたかのように、ごっそりとその部分が抉られ消えていく。

 不思議な事に木々や草花は、その魔法陣に触れても消える事は無い。


「ふふっ。これだけ大食らいだと、出てくる子も期待できるかしら」


 数十といた全てのゴブリンを飲み込んだ魔法陣が消え去ると、今度は白い線の魔法陣がエヴァンセラスの足元に浮かぶ。

 エヴァンセラスの肩幅ほどしか直径の無い、意外と小さな魔法陣に少しだけ不思議がりながらも、彼女はそこから何が出てくるか楽しみに待った。

 やがて魔法陣が一際大きく輝いた後、消えた魔法陣の換わりに、目が在るか分からない程に真っ黒な毛並みの小さな子犬がそこに居た。


「まあまあ、可愛いわ。ねえ、貴方は犬なのかしら、それとも狼?」

「わふん!」


 狼の部分で返事をするように、その黒い子犬――子狼は力強く鳴いた。


「貴方は私の使い魔に成ってくれるの?」

「わふん!」

「じゃあ良い名前をつけてあげましょう。そうねぇ、黒いからクロやブラックにノワールと言うのは単純だから……クロイツフェルトって名前にしましょう。意味は良く分からないですけれど、良い響きだし。どう、気に入らなかったりする?」


 エヴァンセラスが窺うようにそう聞くと、クロイツフェルトと名付けられた子狼は、了承するようにエヴァンセラスの足に甘え始めた。


「うふふ。じゃあ今日から貴方はクロイツフェルトね。ねえクロイツフェルト、どんな能力が自分にあるか分かる?」

「わん!」


 エヴァンセラスの問い掛けに、クロイツフェルトが一鳴きする。

 するとクロイツフェルトの輪郭が溶け出し、スライムであるかのようにエヴァンセラスの足から体を這い登る。

 普通の人なら思わず叩き落としたくなるだろうが、エヴァンセラスはクロイツフェルトが悪戯をする気が無い事が分かっていたので大人しく待ち、させるがままにさせる。

 やがて溶けたクロイツフェルトが体を這い回るのを止める。

 すると袖も無く裾も無い、体の線を浮き出しにする程に肌に密着した、真っ黒で不思議な服をエヴァンセラスが着ていた。

 あの知識上では、ボディースーツという服が、一番近い見た目だ。

 エヴァンセラスはその出来栄えを見るかのように、体を捻って髪を上げて背の方を見る。

 首と肩甲骨の上辺りは紐のように細く繋がっているが、それ以外は尻の直ぐ上までザックリと開いていて真っ白な肌が見えている。

 どうやら体の前面と尻周りを隠すのに体積を使い切り、背中までは覆えない様だった。

 しかしそんな事はエヴァンセラスには関係なく、クロイツフェルトの気遣いに嬉しげに微笑む。


「ありがとうクロイツフェルト、嬉しいわ。でもこんな能力があるなら、煮え切らない鼠の名前を取っても良かったかもね」

「うぅ〜わん!」


 体を覆う黒い服を撫でて礼を言ったエヴァンセラスに、クロイツフェルトは不満そうな鳴き声を上げた。


「うふふ。クロイツフェルトって名前が、そんなに気に入ったの?」

「わんっわん!」

「そんなに慌てて肯定しなくても、貴方は既にクロイツフェルトなんだから。名前を勝手に変えたりはしないわよ」


 賢い犬を撫でる手つきで、エヴァンセラスが黒い服を撫でると、クロイツフェルトは満足したのか大人しくなった。


「さてじゃあ役割通りに、人間を殺し痛めつける狩りに出かけるとしましょうか。では先ず、貴方からね」


 空に浮かぶ月の光りが差し込む森の中、耳の横まで裂けたように錯覚する笑みを浮べ、エヴァンセラスは唐突に振り返った。

 その視線の先には人間の姿。

 どうやらエヴァンセラスの事を、何時からかは分からないが、こっそりと見ていたらしい。


「そんなに慌てなくても――ほら、もう貴方の後ろに居るわよ」


 視線が合ったのが分かって慌てて逃げようとしたらしいが、エヴァンセラスは一瞬にしてその背後を取る。


「うふふ、そんなにビックリしなくたって。影から影に移動しただけです」


 くすくすと笑いつつ、目と目を合わせつつエヴァンセラスは獲物を吟味し始める。

 歳の頃は恐らく十台の半ば辺り。朴訥な顔付きの、善良そうな青年。

 体に革鎧、腰に鞘入りの片手剣。それなりに鍛えられた体。

 知識上にある、魔物を殺して糧を得る冒険者という種類の人間だろうと判断を、エヴァンセラスは下した。


「さあさあ、貴方には。これから色々な事を喋って頂かなければなりませんね。大丈夫です、安心して。ゴブリンほど、酷い目にはあわせませんから」

「ああ、あああ……」


 怪しくエヴァンセラスの目が妖しく赤く光ると、段々と青年の瞳にあった意思の光が消えていく。

 そして夢遊病者の様に、ぼうっとした視線をエヴァンセラスに向け、口は軽く開いた状態で立ち尽くす。


「さあさあ、貴方の知っている事をすべて教えて。きちっとお話してくだされば。ご褒美を上げますよ」

「ああ、なんでも、聞いて、下さい」

「うふふ。素直な子は好きよ。では、ここから一番近い人の住む集落への行き方。続いて、その集落からこの近辺で一番大きな都市への行き方を教えて下さいな」

「そ、それなら――」


 そこからはエヴァンセラスは自分の欲しいと思った情報を、この青年から引き出していった。

 歩いて半時間ほどの場所に小さな集落がある。そこから大きな都市へは街道馬車が一月に一本出ている。

 冒険者ギルドなる魔物狩りの集団があり、青年はそこに所属する駆け出しであること。冒険者の実力者には、一振りで巨木を倒すような猛者もいること。

 傷を瞬時に治す魔法薬は在るが、連続して使用すると治りが悪くなる。魔力を回復する薬など、聞いた事は無い。

 吸血鬼は珍しい魔物だが死者アンデッドではない。日の光の中を歩け、人と見分けが難しい厄介な魔物。回復力が桁外れで、血を好む。それ以外は良く知らない。

 その倒し方は回復力を超える、威力のある魔法や魔法剣でやっつける事以外は知らない。時折、切羽詰って物語や伝承に出てくる方法が使われるという噂があるが、意味は無いとされる。

 この土地のある国は、王制かつ貴族の領地制で成り立っていて。近くの大きな街には、領主たる貴族がいる事。

 食事関係はパン食で、あまり美味しい物は安値で普及して無い。魔物の肉は、味は別にして基本的に食べられる。調味料は、塩と香草以外に何があるのか。

 その他、貨幣が金銀銅で成り立っていたり、大体の物価に付いて尋ねたり、青年の恋話などを聞いたりした。

 その結果、どうやらこの青年はまだ童貞だそうだ。


「ふ〜ん。童貞や処女の血液って美味しいって、この知識の中にはあるけどどうなの?」

「そういう話はしらない」

「そう、じゃあ、試してみるしかないわね。大丈夫、今生で一番の快楽が感じられる魔法を掛けてあげるわ」


 もう聞くべき事は聞いたと、青年の額に手を当てて魔法を発動した後で、跪かせた彼の首筋にエヴァンセラスは噛み付いた。


「ああッ、あああああッ」


 じゅるじゅるとエヴァンセラスが血を吸っていくと、愛しい相手に貫かれた乙女のような、甘い吐息が青年の口から漏れ出る。

 それを気にせずに、エヴァンセラスは青年の血が噛んだ場所から出なくなるまで、一気にすすり上げていく。


「あ、あッ。あ、あ……」


 心臓に血液が行かなくなり空打ちを始め、やがて痙攣を起こして青年の意識は失われた。

 どさりと地面に倒れた青年を無視し、エヴァンセラスは舌を口の中で動かして血の味を堪能する。

 生まれ出でて始めての吸血は、エヴァンセラスの食欲と嗜虐性に殺人欲求まで満たしてくれた。


「大体三リットルぐらいかしら、意外と飲めるものなのね」


 うっとりとしながら、飲み込んだ血液の量の割りに、腹が膨れていない事を不思議がる。

 しかしその気持ちいい気分をぶち壊す臭いが、エヴァンセラスの鼻についた。

 この匂いがなんなのかを知識から引っ張り上げると、エヴァンセラスは更に不機嫌になる。

 倒れた青年のズボンの股の部分。そこは水分を含んで色が変わっていた。

 そこから立ち昇る匂いは小便ではなく、男が子孫を残そうと吐き出すものの方。

 情報を貰った慈悲にと、痛みと死の恐怖を快楽へと換える魔法をエヴァンセラスが使った事が、逆に仇になった証。

 エヴァンセラスという最高の少女を目の前に、最高の快楽と目前にある死を体験した青年の体が、反射的に反応した結果である。


「汚いわね」


 有頂天から無感情へと表情を変えたエヴァンセラスは、足を振り上げて青年の顔を踏みつけて潰す。

 それによって広がった光景は、地面に叩き付けてぶちまけたスイカの果肉に、柘榴の果肉を散りばめたのに良く似ていた。

 それを見下げて満足して、エヴァンセラスが付近の村への方向へ足を踏み出した。

 するとその行動を控えめに抑えるように、エヴァンセラスの服――クロイツフェルトの体が軽く引かれる。

 何処かに引っ掛けたかと思って見ても、枝など何処にも無い。

 となると。


「どうしたの? もしかして、コレ食べたいの?」

「わふん!」


 黒い服を見ながら問い掛ければ、子狼形態なら尻尾を振りまくっているであろう、嬉しそうな鳴き声が出てきた。

 渋々とエヴァンセラスが許可を出すと、クロイツフェルトは服の状態から獣姿に戻り、美味しそうに青年を肉と骨の区別なく食べ始める。

 そしてそれが青年の股間へと到達した時、全裸になっているエヴァンセラスは顔をしかめた。

 そこを食べたクロイツフェルトを、今後身に纏わないといけないと気が付いたからだった。


「まあいいわ。気分直しなら、村に行けば幾らでも居るしね。それこそ未通の乙女の血と、そうじゃない人の味比べが出来るし。楽しみだわ」


 ガツガツと食べるクロイツフェルトを見ながら、今後に訪れるであろう光景を思い浮かべて、吸血鬼の少女は満月の下で満面の笑みを浮べた。





他の作品が上手くかけないので、イライラを吐き出すためと、色々な要素の実験の為に書いた、無茶苦茶な作品です。

さらには残酷成分過多でお送りしました。


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― 新着の感想 ―
[一言] 単純に続きが読みたいです お願いします!!
[一言] 続きが読みたいです。
[一言] こういうの嫌いじゃないです。
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